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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科18巻7号

1964年07月発行

DESK・メモ

偶感

著者:

ページ範囲:P.539 - P.539

文献概要

 「くさい物に蓋」というが,蓋もつかいようで,何が何でも蓋をかぶせて良いというものではあるまい。時には,くさいのを承知で蓋を払つてやることも大事である。鼻つまみさせるのも,場合によつて良い結末を生む。どちらかといえば,最近では,やたらに蓋をしてくさい物を陰蔽するばかりのように思われるが,いくら蓋をしたつて,くさい物は腐りつづけるだけである。蓋を払つてみる勇気もほしい。
 だが,目にみえない微妙なところで,上手にくさい物に蓋をしてみせる術は,趣味の面からみれば不思議に人柄をのぞかせる。何かにつけて露骨にはやりがちな御時世ではあり,惨酷ムードが瀰漫する今日とはいえ,結局無残に醜をさらけ出すことの方が,多少なりともその逆を意図するよりは易しいことなのである。わずかなきつかけを利用して,醜いものをさえ,快い感情にふりかえる,そこに本当の趣味のちからがある。「語是心苗」ともいうが,趣味の深浅はまた心のたたずまいの静かさをはからせる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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