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特集 新生児問題
胎盤機能不全症候群
著者: 相馬広明1 吉田啓治1 立岡脩1 中井才扛1 平岡玄次1 青木徹1 岡本六蔵1 指田達郎1 佐川博1 田村貞夫1 高山雅臣1
所属機関: 1東京医科大学産婦人科教室
ページ範囲:P.283 - P.289
文献購入ページに移動胎盤機能不全症候群(Placental dysfunction synd—rome)(以下P.D.S.と略す)とは,1954年Cliffordによつて提唱された予定日超過産児(以下過期産児と略す)の中に見られた特有の臨床症状を指すが,その臨床像とはこれを1期から3期までの段階に分けて観察している。第1表はCliffordの記述をもとにして中村等が作った表であるが,すなわちまず妊娠の進行に伴い羊水の減少が起こり,そのため生下時に胎脂の減少によって皮膚の乾燥,ひびわれ,き裂,剥離,落屑などの皮膚症状が見られ,同時に胎盤機能退化による母体栄養素の供給低下により児体重の減少,皮下脂肪蓄積が減り,脱水と栄養失調が起り,そのため体型は細長となり,顔貌も老けた感じとなり,目も開いていることが多いという(第1図)。また他方では酸素の供給低下による児のAnoxiaのため,胎児は羊水中にMeconiumを排出し,そのため羊水の溷濁,胎盤・臍帯の黄緑染,あるいは長時間を経たものでは児の皮膚や爪に明黄色の着色が起るという。このため児の仮死や死亡率が高いといわれている。しかしSjöstedl (1958)はこれらの症状は必ずしも過期産児にのみ特有でなくて,それ以前の娩出児,早産児にも観察できることを発表し,むしろ妊娠期間と関係のないDysmaturityという語を使用することを提唱している。
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