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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科19巻6号

1965年06月発行

症例

赤痢菌による子宮内感染例

著者: 岡本六蔵1 相馬広明1 木部純一1

所属機関: 1東京医科大学産婦人科教室

ページ範囲:P.468 - P.470

文献概要

はじめに
 母体が妊娠中に,急性伝染病に罹患した場合には,その時期が早ければ,流産,奇形児の発生,胎内死亡などがあるといわれるが,これが妊娠後期の場合では,早産を起こし易く,子宮内感染を起した児が娩出される可能性が強い。通常は,intact な membraneに保護されて胎児は安全に見えるが,一旦母体が感染菌にさらされると,児は頚管から卵膜を経て上行性に,あるいは胎盤,臍帯を経て血行性に,母体から子宮に向っての侵襲におびやかされる。すなわちこれまでに報告されている種々の細菌(大腸菌,ブドー状球菌,連鎖状球菌,肺炎双球菌,リステリア菌,結核菌等)ビールス(風疹,Coxsackie, Herpes, Polio等)トキソプラスマ,梅毒スピロヘーター,カンディダなどの原因菌による子宮内感染例は,この事実を裏書きするものである。これらの急性の感染症の多くは血行性細菌感染であり,母体の菌血症によるものが多いが,ここで急性伝染病蔓延の立場からみると,抗生剤普及の上にたつても,現在の日本の保健衛生は必ずしも丈化国家のそれとはいえないところがある。たとえば,冬季でも依然として赤痢の流行は,日本のいずれかの地に散発してみられる。腸チフス,パラチフス,赤痢などの急性伝染病による妊婦の罹患率は,抗生剤の使用によりたしかに減少しているが,見方を変えれば,抗生剤の濫用により却って保菌者が増加しているということにもなる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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