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特集〔I〕 産婦人科領域における免疫学の応用
子宮癌の免疫療法上の問題点
著者: 竹内正七1
所属機関: 1東京大学
ページ範囲:P.516 - P.525
文献購入ページに移動はじめに
癌の免疫療法の歴史は,すでに今世紀の初頭に始まるのであつて,決して新しい試みではない。免疫学が細菌感染症において輝しい幾多の成功を収めつつ発展してきたのであるから,癌においても,その成功を期待しようとするのは,きわめて当然な思考の展開であろう。
しかし,当時の免疫学をそのまま癌の免疫の問題に応用したため,癌には免疫現象が成立しないと,多くの学者により考えられるようになつた。従来,癌こも免疫が成立するとする報告はいくつかあったが,結局は重大な過誤を犯していることが次々と判明し,癌の免疫は正に失敗の歴史であつたといっても過言ではない。したがつて,癌研究者はこと癌の免疫の問題に関しては,きわめて慎重になり,癌に対する抵抗性を免疫学的に増強しようとする試みは絶望的として,癌研究の大道から棄てさられてしまった。しかし今日の知見からすれば,細菌学を場として発展した免疫学では細菌感染症のように異種関係の免疫現象を取扱うことができても,宿主と近縁関係にある癌の免疫現象を過誤なしに把えることができなかつたのは当然であった。
癌の免疫療法の歴史は,すでに今世紀の初頭に始まるのであつて,決して新しい試みではない。免疫学が細菌感染症において輝しい幾多の成功を収めつつ発展してきたのであるから,癌においても,その成功を期待しようとするのは,きわめて当然な思考の展開であろう。
しかし,当時の免疫学をそのまま癌の免疫の問題に応用したため,癌には免疫現象が成立しないと,多くの学者により考えられるようになつた。従来,癌こも免疫が成立するとする報告はいくつかあったが,結局は重大な過誤を犯していることが次々と判明し,癌の免疫は正に失敗の歴史であつたといっても過言ではない。したがつて,癌研究者はこと癌の免疫の問題に関しては,きわめて慎重になり,癌に対する抵抗性を免疫学的に増強しようとする試みは絶望的として,癌研究の大道から棄てさられてしまった。しかし今日の知見からすれば,細菌学を場として発展した免疫学では細菌感染症のように異種関係の免疫現象を取扱うことができても,宿主と近縁関係にある癌の免疫現象を過誤なしに把えることができなかつたのは当然であった。
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