文献詳細
文献概要
綜説
X線診断の放射線障害
著者: 田淵昭1 中川繁1 平田政司1
所属機関: 1広島大学医学部産科婦人科学教室
ページ範囲:P.693 - P.696
文献購入ページに移動人間の放射線障害は原爆や事故による全身被曝と放射線治療(局所被曝)のごとき多線量被曝によるものの他には直接証明されたものはない。
したがつてX線診断のごとき低線量被曝の影響は幾多の仮定にもとづいて推定されており,その仮定は,①低線量被曝でも線量効果関係は直線的であり,②放射線障害よりの回復はいかなる低線量被曝でも無視できる(閾値なし)との2点であり,これを具体的に説明すると,①人類に現存する突然変異(遺伝的障害)や白血病を含む悪性腫瘍の少なくとも一部分は自然放射能被曝(125mrem/年)により誘発され,したがってこの自然放射能被曝線量に追加される如何なる線源(環境放射能汚染,医療用被曝等)よりの放射線被曝もこれらの障害の増加を起し,②すべてこの人類は自然放射能により一定の被曝線量をうけておるのでこれを対照としてのX線診断群のX線診断による追加被曝線量の効果判定は被曝個人では不可能であり,被曝集団では一定の仮定の下に推定は可能である。③放射線障害は1回のX線診断による障害の検討ではなく,受胎可能年令まで(遺伝的障害)または一生涯を通じて(身体障害)反復されるX線診断による被曝線量の総和(蓄積線量)が重要であるとされて来た。
掲載誌情報