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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科2巻3号

1948年06月発行

雑誌目次

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新生兒哺乳量に關する研究(その1)

著者: 衞藤毅

ページ範囲:P.88 - P.94

緒言
 戰時及び戰後に於ける新生兒榮養如何に就き考察する前提として新生兒哺乳量の基準を得んと多數例の統計的觀察を行はんとせり。
 既に歐米に於ては古くより比較的多數の材料に就き哺乳量調査報告されあるを見るも、人種、氣候、風土、習慣等を異にせるを以て之等の記載は直ちに本邦新生兒哺乳量の基準となし難し。我國にても大正年代に於て内野、藤井、日野、伊豫田、里井、佐々木、有田諸氏の1例或は數例の少數報告例あるも、多數例の報告は廣瀨・志賀を嚆矢とす。其後柚木、今津・山田・尾島・伊藤等の報告例あるも、之に統計々算を適用せるは尾島、伊藤のみにして、伊藤もその例數500例に過ぎず。

全國主要病院に於ける戰時子宮垂脱症増加の統計的觀察

著者: 三谷靖 ,   松本淸一 ,   岩館昌秋

ページ範囲:P.95 - P.101

 余等1)2)は先に東大教室で戰時殊に昭和19-20年に子宮垂脱症患者が増したと報じたが,同樣事實は又山田3)(京都府立大)、石川4)(東大分院)、原5)(日赤産院)等によつて認められ、著者の一人松本6)は森田、河野と共に既報各氏の材料から孰れも19年より著増を認める點で一致する事を指摘し且昭和醫大でも同樣と報じ、更に本年度日婦總會には余等の他、鈴木、佐藤(福島女專)、花岡(長野日赤)、坂部(京都府立大)等の報告あり、坂部は都市での増加は農村より著しいと報じてゐる。余等は此の現象の全國的傾向を知るため、各地大病院に一定調査票を送附し各病院での統計結果の教示をお願ひしたが、各位の熱誠な協力を得て此の結果を集計し得たのでその概略を報告する。尚調査票の送附を賜つたのは、東北大學(篠田教授)、秋田日赤(關博士)、千葉醫大(岩津教授)、日赤産院(久慈博士)、昭和醫大(藤井教授)、東京女醫專(堤教授)、東京遞信病院(安井博士)、諏訪日赤(小林敏博士)、長野日赤(小林隆博士)、竹山病院(萩野博士)、名古屋大學(吉川教授)、金澤醫大(笠森教授)、京都府立大(山田教授)、大阪市立醫專(藤森教授)、甲南病院(篠原博士)、九州大學(木原教授)、熊本醫大(長谷川教授)で記して懇篤な協力を深謝する。

産婦人科手術時に於ける腰髄麻醉に依る血壓變動特に起立試驗との關係について

著者: 吹田淸純

ページ範囲:P.101 - P.111

第1章 緒論
 手術の豫後判定は重要な問題であり、之に對しては種々の因子が關與する故其の各々に對し細心の注意を拂ふ可きであり、就中循環器の機能檢査は忽がせにすべきではない。而して術中並に術後の虚脱の原因は主に潜在性循環機能障碍であるといはれてをり、これには末梢部血管に於ける循環機能障碍の方が寧ろ心臟自體の機能より大なる意義をもつてゐる。而してその檢査法として知られてゐるものに起立試驗がある。これは重力による末梢血管への血液鬱滯の爲起る血壓降下の程度を檢する方法である。他方手術時に行ふ麻醉法の如何も手術豫後に影響するところが大きい。而して産婦人科的手術に於て最も廣く用いられてゐる麻醉法は腰髄麻醉であるが、時にこれには危險を伴ふ事がある。この危險は麻醉藥そのものの毒作用、循環系筋肉系へ不測に麻醉作用が擴大する事、延髓重要中樞が不測の直接麻痺を蒙る事等から發生すると云はれており、この中使用藥劑の選擇及び實施法に依りさけられるものもあるが、循環系に及ぼす影響は特に臨床上大きな意味を持つてゐる。即ち麻醉の擴がりに應じて血管收縮神經痲痺 に依り血管緊張低下し、循環血量は減少し、心臟への血液流入減じ、爲に血壓下降し、脳及び延髓中樞の酸素缺乏を來して全生活作用低下するに至る。

不妊症問題知見補遺男性受精能の判定について、並に男性不妊と婦人科

著者: 內保一郞

ページ範囲:P.111 - P.116

 第17世紀の中頃Antony van Leeuwenhoekにより顯微鏡が發明され、次でvan HammenによりSpermatozoenが發見(1671)されたがその本態は尚不明であつた。1780年Splanzaniは始めて犬に人工受胎を試みて射精液は卵を受胎させるものであることを、1824年にはPrévost及Dumosは射精液を濾過して精子のみがbefr—uchtendes Agensなることを證明し、1846年Köllikerが精子とは性上皮細胞の變化せるものに外ならぬことを明かにして以來、精液及精子に關する業績は相續きその研究は多方面に行はれてゐる。我婦人料領域に於て精液の研究は主に不妊症の對象として行はれてゐるのは當然である。Moreas (1937)は「主人の受精能を確かめざるは醫師の重大なるKunstfehlerなり」とさへ言つてゐるが、その他Moench等の強調を待つまでもなく不妊症診療上精液の檢査を先行すべきは多言を要せざる所である。然し精液の檢査方法判定方法に關しては今日尚異議なき見解に逹してゐるとは言へないし、更に精液檢査の必要性は認めても精液所見からその受精能を判定するには少からぬ困難を伴ふものである。受精力有無の斷定は直ちに不妊婦の診療を續行すべきか中止すべきかの指示を與へるものである。

尿管腟瘻の「レ」線照射療法について(第2報)

著者: 伊東尚生 ,   伊東喜代子

ページ範囲:P.117 - P.121

第1章 緒言
 嚮きに余等は産科婦人科紀要、第25卷、第5號(昭和17年5月)誌上に於いて、岡林式系統的廣汎性子宮癌剔出手術後に形成した12例の尿管腟瘻患者に前處置として水銀劑並に葡萄糖を注射し、然る後患側腎に「レ」線照射を行ひたるに、觀察中の3例を除き、その他の全例即ち9例に於いて尿管腟瘻を治癒せしめ得たる事を報告した。其後尿管腟瘻患者に「レ」線照射を試みた症例の報告には接しない樣である。依つて今囘は、當時未だ觀察中であつた右の3例の其後の成績に、更に新しく照射した5例の成績を追加し、且つ尿管腟瘻は手術的療法によらなくとも「レ」線照射に依つて殆んど常に治癒せしめ得ることを重ねて強調し度いと思ふ。

男子不妊の診斷補遺

著者: 松本寬

ページ範囲:P.122 - P.124

1 緒言
 最近迄特に日本に於ける男子不妊の診斷が多少ないがしろにされる傾向が強かつた。即ち女子不妊原因の探究にのみ之努め男子に對してはただ精液をコンドム性交でとりこれを絲でしばり綿にくるんでマツチ箱に入れ帶の間に挾んで體温に温めて性交後可及的早く持つて來させ、その中からピペツトで吸ひ上げスライドグラスの上に一滴落して之を檢鏡し1視野に見える數及び其運動性を見る丈であつた。其の後精子を染色して其形態を調査する方法も發表せられたが余りにも學究的で實地に應用し難い缺點があつた。所が私が約1年程前から受胎調節の研究に手をつけ精液に關するアメリカの文献を讀んで行く中に種々の新しい點を見出したので茲に之を發表する次第である。

無浮腫無蛋白尿性子癇

著者: 八木辰太

ページ範囲:P.125 - P.127

緒言
 子癇とは妊娠、分娩或は産褥時に短時間の間歇を以て反復する失神を伴う全身筋肉の間代性痙攣を謂ふのであつて、Zangemeisterは浮腫、蛋白尿及血壓亢進を本症の三大症候群となし、Schlo—ssmann,Schwarz,Günster,其他等も亦子癇及び其前驅症に必發の徴候であると述べてゐる。然し是等三大症候群中非常に稀ではあるが其1つ或は2つ以上を缺如することがあり得ると言ふ事も亦一般に認められてゐる。
 抑々子癇の頻度は報告者により區々であるが大約400乃至500囘の分娩に就て1例を見るものであつて、決して多いものでないが、本症の3大症候群中其一つ或は二つ以上を缺如する樣な場合は更に僅少となるわけで、既往文獻にも極めて少數を求め得る程度である。

第43回日本婦人科學會總會見聞記

著者: 鹽見勉三

ページ範囲:P.127 - P.129

 北陸の春の訪れはゆるやかに、四月半ばとは云へ櫻花爛漫と咲き香りその華を競ふ中に第43回日本婦人科學會總會は金澤の地に開かれた。終戰後第2回目の學會はなほ昔日のそれに及ぶべくもないが、將來への曙光の點ぜられつつあることを感ぜしめるものがあつた。
 演題數118題、北は北海道より南は九州の涯まで一堂に相寄り相集ひ、終日廣き講堂に溢れて眞摯な追加討論が活溌に繰りひろげられた。なほ流るるが如き圓滑さを以て會の進行に努力され、且細部に亘る特別の配慮に依り心地良き三日間を過さしめられたことに對して笠森教授始め教室員各位並に地方醫師會の方々に心からの感謝を捧げる。

文献抄録

著者: 鈴村 ,   増淵

ページ範囲:P.130 - P.130

發疹チブス患者の月經異常及び性器出血に就て
 藤森速水,西本捨三, 日婦會誌42卷6號5頁 昭和21年の春大阪地方の發疹チフス流行に際し、32名の女性患者に就て月經異常及び性器出血を臨牀的に檢査した。月經來潮豫定日より性器出血を呈したのは11例で、3日乃至14日早く來潮した。他の2例は發病前無月經であつたが、發病後性器出血を認めた。罹患中性器出血なく、其の後も少くとも1月は無月經のもの6例、豫定日後性器出血又は月經のあつたもの4例であつた。異常性器出血は子宮への血液流入増加、靜脈性鬱血、部分的肉芽性炎症によるものと思はれるし、無月經は卵巣機能の變調により二次的に子宮内膜變化が完全に營まれなかつたによるものと思ふ。妊娠中のもの3例中、少くとも1例は高熱により流産した。他の1例は梅毒を伴つて流産し、殘の例は全快後早産した。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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