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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科20巻12号

1966年12月発行

特集 胎盤

その基礎と臨床 胎盤の免疫・1

絨毛細胞の抗原性

著者: 竹内正七1

所属機関: 1東京大学医学部産婦人科教室

ページ範囲:P.977 - P.980

文献概要

はじめに
 胎児は父親から半分の遺伝因子を受けついでいるのであるから,母体とは遺伝学的に明らかに組織不適合性であるにもかかわらず,妊娠が成立しうることは移植免疫の立場から見て驚くべきことである。すなわち,妊娠は同種移植片(Allogeneicgraft,Homograft)の巧まざる成立と見なすことができるからである。
 胎児組織が母体にたいして移植抗原を有していることは種々な実験的事実によつても疑いえないところであり,この点については現在一致した見解に達していると見てよい。しかるになぜ同種移植免疫が起こらないのかという問題になると現在十分納得のゆく説明はできないようである。胎児と母体とが直接しているのは,胎児側の絨毛細胞ことにSyncytiotrophoblastであり,母体側は脱落膜あるいは血液である。したがつて,絨毛細胞の母体にたいする抗原性が問題になるわけであるが移植の成立という事実と,母体における明らかな免疫反応の認めがたいという事実とからは,絨毛細胞の抗原性は乏しいか,欠除しているのではないかと考えるのが一応自然であろう。事実,現段階における一般的な見解は「胎児組織は移植抗原を有しているが,絨毛細胞は移植抗原を欠除している」ということである。かくして免疫的に無反応性の絨毛細胞が,母—児間の免疫的相抗のbarrierになつて,妊娠が成立しうるのであると理解されている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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