文献詳細
研究
ラット可移植性子宮癌の発育におよぼすGonadotropinの影響
著者: 山下昭一1 林義夫1
所属機関: 1北海道大学医学部産婦人科教室
ページ範囲:P.401 - P.403
文献概要
実験腫瘍学上,悪性腫瘍は自律性不可逆性,転移性などの性格を具備していることが必要とされる。さらに他の宿主への移植性を有することも確実な証左となつている。子宮癌発生および増殖にHormoneがある種の意義をもつことは早くからLacassagne,1) Lipschutz2)以来多くの報告があるが,子宮の移植癌についての報告は少なく,Murphy,3)Koprowska4)などによる実験的発生癌の移植に関する報告をみるにすぎない。したがつて,悪性腫瘍であることが確かめられ,かつ移植可能な子宮癌を用いてHormoneの影響を追求することはきわめて困難なことである。1962年,小林5)はラットに自然発生した子宮癌の累代移植に成功した。従来ラット子宮腫瘍の自然発生は必ずしもまれではないが,組織学的にAdenocarcinomaと記載されたものは比較的少ない。この子宮癌(gsT−7)はAdenocarcinomaであるうえ,先に西谷6)らが報告しているが,EstrogeneおよびAndrogenに対し極めて興味ある依存性を有することを示した。そこで,我々はさらにラット移植癌のGonado-tropinの依存性ならびに去勢あるいは胸腺摘除などの内分泌環境の変化によつて,癌増殖に対する影響を検討し非常に興味ある所見を得たので以下報告する。
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