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症例
原発性奇形腫性卵巣絨毛上皮腫の1例
著者: 河野通夫1 徳川博武2
所属機関: 1国立大蔵病院産婦人科 2国立大蔵病院病理科
ページ範囲:P.413 - P.418
文献購入ページに移動絨毛上皮腫はその名の示す通り,絨毛組織から発生した腫瘍であり,従つて妊娠に関連して発生するものであつて,普通は胞状奇胎,流産,または正常妊娠のあとに発生するものである。しかしながらまれに,妊娠と全く無関係に本腫瘍が発生する場合もある。
日本産科婦人科学会絨毛上皮腫委員会において次のごとく定義した。すなわち妊卵の着床した部位に発生する場合は,"正所絨毛上皮腫"と呼び,妊卵の着床部以外の部位に転移によつてではなく本腫瘍が発生した場合を,"異所絨毛上皮腫"と呼んで区別している。この異所絨毛上皮腫に関して斎藤等の報告1)によると,その診断基準として,1)子宮に原発性の存在しないこと,2)腫瘍は組織学的に絨毛上皮腫であること,3)胞状奇胎または正常妊娠と合併した子宮外絨毛上皮腫は異所性に含めない。4)子宮筋層内絨毛上皮腫は異所性に含めない,等をあげ,これらの診断基準に基づいて,従来わが国において報告された243例の異所絨毛上皮腫を検討したところ,異所性の条件を一応備えたものとして,119例(報告例の49%)を得た。さらにその243例の中で卵巣に発生したものは全体の約10%に当る26例あるが,詳細に検討した結果そのうち22例だけが異所性の条件を備えているものと見なされている。我々も卵巣に発生した異所絨毛上皮腫の1例で,その組織学的所見から,奇形腫性である事が確認された興味ある症例を経験したのでここに報告する。
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