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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科23巻12号

1969年12月発行

特集 産婦人科

今日の焦点・Ⅱ

産科出血

著者: 品川信良1

所属機関: 1引前大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.1047 - P.1051

文献概要

はじめに
 わが国の妊産婦死亡率も,年々減少してきてはいる。しかし厚生省の集計に徴しても,1966年のそれは8.4(対出生1万)であり,他のWHO加盟諸国にくらべるならば,依然として非常に高い。実数としてみても,死亡妊産婦の数は依然1,200名を越えている。というと,「なんだ,交通事故死の1/10以下ではないか」とおつしやるかたがあるかもしれない。しかし交通事故は1億の国民のほとんど全員が遭遇しうるものである。これに対し妊娠分娩ということは,年間の妊産婦数を300〜400万と仮にみなしても,国民の1/25〜1/33にしかみられない現象である。したがつて妊産婦死亡の危険度は,今の日本では,交通事故死よりもはるかに高い,といつてもよい。
 ところで,この妊産婦死亡原因の第1は,長らく妊娠中毒症であると信ぜられてきたが,しかし少なくとも昨今の実情はそうではないらしい。確かに厚生省が年々発表している妊産婦死亡の原因別集計では,いまでも妊娠中毒症が第1位で,出血は第2位ということになつてはいる。しかし,最近日本国内の各地で行なわれた妊産婦死亡に関する実態調査成績は,申し合わせたように,いずれも出血による死亡のほうが妊娠中毒症によるものよりも多い,ということを指摘している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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