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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科23巻3号

1969年03月発行

文献概要

研究

サーモグラフィの産婦人科臨床での使用経験

著者: 寿田鳳輔1 中川国四1 斎藤仁隆1 藤井久四郎1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.227 - P.236

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I.医用サーモグラフィの略叙
 近代医用サーモグラフィの歴史1)はMontrealのRay Lawson(1956)が,悪性腫瘍のある乳房の乳頭が反対側の乳頭よりも温度が高いことを観察し報告したことに始まるという。またLawson (1957)はAstheimer-Wormer typeのtheromographを用いて乳癌婦人の腋窩の移転巣のtheromogramを報告した。それでは,転移巣のある表面の皮膚温度は明らかに上昇していたし,後に,Lawsonは,悪性腫瘍側から流出する静脈血温度は,そこへ流入する動脈血温度よりもほとんど1℃高いことを観察した。Williams(1961)2,5)らは,乳房異常を触診しうる側とその反対側の乳房とについて,それぞれ対称的な同一部位の皮膚温度を測定し比較した。検査方法としては,皮膚から約1cm離してthermopileを保持して両側の温度を測定し,温度差が△T≧1℃であつた場合に高温(hot)と判定した。引き続いて温度差のあつた部位の生体組織診を行ない,病理組織診断を下して,温度差と異常の有無の関連を求めた。その結果,100例の乳房異常のうち,57例が悪性であつた。そのうちの54例が高温を示した。18例の良性嚢腫のうち,17例は低温(cold)であり,1例は高温であつたが,膿瘍形成のためであつた。11例のほかの良性腫瘍では温度差がないか,あるいは△T<1℃であつた。10例の良性の線維腺腫のうち4例は高温(hot)であつた。線維腺腫が何故およそ50%も高温を示すのかは現在でも不明である。いずれにせよ,LawsonやWilliams5)の臨床成績,Barnes1,3,6) & Gershon-Cohen4,6,9)らの診断装置と診断技術の開発などが刺激となつて,医用サーモグラフィ8,11,20)という臨床診断技術が新しく展開されることになつた。世界的には1963年までに,New York Academy of Sciences5〜7)の賛助のもとに,シンポジウムが開催され,その後,Stras-bourg (France), Leiden (Holland), Los Angeles(USA)において,また,ME学会においても,シンポジウムや報告発表がもたれた。1968年5月には,第1回日本医用サーモグラフィ研究会(東大医用サーモグラフィ研究会主催)も開かれた。
 医用サーモグラフィに用いる機器11)は,現在,Barnes社のInfrared camera, Thermometer,神戸工業社の医用赤外線映像装置,Infrared eyeAGA社のThermovisionが使用されている。赤外線の検出器にはthermister bolometer(Barnes社),Ge-Au(神戸工業社), In-Sb(Smith社,AGA社,Bofors社,CSF社,Philco社)などが用いられており,それぞれ赤外線検出時の特徴を示している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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