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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科23巻9号

1969年09月発行

特集 分娩時出血--メカニズムとその対策

子宮収縮と止血機構

著者: 鈴村正勝1

所属機関: 1日本医科大学産科婦人科学教室

ページ範囲:P.741 - P.748

文献概要

はじめに
 分娩時には子宮口開大,胎盤剥離および脱落膜の剥離,排出を考えると,出血するのが当然であつて,止血するのがきわめて困難なのではなかろうかと心配するのも無理ではないと思えるほど,出血すべき条件が揃つているように思われる。胎盤と子宮内膜との間の絨毛間腔を流れる血液は毎分平均500〜600mlといわれているから,特別の止血機構がないかぎり,この速度で出血するはずである。またその胎盤付着面も平均245cm2と思われるから,この全面積には出血しだす相当の小動脈断端があるはずである。このように考えると,止血機構が1分おくれれば500〜600mlの大部分が外出血として出てくるわけであつて,分娩時の出血がいかに危険であり,また,その治療は寸分を争う問題であるかが判明する。したがつて,分娩時出血を左右する因子についての再検討が最近盛んになつてきたことも当然である。また本邦の妊産婦死亡率が10万の分娩に対して87.6と西欧諸国の13.8〜20に比べて著しく高く,しかも出血による死亡が21.2であつて諸外国の2〜10に比べ,数倍も多いことは,この方面に大きな注目を集めてきており,出血による死亡を減少させるべく努力が続けられている。そのためには輸血対策をはじめとする一般の出血死に対する治療・対策が再検討されなければならないが,また一方では,産科出血の特異性を再認識し,産科に特有な検討も行なわれなければならない。そのような意味で,分娩時の出血機構に最大の関係を有するのは子宮収縮によるものであることを再認識し,子宮収縮のうえから見た止血機構について論ずるのも決して無駄ではないと思う。しかし,残念ながら子宮筋細胞の収縮によつてどのような影響を血管,特に毛細管が受けるのか,明視下に明らかにすることができないので,今回はまず,分娩時出血量の平均値および異常値をとりあげ,次いでそれに関係のある産科諸因子について検討し,子宮収縮剤の分娩時出血に及ぼす影響と,いわゆる止血剤の影響とを比較してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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