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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科24巻2号

1970年02月発行

薬の臨床

不定愁訴症候群に対するS−804の臨床治験

著者: 長谷川直義1 村井憲男1 吉田威1 徳永学1

所属機関: 1東北大学医学部産婦人科教室

ページ範囲:P.169 - P.173

文献概要

はじめに
 わが教室では,更年期障害を含む婦人の自律神経症候群など,いわゆる不定愁訴を主体とする症候群(したがつて,今日,本症は不定愁訴症候群と呼称される)に対して,minor tranquilizerに属する一連の向精神薬(すなわち,meprobamate, trancopal, insidon, chlordia-zepoxide, diazepam, oxazolarepamなど)を用いての治療実験を行ない,その成績を報告してきた。実地医家がこのようなtranquilizerを好んで用いる理由は,不定愁訴症候群患者が血管運動神経障害様症状などのほかに,しばしば精神神経系障害様症状と目される不定愁訴を多く伴うからであり,しかもtranquilizerには即効的に中枢に働いて自律神経失調を調整する作用があるばかりでなく,不安・緊張をも除去する作用を有するからである。S−804は化学名を7-chloro−2,3-dihydro−1-methyl−5-phenyl−1H−1,4-benzodiazepineと称する新しい向精神薬で,次のような構造式を有する化合物である。本剤はすでにわが国で繁用されているchlordiazepoxide, dia-zepam, oxazepam, nitrazepamなどと同じくbenzodia-zepine誘導体の一種であり,これらと類似の化学構造を有するものである。しかし本剤は抗不安作用がchlordi-azepoxideとほぼ同じ強さで,diazepamより弱く,また本剤の筋弛緩作用は同量ではdiazepamに比し何倍も弱く,用量を増やすとdiazepamと同様の筋弛緩作用を現わすといわれる。しかし本剤の特徴は,その緊張緩和作用にあり,減弱作用(Dämpfung)がchlordiazepoxideやdiazepamよりも弱いことから,患者に疲労感を感じさせることなく治療できるという利点が強調されていることである。そこで,われわれは不定愁訴症候群を自律神経失調によつて起こつているものと心因性のものとにわけ,それらに塩野義製薬より提供をうけたS−804を試用して,以下のような臨床治験を得たので,ここに報告する

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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