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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科24巻4号

1970年04月発行

雑誌目次

特集 性器感染症の診断

骨盤内感染症の細菌学的検査法と抗生物質感受性試験

著者: 松田静治

ページ範囲:P.289 - P.293

Ⅰ.骨盤内感染症の細菌学的検査法
 子宮,子宮付属器,子宮旁結合織,骨盤腹膜など,性器およびその周辺組織の炎症を総括して骨盤内感染症と呼ぶが,発熱,疼痛を主訴とする産婦人科感染症の大部分がこのなかに含まれ,腟,外陰よりの上行感染によることが最も多い。本症も近年化学療法の普及に伴い,感染像,起因菌(原因菌)の面でかなりの変貌を来たし,現在では表1に示すようにブドウ球菌,大腸菌などのグラム陰性桿菌,嫌気性菌,レンサ球菌(ことに腸球菌),リン菌などによる感染がみられる。

産褥熱の診断

著者: 水野重光 ,   松田静治 ,   堀江勤

ページ範囲:P.295 - P.303

はじめに
 化学療法の発達により,重症産褥熱は著しく減少し,一般産褥有熱例の治療は容易となつたことは確かであるが,軽症ないし中等度の産褥感染例,特に子宮内感染例などは決して頻度は低いとはいえない。抗生物質の濫用ともいうべきほどの使用の影響として,産褥熱感染例の原因となる細菌側の状態は,往年とははなはだしく変遷がみられ,薬剤耐性菌も少なからず発見され,治療薬剤の選択に慎重を要するとともに,病院内では院内に温存されている耐性菌(主としてブドウ球菌)による院内感染という事態にも注目しなければならなくなつた。その他,産褥熱による妊産婦死亡の激減した今日でも,稀に致命的な経過をたどることのあることを十分に念頭におく必要がある。また,普通の妊娠末期分娩後の妊産婦死亡は著しく減つたといつても,内容的には流産後の感染によるものを含めての死亡率は戦前に比し,戦後は増加しているのは注目すべきことである。
 われわれの教室においては,10数年来化学療法の発展経過に応じて感染症に対するそれぞれの薬剤の治療効果に関し詳細に観察してきたが,その一部として産褥熱だけをとりあげてみても,必ずしも単純な疾患ではなく,往年の観念で漫然と治療を行なうことは危険であり,正しい診断を下すことが先決問題である。そこで日常経験する比較的軽症の産褥熱,ことに産褥子宮内感染症,さらに時に遭遇する敗血症の診断,これに関連する検査法について述べてみたい。

子宮付属器炎

著者: 藤生太郎 ,   小牧貫治

ページ範囲:P.305 - P.309

はじめに
 一般炎症は感染後3週間までを急性期,次の1週間を亜急性期,4週以後を慢性期,とするものが多い。
 子宮付属器炎も感染後間もなくの急性期であれば,疼痛,熱発,腫脹,発赤などがあり,一般症状および内診所見によつて,その診断も比較的容易であるが,慢性期に移行したものでは熱発もほとんどなく,内診時のわずかの局所の抵抗と圧痛とによつて診断をつけなければならない。

子宮頸管炎ならびに子宮腟部糜爛の診断

著者: 川上博

ページ範囲:P.311 - P.316

 子宮頸管炎はその急性期と慢性期とは症状,診断法ならびに治療法などにおいて著しく異なつている。
 また子宮腟部糜爛と子宮頸管炎との関係については,以前と最近の考え方が全く異なつている。

腟感染症

著者: 徳田源市

ページ範囲:P.317 - P.322

はじめに
 腟は外界に開いているから,細菌や液体の侵入を防ぐことはできない。経産婦で特に腟が弛緩しているとき,また陳旧になつた会陰裂傷があつて腟が開いている場合などには,炎症が起こりやすい。また小児期および更年期以後においては,特に感染に対して弱くなる。
 このようにして,腟に起こる炎症を起こす原因としては,いろいろなものをあげることができる。

帯下の検査法—その進め方と読み方

著者: 青河寛次

ページ範囲:P.323 - P.328

はじめに
 帯下の検査を実施するには,まずその成因の概念を念頭において検査法を選ぶ必要がある。しかし帯下を来たす原因は複雑であり,比較的容易に診断できる場合ばかりでなく,診断の推定がむずかしくて治療方針を決定できにくい症例もかなりある。
 腟・外陰には,正常な粘膜細菌叢が存在するので,たとえ多数の微生物を検出しても,直ちにそれが病原菌として意味を有するか否か,即断することはできない。しかし腟トリコモナス・真菌・Haemophilus vaginalis・淋菌・結核菌・梅毒スピロヘータなどは,その検出と腟・外陰感染の発症とが相関性を示すことが多い。ことに前3者は,腟・外陰感染の主要起炎菌といえる。

カラーグラフ 子宮頸癌の診断・4

組織診断 Pathological Diagnosis

著者: 栗原操寿

ページ範囲:P.286 - P.287

 子宮頸癌の好発部位として知られる扁平円柱境界(scj)には,実に色とりどりの病変が出没する。このなかで,癌化過程にかかわりあう病変として,目下注目をあびているのが上皮内癌carcinomain situと異型上皮dysplasiaである。
 上皮内癌に関する知見は着々と積みあがり,組織診断の基準さえ正せば,自然治癒はきわめて例外的で,いずれ浸潤癌に進みゆく悪性病変という見解に固まりつつある。

臨床メモ

テトラサイクリンによる乳幼児の歯の汚染

著者: 竹内久弥

ページ範囲:P.322 - P.322

 テトラサイクリンは黄色を呈し,その分子はカルシウム塩と親和性を持つている。そこでカルシウム沈着を起こしつつある歯はテトラサイクリンで汚染される可能性があることになる。
 オーストラリアのメルボルン大学歯科のBrearleyら(Med.J.Aus-tralia, 2, 653, 1968)は,1歳半から7歳までの幼小児1,168名の乳歯と永久歯を検査し,そのうちの236名(24.2%)にテトラサイクリン特有のエナメル質汚染を発見しえたという。これらの児とその母親のうち,正確な病歴の得られた98例では,5例が妊娠中の母親への投与であり,その他は出生後の投与であつた。

全身麻酔による骨盤位娩出法

著者: 竹内久弥

ページ範囲:P.360 - P.360

 骨盤位娩出術には種々の方法があるが,一般にはできるだけ待期的に,児の臍部が陰門に現われるまでは手術的操作を避け,麻酔も最小限に止めることが勧められている。
 Washington Hospital CenterのDodeckら(South.Med.J.,61,1223, 1968)は,これに反して完全な全身麻酔の下にきわめて積極的な骨盤位牽出術を行なつている。彼らの方法は,分娩第1期に経口的に睡眠剤や麻薬の投与を行ない,第Ⅱ期が近づくと,ラボナールの静注を行なう。子宮口が全開し,先進殿部が骨盤濶部に達するか,あるいは足が陰裂より見える位置に達したら,エーテルと酸素による全身麻酔が開始される。さらに筋弛緩部が間歇的に投与されで骨盤会陰筋群の緊張が除去される。十分に麻酔がかかつたところで会陰正中切開のうえ,児を牽出する。後続児頭はPiper鉗子を用いて娩出せしめる。以上の操作はきわめて短時間に行ないうるという。

子宮破裂を起こしたものの次の妊娠は

著者: 橋口精範

ページ範囲:P.370 - P.370

 子宮破裂ということは,最近珍しいものであるが,子宮破裂を起こした後,妊娠した場合,どのような経過をたどるかは注目に値するところである。
 ここにメキシコのLuis Reyes-Ceja,その他による観察の報告がある。

今日の問題点

人工排卵

著者: 鈴木秋悦

ページ範囲:P.329 - P.329

 最近,排卵に関する問題は,HMG,Clomid, F6066などの優れた臨床効果を示す新しい薬剤の登場によつて,多くの論議を呼び,産婦人科内分泌治療学上でも,一つの画期的な時代を形成しているともいえる。しかし,薬理作用の明らかなHMGなどは別とし,非ステロイド系新排卵誘発剤などでは,中枢性または末梢性と,その作用機点も複雑で,この領域の薬剤としては,久しく報告されていないような優れた臨床効果が認められているにもかかわらず,なお,多くの問題を提起している。たとえば,多胎あるいはsuper ovu-lation の問題、流産率の頻度が若干高いこと,またはその機序が同じであるかどうかは論議もあると思うが,排卵率に比較して妊娠率が低く,排卵後の黄体機能の問題との関連で,いわゆる着床不全型というものの存在の有無,さらにgeneticな問題として,初期発生過程への影響など,枚挙にいとまがないが,いずれの問題を取り上げても,これは単に薬剤の影響云々という問題ではなく,生殖生物生理学の基本的現象の解明なくしては解決されないものばかりである。紙面の制限で,これらの問題の全てを論議することは,とうてい不可能なので,その中の二,三の問題点について述べたいと思う。
 排卵現象の基本的な因子の理解が,まだ十分に行なわれていない点は,合成化学の進歩によつて,さらに将来は作用機序が微妙で複雑な薬剤がますます出現してくる可能性を考える場合,重大なweak pointとなつてくるものと思われる。たとえば,卵胞破裂という排卵における,最も生物学的に基木的な現象の機序にしても,卵胞内圧の亢進説から卵胞表面の膠原線維網の酵素的融解説に至るまで,多くの仮説が報告されているが定説はなく,卵胞内での卵子の成熟過程と,それに関連した顆粒膜細胞の変化,閉鎖卵胞の機点などについても十分な説明がされていない。さらに卵胞内液の生化学的細胞の分析を含めて,卵胞内における卵子の減数分裂阻止因子と,その不活性化の過程は,全く解明されていない。排卵という問題の起点を、卵胞内での卵子のmaturationの第一歩にまで戻すことは,排卵された卵の卵管環境内でのviabilityを問題とする場合,不可欠の因子となつてくる。たとえば,臨床的に排卵誘発剤の投与中に排卵した場合を考えても,排卵された卵子が全く正常で,単にその受精,または初期妊卵の分割過程への影響を問題とする以外に,卵の成熟過程,すなわち卵胞レベルでの影響を考慮しなくてはならないということから,ますます複雑な因子が交叉してくることになる。最近,われわれは家兎やラッテを用いて,superovulation(過排卵)とか,de-layed ovulation(遅延排卵)の問題に関する実験を通じて,人工排卵卵子の生物学的特性から,卵のgeneticな問題を研究している。写真は,家兎にHMGを負荷して過排卵を惹起した卵巣であり,多数の出血卵胞を認める。これらの出血卵胞中の卵子の成熟過程,または卵の移植などによる卵子のviabitityについて検討をくわえている。Pro-estrus期の午後2時前後,従来から,ラッテではLH分泌が開始される直前の時期といわれているが,この時期にPentobarbitalを負荷すると,ラッテでは排卵抑制を生じ,腟スメアはestrusとなり,翌日,さらにPento-barbital負荷で排卵抑制は持続し,第3回目に雄を入れると交尾してくるが,これらの実験で,いわゆる卵胞内での排卵へのdelation,または過成熟の問題を追求している。もちろん,これらの哺乳類での変化が,そのままヒトの場合に当てはまるかどうかという結論はさておいて,前述のごとく,ヒトの排卵現象には,あまりにも多くの未知の分野が残されているという事実から,動物実験の結果についても十分な配慮が必要であると考えられる。

手術

腹膜外帝王切開術

著者: 鈴木晴夫

ページ範囲:P.335 - P.337

はじめに
 1907年Frankが,1908年Sellheimが腹膜外帝王切開分娩術を創始発表して以来,多くの産科医によつて,本術式の改良工夫がなされてきたが,現在のところでは,子宮下部に達する方式より,①Latzko,②Watersの2方法がその主流を占めているようである。
 Latzko,Watersの両術式に関しては,約30年間にわたつていろいろ論争され,その優劣・長短に関しては,すでに語りつくされた感じがする。いうまでもなく,Latzko法ではparavesicalに,Waters法ではsupravesicalに子宮下部に達するのであるが,私は最近,安全・確実の2点を重視して,両術式を組み合わせた術式(paravesical &supravesicalともいうべき術式)を考案し実施しているので,ここに紹介したいと思う。

研究

子宮体をめぐる血管の走行分布について

著者: 川島一也

ページ範囲:P.339 - P.347

はじめに
 子宮の血管系に関する状態学的研究は,主として月経出血機序に関し,内膜のラセン(コイル)動脈を中心に研究されているが,妊娠による子宮の増大につれて子宮体に分布する血管も伸展することを考えれば,子宮体部の血管系の形態は,内膜血管と同様に重要なものである。従来,月経機序解明のための内膜に関する血管などの研究1〜6)は多くみられるが,子宮体部の血管系,少なくとも子宮体の血管の摘出の報告はあまりみられない。それは描出方法に多くの困難と複雑な問題があるためであろう。子宮体部血管系描出の研究方法としては,ある物質を子宮血管に注入してその走行分布を観察する注入法か,または象形復成模型法がその主なものである。1913年Sampson7)がゼラチンを注入し,子宮血管には動静脈を問わず弁は無いと発表し,Okkels4), Schlegel8),Dalgaard5)らは色素を注入して内膜に動静脈の吻合を認めている。一方Holmgren9)は造影剤注入法を用い,X線写真により血管走行を研究しいる。BernhardとSemm10)は子宮動脈から合成樹脂を注入し,子宮血管の実像を作製し,子宮血管の上,下行枝および内膜に分布している動脈はラセン状であるが,体部に分布している動脈は放射線状で体部中央にて毛細血管網を作つて左右の子宮動脈の分枝が吻合していることを認めている。一方,象形復成模型法としては,Barthelmez11)が平面的象形復成模型法により筋円錐(muscle cone)の存在を発表し,河田12)も同じ方法で静脈系には血管系球があるという。斉藤2)は本法と墨汁注入法により,内膜血管には増殖期も分泌期も相違した所見はないと発表している。能勢34)は墨汁注入法,合成樹脂およびビニール注入法により子宮体内膜血管の形態と機能を検討し,増殖期,分泌期,月経前期とに応じた変化のあることを認めた。またアルカリホスファターゼ13〜16)を用いて子宮血管の描出および電子顕微鏡的研究17)も導入されてきた。私は血管を実像として得られ,また子宮全体の血管系を観察できるという意味から合成樹脂(アクロン)を用い,これを左右の子宮動脈より注入したのち,子宮組織を腐蝕溶解し,血管そのものの立体実像を作製し,子宮の血管走行分布を観察した。なお本法は鋳型作製法のため,子宮組織内における血管の部位的観察が困難なため,アクロン注入後子宮切片を作製し,細い血管をも詳細に観察した。

症例

未熟児網膜症(後水晶体線維増殖)について(第1報)

著者: 中嶋唯夫 ,   柄沢和雄

ページ範囲:P.351 - P.356

はじめに
 後水晶体線維増殖症は未熟児網膜症,あるいは後水晶体線維形成症などとも呼ばれ,未熟児に関心が高まり,保育方法も高酸素環境の保育器を用いるなど,保育成績が向上した時点での落し子,また低体重未熟児に多く認められることから一命が救われた結果,その未熟性の一部分症として遺された疾患かなど,現在なお後述のごとく,必ずしもその原因は分明でなく,罹患児に見られる後障害を必ずしも残さないなど,また検査の時期などで必ずしも明確な連続追求検査でないと詳しいことは述べられないが,われわれは当院に未熟児センターが設けられてすでに15年になるが,昭和31〜33年収容未熟児のfollow up調査で特に本症の後遺症も把握しえず,視力障害を訴えた退院後の訪問指導2例も追跡調査で視力異常もきたさなかつたなどから,当院未熟児センター収容児には発生は稀有のことと安心していたが,昭和41年より昭和42年度にかけ,眼科専門医に高度の本症と診定された4例に遭遇したので,前述のfollow up調査時の集計をも参考に以下少しく報告したい。なお本年より日赤中央病院梶眼科部長に生下時体重2,000g以下,呼吸異常の長びいた症例を中心に退院前の眼底検査をお願いしているので改めて他の機会に報告したい。

卵管に原発したと思われる腺癌の1例

著者: 佐野正治 ,   富永好之 ,   長谷川清 ,   堀哲美 ,   森久博司

ページ範囲:P.357 - P.359

はじめに
 女性性器は癌の好発臓器であるが,原発卵管癌は全女性性器癌中0.2〜0.5%9)と比較的稀である。最初に報告したのはRaymand (1847)10),本邦では佐野(1913)12)で,その後かなり多数の報告がなされている。最近,われわれは左付属器良性腫瘍の診断のもとに開腹したところ,左卵巣は拇指頭大で癒着し,左卵管に超鶏卵大の腫瘍を認めたが,悪性腫瘍であることに疑いがもたれなかつた。しかし術後の病理組織検査により卵管癌と診断されたが,臨床所見や病理組織学的所見により,原発卵管癌と思われるのでその概要を報告する。

薬の臨床

子宮頸癌に対する新制癌剤PCB−45の使用成績

著者: 舘野政也 ,   浮田俊彦

ページ範囲:P.363 - P.370

はじめに
 従来から悪性腫瘍の治療法としては,根治療法として外科的療法と放射線療法とがとりあげられ,両者の併用療法が最も効果的であるとされているが,さらにそれら療法の適応を逸した重症例や再発転移例に対しては,現在,制癌剤による他はないが,上述した根治療法は,要するに局所療法であるから,癌が全身性疾患と考えられていることから,制癌剤の目ざましい追究があるのは,けだし当然というべきであろう。現在までに発表されてきた制癌剤は表1のごとくであるが,製剤の改良は次第に根治療法への仲間入りを果たす日も近い期待をわれわれに与えさせる感がある。さて制癌剤の使用方法についても,種々検討が加えられ,また,工夫されており,表2のごとく種々の方法が行なわれているが,一長一短のある現状である。従来からの使用法の成果としては,末期癌への応用が主体をなしていた関係もあり,自覚症状緩解程度のものが多いようであるが,それは制癌剤が本質的に腫瘍細胞のみに作用するのではなく,生体の造血臓器や他の重要臓器にも作用し,そのため副作用を発現して,その使用を中途で中止せざるを得ないことなどにも起因するものと考えられる。よつて副作用を抑制するような薬剤や,作用機序の異なつた各種制癌剤の併用などが試みられ,かなりの効果もあげられているようである。しかしいずれにせよ,制癌剤が末期癌に使用されている現状では,その治療成績も飛躍的な向上を期待するのは困難であろう。今回,われわれは高濃度のpenicillin存在下で37℃,20分間の処置を行ない,溶血性連鎖球菌(以下,溶連菌と略)の制癌能を高めたといわれる,いわゆる制癌剤"PCB−45"を子宮頸癌に使用する機会を得たので,その使用成績について報告する。

尿路感染症に対するNeomysonの臨床治験

著者: 藤井日出男

ページ範囲:P.371 - P.373

はじめに
 婦人の尿路感染症を産婦人科領域で取り扱うことが多い。急性症の診断ならびに治療は比較的容易であるが,慢性症のそれとなると意外に困難なことが多い。私はこの慢性尿路感染症が原因で,婦人が腰痛であるとか,あるいは下腹痛を訴えたり,また無症候性尿路感染症が妊娠を契機として急性症状を呈したり,あるいは腰痛とか下腹痛などの不定愁訴を訴えるようになつたり,またたとえ妊娠末期迄症状の発現がなかつたとしても,尿所見上,晩期妊娠中毒症との鑑別診断に迷つたり,産褥期に急性症状が現われたりするなどすでに発表してきた。
 近年,尿の定量培養法の意義が指摘され,この簡易テストであるTTC-testなども開発され,診断面で日常臨床に応用され,無症候性尿路感染症も漸次解明されつつある。これとは別に私は近々発表予定であるが,尿沈渣所見より検討し,たとえカテーラル尿で塗沫はもちろん培養で起炎菌が認められなくも,尿蛋白が精々20〜30mg/dl以下で,尿沈渣の膿球が各視野数カ以上認められた場合は,尿路感染症と診断しても大きな間違いがないとの結論に達し,化学療法で自覚症状はもちろんのこと,沈渣所見の改善をみている。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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