icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科24巻5号

1970年05月発行

文献概要

研究

子宮内膜増殖症の予後について

著者: 蜂屋祥一1 塩塚幸彦1 大野喬三1 木下英夫1 粟田口宏三1 秋山直照1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学産婦人科学教室

ページ範囲:P.425 - P.435

文献購入ページに移動
はじめに
 Schröder,R.(1915,1945)によつて,子宮出血を来たす疾患のうち,これまで考えられていた炎症や腫瘍とは関係なく,子宮内膜がある特有の病理組織像を示す変化が存在し,さらに,これが卵巣における卵胞の存続,すなわち内分泌機能と密接な関係のあることが明らかにされ,この疾患をMetropathia Hämorrhagicaと命名した。このような卵巣機能と子宮出血との関連性から,本症がその後,機能性子宮出血の代表的病態像として考えられてきたが,それに前後して,子宮出血時の内膜所見において,増殖期内膜——Corner & Hart-man (1927) Traut & Kuder (1935)ら,分泌期内膜-Hanblen (1939),Sutherland(1949),Jo-hnes (1935)ら,さらに内膜剥脱遷延 irregularshedding-Meyer, R.(1940),Mc Kelvy&Saun-wels, Hormstrom (1947)らが登場,その他,無機能内膜,萎縮内膜からの出血も認められてきた。このようにして,きわめて臨床的な出血性子宮疾患,すなわちMetropathia hemorrhagicaという曖昧な名称と概念は,機能性子宮出血となり,また,その特徴像とされた腺嚢胞性内膜は出血を惹起する内膜の一型にしかすぎないことが明らかになつた。さらに,腺嚢胞性内膜cystic glandularhyparplasiaは,1941年,Novak, E.のEndome-trialhyperplaseの提唱以来,数年かかつてこの病態の一型として認識されるようになり,他のadenomatous, stromalの2型とともに増殖性の疾患として取り扱われるようになつた。
 臨床的には,次にあげるいくつかの特異性,すなわち機能性出血の組織分類の中で,治療後も高い再発の可能性を持つていること,また病理組織学的には出血の有無にかかわらず正常婦人に見られる各相・各期内膜とは,明らかに異なる特異的patternを有すること,出血機序も機能的出血機転の他に,器質的変化による出血症状を有すること,および,悪性化の可能性を有することなどから,本症を,われわれは,単なる機能性出血の一型とは考えず,特別な疾患として取り扱つてきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?