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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科25巻3号

1971年03月発行

雑誌目次

特集 産婦人科麻酔の問題点

産婦人科麻酔—最近の動向

著者: 藤田達士

ページ範囲:P.201 - P.207

はじめに
 1970年は産科婦人科の麻酔にとつて多彩な年であつた。従来永年にわたつて治験段階にあつた各種の新しい麻酔剤が市販されたからである。特に静脈麻酔剤の進歩は近年著しく,静脈麻酔の概念の変更がせまられている。これは非バルビタール系の導入静脈麻酔剤が相次いで登場したことによる。
 まずpropanidid(エポントール・バイエル),ketamine(ケタラール・三共),diazepamの静脈用製剤(ホリゾン・山之内,セルシン・タケダ),に加えて鎮痛のみを目的とした非麻薬性(WHOおよび厚生省より麻薬指定を解除された)鎮痛剤pentazocine(ペンタジン・三共,ソセゴン・山之内)が登場し,従来のバルビタール系静脈麻酔剤の最大の欠点であつた鎮痛作用の欠如が補われたために,静脈麻酔のみでは手術を行ない得ないという大前提が崩れることになつた。後述するようにエポントールやケタラールにもこの鎮痛作用がある。

産科麻酔における前投薬の意義と方法上の問題点

著者: 長内国臣

ページ範囲:P.209 - P.215

はしがき
 産科麻酔の前投薬とは,分娩時麻酔における分娩第1期の鎮静・鎮痛法のことで,すでに1906年にドイツのFreiburg大学でmorphine・scopolamine注射による方法が創始され,次いで1930年アメリカでbarbiturateが用いられ,また1943年mor-phineにかわつて合成剤のmeperidine(Demerol,オピスタン)が用いられた。すなわちmeperidineは母体に十分鎮痛効果をあらわすが,胎児にはmorphineのような強い呼吸抑制がないからである。そして,Demerol・scopolamine注射は各国で,ル-チンとして普及した。
 その後,方法上の問頭点として,(1)各種のtranquilizerが簇出するに及んで,diazepam(Va-lium,セルシン,ホリゾン)やhydroxyzine(Vis-taril,アタラックスP)の併用によりmeperidineの量を滅少して児の抑制を減少したり,(2)sco-polamineをpromethazine(ピレチア)にかえて母の不穏を防止したり,(3)barbiturateの投与量を従来より減少し,本来の催眠効果におさえたり,(4)これら薬剤の併用によるバランス投薬balan-ced medicationという観念が強調されたりしていることなどが特徴といえる。

産科麻酔における酸—塩基平衡の意義と問題点

著者: 奥田千秋

ページ範囲:P.217 - P.222

 近年,酸—塩基平衡Acid-Base Balance (以下A.B.B.とする)に対する関心が,麻酔科,外科および内科を初めとして,各領域に持たれ,今日では,単なる基礎学問としてのみではなく,日常臨床における患者管理上の重要な一項目となりつつある。
 しかし,産科領域におけるA.B.B.の研究は,対象が制限される上に,妊娠そして分娩機序の複雑さが加わり,その発展を遅らせていたが,最近に至りやつとその一面が明らかにされてきた。

局所麻酔の作用機序

著者: 西邑信男

ページ範囲:P.225 - P.227

 臨床的に局所麻酔を有効に使用するためには,解剖学的,生理学的な考慮の他に薬理学的な考慮も必要である。
 ただ単にきめられた局所麻酔剤を神経の近く,皮下やくも膜下腔に注入しただけでも十分な麻酔効果をうることがしばしばであるが,しかしかような方法ではその成功率は低くまた合併症をおこしやすくなる。

酸素吸入法の理論と実際

著者: 森岡亨

ページ範囲:P.229 - P.235

まえがき
 酸素吸入法で他の領域に比べ特異なのは,産科の方である。分娩前後を通じ,産科的あるいはその他の要因で,低酸素症に由来すると考えられる児のdistress syndromeをみることがある。こういう場合,母体あるいは新生児に対する適当な酸素吸入が,生れ出ようとする新しい生命の可能性を左右し,あるいはその一生の禍福に大きな影響を及ぼすことも考えられる。
 本稿では,産科に関連させて酸素吸入の意義を理論的に解説し,それを有効に実施するためにはいかにすればよいかを論じてみたい。

合併症のある患者の麻酔

著者: 稲田豊

ページ範囲:P.237 - P.244

 患者管理,手術手技,抗生物質,麻酔などの進歩により,一昔前にはSFか夢物語でしかなかつた心臓移植というような大手術が行なわれる時代になつた。同時に,各種の合併症を伴い状態の悪い患者,いわゆるpoor risk患者にも手術を遂行することができるようになつた。本稿では,かかる合併症のある患者の麻酔管理についていろいろ考えてみたい。
 定時手術はもちろんのこと,緊急手術においても,できる限り患者を最良の状態に持つて行つた後,初めて手術にふみきるのが原則である。Porp-hyriaの場合にはBarbiturateを投与してはならない,ショックにおちいつている患者に脊椎麻酔を行なうのは危険である,電気メスを術中に使用する場合には爆発の危険があるEtherやCyclo-propaneを用いるべきではない,というような絶対的禁忌を除くと,ある状態下にある患者に対してある麻酔剤・麻酔補助剤の使用,およびある麻酔方法が危険性をはらんでいるということは,相対的禁忌のわくを出るものではなく,それらも慎重に応用すれば先ず安全に麻酔を行なうことができる。しかし,いかなる麻酔においても厳守すべき鉄則がある。すなわち,肺にもどつてくる混合静脈血の酸素加と炭酸ガス排出が充分に行なわれるように呼吸を管理すること,重要臓器への血流および末梢循環が良く維持されるように循環を管理すること,出血・体液喪失と輸血・輸液のバランスをよくとり,水分・電解質平衡を可及的正常に近く保つこと,である。さらに,手術成績を向上せしめるためには,前投薬に始まる麻酔管理を含めて,術前,術中,および術後を通じての患者管理に意を用いることが不可欠であり,術中のみに努力を集中しても良い成績は得がたい。

産婦人科開業医における吸入麻酔および局所麻酔の実際

著者: 大川昭二 ,   木村隆

ページ範囲:P.247 - P.252

はじめに
 産婦人科開業医における吸入麻酔および局所麻酔というテーマは,かなり広範囲なものと考えられ,産科麻酔学全般について述べなければならないことにもなるので,日常産婦人科開業医がよく遭遇する産婦人科領域の婦人科手術,分娩の麻酔(無痛分娩),人工妊娠中絶,および分娩後大量出血時の子宮摘出術の麻酔,子宮外妊娠の麻酔などをとりあげ,適当と思われる麻酔法について述べ,術後管理の問題に触れて本項の責に応じたいと思う。

新しい麻酔剤ケタラール使用の問題点

著者: 新井正夫

ページ範囲:P.253 - P.256

I.ケタラールの特性
 1.鎮痛効果
 実験的に本剤は,大脳の新皮質や視床系を抑制するが大脳辺縁系には刺激的に作用する麻酔解離性である。脳波学的にも痛覚の中枢である新皮質—視床が抑制されている時期でも大脳辺縁系では覚醒波が認められる。すなわち意識と痛覚との間に解離があることが特徴的であるが,アルコール注射の際にも同じような現象がみられることから本剤のみの特性とすることに疑意を持つものもある。
 また新皮質領域は抑制されているが体性感覚野および連合野ではδ波を認められ,その他の感覚皮質では認められないことは,本剤が体表手術には鎮痛効果があるが内臓手術には麻酔効果がないことを示唆している。

新しい麻酔剤Pentazocineの無痛分娩への応用—胎盤通過性よりみた使用量について

著者: 木村隆

ページ範囲:P.259 - P.263

はじめに
 遠くバビロニアおよびエジプト時代にすでにopiumの記録があるごとく,鎮痛(pain relief)の手段として麻薬即ちopium, morphineおよび近くは合成鎮痛剤(pethidine等)が使用されて来ているが,その強い鎮痛作用に拘らず耽溺性および呼吸抑制などの副作用のために理想的な鎮痛剤の出現が望まれてきたが,相変らずmorphineが主流を占めているのが現状である。即ちM.Gatesはいみじくも次のようにいつている。"For severepain the most widely used drug is still morphine.Other useful drugs have been found, however, inthe course of the search for substances with mor-phine's qualities but not its bad ones."
 morphine拮抗剤であり,morphineのN-me-thyl基(-CH3)をallyl基(CH2CH=CH2)で置換したnalorphine塩酸塩が強力な鎮痛作用を有し(Lasagna&Beecher,1954,Keats&Telford(1956),かつ耽溺性のない(Isbell,1956),ことが知られて以来10年以上になる。即ち薬剤の鎮痛作用と耽溺性はかならずしも不可分の関係ではないことが発見されたわけである。しかしnalor-phineはその精神変容性(psychomimetic effect)という副作用のために今日では有用な鎮痛剤ではなく,次のbenzomorphine誘導体の研究へと進むのである。その結果,最近Sterling Winthrop Re-search InstituteのDr.S.Archer (1962)らによつて見出されたpentazocine (以下Ⓟと略す)が,morphineと比較して鎮痛作用が強力で,耽溺性がなく(low abuse potential),精神変容性もなく,呼吸抑制も少ないという利点が臨床的にも実証されたため脚光を浴びて来たのである。Keats&Telford (1962)によつてⓅの30mgがmorphine10mg, pethidine 50-100mgの鎮痛効果に匹敵すると臨床薬理学的に評価されている。

麻酔法--私はこうやつている

サドル麻酔

著者: 名取光博

ページ範囲:P.264 - P.264

 サドル麻酔は手技が極めて簡単で,いつ,どこでもできる麻酔法である。しかも確実な麻酔効果が得られるので,正に日本的な麻酔法ともいえよう。

硬膜外麻酔—無痛分娩法としての硬膜外麻酔

著者: 楠本雅彦 ,   楠本春彦

ページ範囲:P.265 - P.266

 無痛分娩には数多くの麻酔法があり,それぞれ一長一短があり,必ずしもどの麻酔法が最もすぐれているとはいい切れない。各術者の能力や患者の状態に応じて使いわけられるのは当然のことである。
 しかしわれわれは現時点では無痛分娩には硬膜外麻酔が最もすぐれている麻酔法と信じている。

陰部神経遮断麻酔

著者: 川上博

ページ範囲:P.266 - P.267

Ⅰ.目的と適応の選択
(1)娩出期の無痛法として(2)骨盤底筋群の弛緩法として利用する。
 陰部神経の知覚支配は腟下半と会陰部の範囲に限られ,従つてこの遮断による無痛効果は分娩第2期の後半,すなわち児頭が骨盤底に達してから会陰を通過する期間のN.Pudendusによる痛覚伝導の遮断による効果のみである。
 子宮筋,すなわち陣痛による疼痛,および頸管拡大時の疼痛のように交感神経および副交感神経によつて伝達される疼痛に対しては全く無効であることを念頭におくべきである。

旁頸管麻酔

著者: 米山雅雄

ページ範囲:P.267 - P.268

I.準 備
 1.1%カルボカイン20cc,または0.5%マーカイン20cc,2.コッヘル止血鉗子1本,3.コバック針1本,4.ルアーロック式注射器20cc1本,5.消毒したゴム手袋。

フローセン吸入麻酔

著者: 武田秀雄

ページ範囲:P.268 - P.269

 フローセンが産科領域に用いられるのは(1)無痛分娩の第二期,(2)帝王切開麻酔,(3)外回転術,骨盤位その他異常位娩出の麻酔等であるが,わが国では無痛分娩には余り用いられておらず,昭和40年の長内のアンケート調査によれば,トライレン,笑気,エーテルに次いで第4位を占め,その頻度は僅かに1.1%にしか過ぎない。その理由は①フローセンは麻酔力が強く子宮収縮を抑制して分娩を遷延させ,後出血量が増加する。②適度な麻酔深度を得るには精度の高いフローセン気化器(例えばフローテック)を必要とし,従つて器械が高価である。③フローセン自体も比較的高価であり通常笑気および酸素との併用麻酔が必要であり費用がかかる。④フローセンに対する知識に乏しい点が考えられる。これに対して帝王切開麻酔としてのフローセンは①導入,覚醒が速やかで気道刺戟性が少なく緊急帝切にも適している。②胎児に対する抑制作用も少なく,またsleepy babyが生れた場合でも蘇生器により児の肺換気が開始されると回復が早い。③後出血の点も酸素によりフローセンを洗い出すことにより直ちに収縮剤に反応するなどの利点が多いため最も屡々用いられている。ここでは私達の行なつている無痛分娩法および帝王切開麻酔法について述べて見よう。

ペントレン吸入麻酔

著者: 大川昭二 ,   木村隆

ページ範囲:P.269 - P.270

 ペントレン吸入麻酔を無痛分娩に使用する方法として,閉鎖循環式麻酔器,Demand Typeの麻酔器を使用して,これに専用気化器を取りつけてペントレンを使用する方法,ペントレンアナルガイザーを使用する方法などがある。
 私は,Walton Vを使用始めてから,Acoma S Ⅰ〜S Ⅱ型,およびペントレン専用気化器Acoma Wickを試作発表するまで,約700例余のペントレン吸入麻酔による経腟分娩例を経験している(文献(1),(2))。

笑気吸入麻酔

著者: 堀口貞夫

ページ範囲:P.271 - P.272

Ⅰ.第Ⅰ期の和痛法
 分娩第Ⅰ期から第Ⅱ期前半までの間は,所要時間が長いことや陣痛を抑制したり,過量投与になることなどを避ける必要があり難かしい点が多い。
 子宮口が2指以上開大して,陣痛が間歇5分前後,発作30秒以上と強くなつて来たときに,ジアゼパム(ホリゾン・セルシンなど)10〜20mgやヒドロキシジン(アタラックスP 100mg)を筋注している。更に必要があれば,3〜4時間毎に追加投与し,痛みが強くなつた時は塩酸ペチジン(オピスタン,ペチロルファン50〜70mg),ペンタジシン(ペンタジン,ソセゴンなど)15〜30mgを筋注する。より強い効果を期待するときはスコポラミン0.4〜0.5mgを併用している。

カラーグラフ

卵巣腫瘍の組織診断Ⅲ

著者: 竹内正七 ,   泉陸一

ページ範囲:P.198 - P.199

Ⅲ.性腺間質(gonadal stroma)由来の腫瘍
 これに属するものとしては次のようなものがある。
A.特異的間質(性索)
1.莢膜細胞腫(theca cell tumor)良性群(図1),2.顆粒膜細胞腫(granulosa cell tumor)中間群(図2),3.男化腫瘍(arrhenoblastoma)中間群(図3),4.その他の(特異的)性腺間質腫瘍
B.非特異的間質
5.線維腫(fibroma)良性群(図4),6.肉腫(sarcoma)悪性群(稀)

トピックス

50歳以後の排卵

著者: 橋口精範

ページ範囲:P.215 - P.215

 50歳をこえてからの妊娠はまれであり,まして分娩とでもなるとさらにまれといえる。
 私共の経験でも,50歳以上の妊娠例はいくつかあるが,分娩例は45歳の初産が最高年である。

臨床メモ

子宮外妊娠破裂時の自家血輸血

著者: 竹内久弥

ページ範囲:P.256 - P.256

 子宮外妊娠破裂の際,腹腔内に貯溜した血液を再び静脈から戻してやる自家血輸血(Auto-transfusion)は,ブラッドバンクの発達した現在ではあまりかえりみられない方法となつてしまつたようにみえる。しかし今日といえども供給血だけで万全が期せられるわけではなく,この方法で安全に輸血できるものならばその技術を会得しておくにこしたことはない。
 JamaicaのPathak and Stewart(Lancet,1:961,1970)によれば,彼らの1954年から1967年までの1055例の子宮外妊娠破裂のうち自家血輸血を行なつたものは530例(50%)におよんだ。輸血量は250〜3000ml,平均915mlであつたが,それ以上に保存血輸血が併用されたものの方が多かつたという。腹腔内貯溜血の細菌培養の結果は45例中35例陰性で,10例に空中落下菌による汚染が認められたに過ぎず,このことは貯溜血を採取して直ちに使用すれば安全なことを示している。貯溜血のHb値は50例について5〜139/dl (平均8.1g/dl)であり,同時に測定された静脈血のHb値が6.1〜13.2(平均10.2) g/dlであるのに比して稀釈されている傾向がある。従つて,自家血輸血は循環血量を増すためには優秀な方法ではあるが,生きた赤血球の供給源としては劣るといえよう。自家血輸血施行例中2例に副作用が発現した。1例は100ml輸血後に高熱と硬直が起こり,中止してその後異常なく経過した。1例は600ml輸血され,その後血圧下降し乏尿となつたが,自然に回復した。この例の貯溜血は古く,輸血に不適当なものであつたという。術後第3病日のHb値は大部分が低値であり,その後に鉄剤の投与で必要であつた。

連載講座

産婦人科領域におけるホルモン療法(3)—無排卵

著者: 橋口精範

ページ範囲:P.277 - P.278

I.療法にあたって
 一般に,無排卵のものは,前項にのべた無月経という形であらわれてくることが多いので,その場合には無排卵であることが充分推定のつくところであるが,稀発月経,過少月経といつた場合でも,無排卵によつておこつてくることが多いので,念頭に入れておく必要がある。
 しかし,中には無排卵周期症とよばれるものがあり,無排卵なのに,外見上は正常月経周期をみせていることがあるので,この場合には種々の検査をしてみて,初めてわかることが少なくない。

症例

先天性魚鱗癬様紅皮症の1例

著者: 木村好秀

ページ範囲:P.281 - P.286

はじめに
 新生児にみられる先天性皮膚疾患は極めて少ない。その中で先天性魚鱗癬様紅皮症は1902年Brocqが初めて記載した疾患で,欧州では比較的多く報告されているが,本邦では極めて稀な疾患とされその報告例も未だ30例に満たないようである。本症と先天性魚鱗癬との異同については諸説があり両者を同一疾患とするもの,またあるものは独立疾患とすべきことを主張するものもあり現在なお一定の結論に達していない。
 本症の報告例の殆んどが皮膚科領域よりなされているが,最近われわれは本症の1例を経験したので報告する。

薬の臨床

後陣痛に対するペンタゾシンの鎮痛効果に対する検討

著者: 丹野幹彦

ページ範囲:P.291 - P.294

はじめに
 ペンタゾシンは1959年,米国ウインスロップ研究所において開発されたベンズアゾシン骨格を有する化合物で,モルヒネに近い化学構造を有しながら身体依存性はなく,その効果は,30mgの非経口投与で,ほぼモルヒネ10mg,ペチジン75〜100mgに匹敵するという。今回われわれは,後陣痛を対象に二重盲検法により鎮痛効果を中心に検討する機会を得たのでここに報告する。

プレマリン錠剤内服時の血中濃度ならびに尿中排泄量について

著者: 中山徹也 ,   香川繁

ページ範囲:P.295 - P.296

 静注用プレマリンについて,そのエストロゲン活性の基礎的研究および血中濃度,尿中排泄量に関しては既に発表した1)。すなわち静注用プレマリンの発情作用は去勢ラット(去勢後3週間)で他の3種のエストロゲンすなわちエストロン,エストラダイオールおよびエストリオールと比較してやや弱いことおよび静注後の血中濃度と尿中排泄量はそれぞれ図1のごとく,注射後15分で10 Vaginal unit/ml plasmaで,以後は急速に減少し30分では2v.u.,1時間およびそれ以後では1v.u.以下であつた。また同時に測定した尿中への排泄量は図2のごとく血中よりの消失とほぼ呼応して,最初の1時間に全量の30%近くが排泄された。その3分画をみるとはじめはエストロンが圧倒的に多いが,その後はすみやかに減少し,エストラダイオールも漸次減少するが,エストリオールは4時間目までの所にピークがある。プレマリンにはエストリオール,エストラダイオールはほとんど含まれていないので,このように尿中に多量に排泄されることは,主成分であるエストロンからエストラダイオールやエストリオールへの転換が行なわれたものと考える。
 そこでこれに対して今回はプレマリン錠剤の経口投与後の血中濃度および尿中排泄量を検討し,前回の静注の成績と比較した。まず血中濃度は,3週間前に手術的に去勢された45歳の婦人にプレマリン錠2.5mgを投与し,投与後6時間,12時間,24時間および36時間にそれぞれ約20mlずつ採血し,その血漿10mlを塩酸加水分解,ベンゼンにて連続抽出後,プロピレングリコールで各種濃度に稀釈し,これを小林・中山法,すなわちそれぞれの0.05mlを去勢後3週間の成熟雌ラットの腟内に注入し,入口部を巾着縫合して液の流出を防ぎ,24時間後に抜糸,再び同量の溶液を注入縫合して,さらに24時間後に抜糸してスミアを検査した。

婦人科領城におけるTetrazepamの応用

著者: 斎藤清

ページ範囲:P.297 - P.298

緒言
 腰痛を訴えて外来を訪れる患者は多い。婦人科領域における腰痛の原因は多種多様で,その治療に際してはまず原因を究明することが第一であり,原因治療を行ないつつ対照療法も必要となる。中でも自律神経失調症に基づく腰痛も少なくない。自律神経失調症患者では腰痛の他,頭痛,肩こりを訴えるものもかなりみられる。
 今回三共株式会社より中枢性筋弛緩剤であるTetraze-pamの提供をうけたので,本剤を自律神経失調症を主として,その他腰痛症,術後腰痛,術後頭痛に応用し効果を検討したので報告する。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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