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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科25巻3号

1971年03月発行

文献概要

臨床メモ

子宮外妊娠破裂時の自家血輸血

著者: 竹内久弥1

所属機関: 1順天堂大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.256 - P.256

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 子宮外妊娠破裂の際,腹腔内に貯溜した血液を再び静脈から戻してやる自家血輸血(Auto-transfusion)は,ブラッドバンクの発達した現在ではあまりかえりみられない方法となつてしまつたようにみえる。しかし今日といえども供給血だけで万全が期せられるわけではなく,この方法で安全に輸血できるものならばその技術を会得しておくにこしたことはない。
 JamaicaのPathak and Stewart(Lancet,1:961,1970)によれば,彼らの1954年から1967年までの1055例の子宮外妊娠破裂のうち自家血輸血を行なつたものは530例(50%)におよんだ。輸血量は250〜3000ml,平均915mlであつたが,それ以上に保存血輸血が併用されたものの方が多かつたという。腹腔内貯溜血の細菌培養の結果は45例中35例陰性で,10例に空中落下菌による汚染が認められたに過ぎず,このことは貯溜血を採取して直ちに使用すれば安全なことを示している。貯溜血のHb値は50例について5〜139/dl (平均8.1g/dl)であり,同時に測定された静脈血のHb値が6.1〜13.2(平均10.2) g/dlであるのに比して稀釈されている傾向がある。従つて,自家血輸血は循環血量を増すためには優秀な方法ではあるが,生きた赤血球の供給源としては劣るといえよう。自家血輸血施行例中2例に副作用が発現した。1例は100ml輸血後に高熱と硬直が起こり,中止してその後異常なく経過した。1例は600ml輸血され,その後血圧下降し乏尿となつたが,自然に回復した。この例の貯溜血は古く,輸血に不適当なものであつたという。術後第3病日のHb値は大部分が低値であり,その後に鉄剤の投与で必要であつた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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