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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科26巻10号

1972年10月発行

症例

巨大子宮筋腫による左下肢静脈鬱血の1例

著者: 舘野政也1 杉田直道1

所属機関: 1富山県立中央病院産婦人科

ページ範囲:P.897 - P.900

文献概要

緒論
 妊娠によつて増大した子宮による圧迫や,種々の腫瘍による圧迫などによつて女性は男性に比して下肢の鬱血や静脈瘤が発生し易い。また,分娩後や婦人科手術後に時として発生する下肢の重症血栓症は治療を行なってもなお,予後は不良のことが多く,機能的に完全に回復するには長時間を要することが多い。また,抗凝固剤で治療すれば,大抵の例では急性疾病期間を短縮し,血栓の拡大を防ぐことはできるが,障害された血管の機能的終局状態は不変である。すなわち静脈の疎通は回復しないからである。また静脈血栓は反射的に動脈の痙攣を起こさせ,したがつて2次的に動脈の循環障害が起こりこれが血管透過性の障害を大きくし,組織の無酸素状態を起こさせるとしている。かくして水腫になり,ここにさらに硬結ができ,さらに皮膚の萎縮,湿疹,色素沈着,潰瘍などの続発症状を伴つて臨床像が形成される。これをDeutsch1)らは血栓後遺症候群と呼んでいる。さて,今回われわれは下腹部から上腹部へかけての巨大腫瘤と,左下肢の著明な腫脹と疼痛を訴えて来院し,一時は悪性腫瘍による症状かと想定し,手術療法を行ない,巨大子宮筋腫を確認し,これによる強度の左下肢静脈鬱血を呈した1例の治療経験を得たので以下記述する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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