icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科26巻11号

1972年11月発行

文献概要

カラーグラフ 臨床家のための病理学・10

子宮疾患・Ⅰ

著者: 滝一郎1

所属機関: 1九州大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.934 - P.935

文献購入ページに移動
 子宮腟部の中央には子宮外口があり頸管に通じいる。子宮腟部の大部分をおおつている扁平上皮部は肉眼で淡紅色に見える。頸管をおおい,さらに子宮外口をこえて子宮腟部の方に張り出している円柱上皮部は紅色に見える。正常な円柱上皮部の組織は頸管のそれに類似し,肉眼的外観もよく似ている。正常な円柱上皮と扁平上皮が接続していると,その境界は非常に明瞭に見える。しかし,そのような例は割合に少なく,境界部の円柱上皮側には種々な変化が生ずるので,判然としないことが多い。その変化を詳細に観察するにはコルポスコピーが適している。
 日常の診察では,子宮腟部を肉眼で観察して,子宮頸部の病変の見当をつけるのが通例である。照明が充分できて,熟練者ならば,大ていの病変を見逃すことはないと思われるが,いわゆる"びらん"と称する病変を分析してみると,実に種々な変化を総括したものであることがわかる。病理組織学的定義によるとびらんは粘膜の表層部が剥脱した状態で,細血管を含む上皮下組織が露出しているので赤色調が強い。いわゆる"びらん"も赤色調が強い点では同じであるが,かならずしも病理組織学的な定義どおりのびらん,すなわち真性びらんではない。これを見分けるには,やはりコルポスコピーが必要であろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?