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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科26巻12号

1972年12月発行

雑誌目次

特集 産婦人科の治療その限界と展望 座談会

悪性腫瘍の治療—その限界と展望

著者: 笠松達弘 ,   東條伸平 ,   竹内正七 ,   栗原操寿 ,   坂元正一

ページ範囲:P.1046 - P.1063

 「悪性腫瘍の治療の限界」というテーマでエキスパートの先生がたにお集りいただき,どこまで治療が可能か,どの辺が限界なのか,あるいはまた将来どのようにその限界をのりこえてどの辺まで治療ができるのだろうかという問題をお話しいただきました。

日常臨床上よくぶつかる頑症疾患の治療の限界 産科

減精子症

著者: 志田圭三 ,   浦野悦郎

ページ範囲:P.1066 - P.1068

精液所見と妊孕数との関係
 受胎・妊娠成立には男子側としては活発に活動する精子が1個あれば充分である。事実,精子数ml当り1コに満たぬ臨床的無精子症例にあつてもその頻度は低いが妊娠成立を認めている。しかしながら,現実の問題として,精子数,精子活性が減少すれば妊孕能は減少するものである。McLeadら(1955),Blender (1952)の臨床的観察結果は,精子数では20×106/ml,精子活動率では40%を限界として急激な妊孕能低下がみられることを示している。現在,我国の多くの男子不妊症クリニークでは以上の成績を加案し,男子妊孕能下限について次のようなデータを採用している。精液量 1.5ml総精子数 40×106/ml精子活動率 40% したがつて,不妊カップルにおいて,上記を下廻る精液所見がえられた場合に,不妊の原因が男性側にあると考え,治療の対象とされるものである。

妊娠悪阻

著者: 塚田一郎

ページ範囲:P.1068 - P.1070

 周知のように,つわりが重症化して栄養障害が現われたものを妊娠悪阻というのであるが,最近は有力な鎮静制吐剤の出現,輸液療法の進歩などによつて妊娠悪阻の頻度は減少し,むしろまれな疾患になつている。妊娠悪阻のために妊娠の継続をあきらめなくてはならないような例はもつとまれになつたわけで,浅学の著者はほとんどその経験がない。したがつて,本稿の執筆老として不適任なのではないかと恐れるのであるが,編者のご好意に甘えて,本症の治療の実際とその限界について私見を述べることとした。

妊娠中毒後遺症

著者: 我妻堯

ページ範囲:P.1070 - P.1073

後遺症の定義
 妊娠中毒症の妊婦が分娩を終了した後も,蛋白尿,高血圧などの症状が遺残している状態を一般に後遺症とよんでいる。症状の程度や持続期間は個人差が著しいから,診察,検査がおこなわれた時期によつて後遺症の定義にも影響することになる。1962年に,日本産科婦人科学会,妊娠中毒症委員会が,「分娩後1ヵ月以上にわたつて高血圧,蛋白尿,浮腫などの症状を遺したものを後遺症とよぶ」と定義しているので,ここでもその定義にしたがつて述べることにする。なお浮腫が後遺症としてのこることは極めてまれであるからここでは省略する。

習慣性流早産

著者: 八神喜昭

ページ範囲:P.1073 - P.1075

 習慣性流早産とは,2回以上続けて流早産を繰返したものをいい,それが単一の原因により流早産を繰返すものについて,その原因を適確に把握しえ,なおそれに対しての治療法が確立されていれば,治癒せしめ得るわけであるが,本症においては原因の明らかなものは少く,かつ同一の原因によつて流早産を繰返すとは限らない。加うるに根本的治療法も未だ確立されたものが少ないため,治療にもおのづと限界がある。
 さらには妊娠中においては,その原因を確認することはなお至難であり,いきおい対症療法とならざるをえない。

妊産婦の乳頭異常

著者: 竹村喬 ,   中川襄

ページ範囲:P.1075 - P.1077

 せつかく,安産しても,産後,乳頭や乳腺の異常に悩まされる褥婦をしばしば経験することがある。これらの中には,いかなる治療法にも抵抗を示し,ほとんど効果をみない頑症例も決して少なくない。臨床的に褥婦管理で難渋するのは,単なる乳頭の異常よりは,むしろ乳汁分泌不全など,これに関連したものにあることが多い。したがつて,ここでは乳頭の異常のみに限らず,乳房疾患についてその治療と治療限界について述べてみたい。

C.P.D.

著者: 石原力

ページ範囲:P.1077 - P.1080

 C.P.D.治療の限界という課題であるが,これはC.P.D.例における自然産道による分娩と帝王切開分娩との限界,あるいは試験分娩の限界という意味に解して述べたいと思う。

弛緩出血

著者: 福田透

ページ範囲:P.1080 - P.1082

 産科の実際臨床では各種の異変が突発する可能性が常時秘められているが,弛緩出血はその中でも最も代表的なものの一つである。本症は妊産婦死亡の主因の中にも挙げられているほか,発生予想が全く不可能な場合が多いため,理想的な応急対策がなかなかとり難いことなど軽視し得ぬ臨床意義を有している。
 以下本症の治療などに関する2〜3の点について略述する。

妊娠時の性器腫瘤

著者: 下村虎男 ,   三林隆夫

ページ範囲:P.1082 - P.1084

 妊娠に際しては時に思わさる性器腫瘍が合併して妊娠の経過を阻害したり,分娩時に母児の危険を招くのみならず,時には母体の生命までも脅やかすことがある。私どもはそれぞれの局面に対処して全ゆる努力を傾注してはいるが,未だその去就に迷う場合も少なくない。昭和42年より昭和46年までの5年間に北野病院で取扱かつた分娩数は4,965例であるが,この間妊娠に合併した卵巣腫瘍は18例(0.36%),子宮腫瘍は33例(0.66%),子宮頚癌は2例(0.04%)である。
 これらの合併症をいかに取扱うべきかについていささか意見をのべ諸賢のご参考に供したい。

婦人科

頑症腟炎・附属器溜膿腫

著者: 松田静治

ページ範囲:P.1086 - P.1088

 腟炎や骨盤内炎症の治療は化学療法が主役である。本特集では以下膣トリコモナス症,外陰,腟カンジダ症の頑症例ならびに子宮付属器炎(頑症)の代表である付属器溜膿腫について治療限界を中心に述べる。

過多月経・過少月経

著者: 鈴木秋悦 ,   板倉紘一

ページ範囲:P.1088 - P.1090

 月経異常には,周期,持続期間,経血量の異常などがあげられるが,過多月経(Hypermenor—rhae),過少月経(Hypomenorrhae)は,いずれも経血量の異常に入る。しかし,経血量が多いか,少いかという判定は,自覚的あるいは他覚的にも,その基準がはつきりせず,治療の目標が立てにくいことは,日常の診療上でも,しばしば経験するところである。
 過多月経の原因としては,器質的なものと機能的なものに大別される。器質的な原因が過多月経の原因となつている場合は,もちろん,原疾患の可及的早期の除去が第1である。過多月経を惹起せしめる器質的疾患としては,子宮筋腫が最も代表的な疾患であり,頻度も最も大であるが,その他,骨盤内の炎症性疾患,子宮内膜症,子宮内膜ポリープ,Adenomysosis,子宮癌などがあげられている。

第2度無月経

著者: 五十嵐正雄

ページ範囲:P.1090 - P.1093

第II度無月経の定義
 第II度無月経とは卵巣からのestrogen分泌を欠如した状態で起きる無月経をいう。これに対し第Ⅰ度無月経というのは,卵巣からのestrogen分泌を多かれ少なかれ伴つている無月経をいう。従つて第Ⅰ度は軽症,第Ⅱ度は重症の無月経といえる。

月経前症候群

著者: 高山忠夫

ページ範囲:P.1093 - P.1095

 月経前症候群が一つのclinical entityとして記録されたのは,1931年,FrankがArch, Neurol,Psychiat,の誌上に"Premenstrual tension"という題で報告したのが最初である1)。この論文の中では15例の症例が報告されているが,精神科医である彼は,まず精神科的治療を試み,その効果に限界があることを知り,さらに本症候群の背景には,内分泌学的な機序が関与していることをみとめ,この方向からの治療を試みている。
 もちろん1930年代の内分泌学的検査法は,まだ不完全なものであり,その成績は信憑性に乏しいが,それでも,彼は尿中のホルモンを測定し,これら症例では,"female sex hormone"(mouseuterine unitで表現してある)の尿中排泄が少く,血中に蓄積するために本症がおこるのではないかとのべている。この考えは最近の研究で明らかにされた事実とは異るが,いずれにしろ,本症が単なる神経症,心身症的なものではないことを明らかにした点で意義が深い。

腟部びらん

著者: 野田起一郎

ページ範囲:P.1095 - P.1097

 一般婦人に対する子宮頚がんについての啓蒙がすすむにしたがい,不正性器出血や帯下感を主訴として来院する婦人が激増している。これらに対しては細胞診,コルポ診および組織診などによつてがんのスクリーニングや確定診断が行なわれるが,がんとは無関係な腟部びらんや頚管ポリープあるいは慢性頚管炎が発見されることがきわめて多い。子宮腟部びらんの存在は性成熟期にある婦人の50〜70%におよぶとされ,このような年齢層の婦人にとつては,むしろ生理的状態とされる。したがつて,子宮腟部びらんのすべてが治療の対象となるわけではないが,腟部びらんの存在により頚管炎を惹起しやすく,このことが帯下感や接触出血などの愁訴の原因となることが多い。婦人科医が治療の対象とするのはこのような愁訴を伴なう腟部びらんであるが,現在のところ手軽な薬物療法はその効果が的確でない場合が多く,観血的療法にはそれなりの欠点がある。
 本稿では編集の主旨にしたがい,腟部びらんの発生と治癒の機転,治療法の種類とその選択,治療の適応と限界について筆者の考えを述べたい。

更年期障害

著者: 森一郎

ページ範囲:P.1097 - P.1099

 婦人では,成熟期から老年期への移行期,いわゆる更年期という生理的過程で,女性としての主役を演ずる性腺機能が一般に急激に衰退しがちであるので,ほとんどのものが心身に失調を感ずるようになる。だが多くのものはこれに堪え日常の生活をしている。ところがなかには,日常の生活に堪えられなくなり,医治を乞うようになるものもある。われわれは,この後者の,失調のひどいものを更年期障害と考えている。
 すなわち本症は,病因があるのではなく,一種の適応不全といつてもよいものであるから,治療としては,よほどひどい症状の場合でも,対症療法で症状を緩和させ,時間を待てば,そのうち自然に軽快するもので,治りにくいとか,あるいは治療に限界があるとか,そのような難症の概念に本質的にはいれられるべきものではないと考えている。

若年性出血

著者: 橋口精範

ページ範囲:P.1099 - P.1101

若年性出血とは
 婦人にあつては,性器からの出血は,一生を通じてかなり長い期間みられるものである。
 この出血のうち,月経,ならびに妊娠,炎症,腫瘍,外傷などのように,あきらかに器質性の出血に対して,その原因のはつきりしないものを機能(不全)性出血(Dys) Funktionelle Genitalblu—tungとよんでいる。

エンドメトリオージス

著者: 河合信秀

ページ範囲:P.1101 - P.1103

 子宮内膜症は近年世界各国で増加しており,わが国もその例外ではないが,これは各病院において手術患者の剔出物を完全に精査することが行なわれるようになつたことによる発見率の向上の他に,最近種々の子宮内操作が増加し,明らかにそれによると思われる本症の発現が増えていることも原因していよう。本症の診断はかならずしも容易ではなく,開腹して初めてそれと気づくことも少くない。この疾患は腫瘍でもないのに,しばしば異所性侵入を示したり,また転移のように遠隔臓器にひろがつたりする性質をもつており,いいかえれば癌のような悪性的性格をもつた正常組織とでもいえよう。また正常の子宮内膜が卵巣ホルモンに反応するように,この組織も卵巣ホルモンの刺激に反応するが,実際には必ずしも常にホルモンの刺激に応ずるとは限らなく,たとえばプロゲステロンに反応する力を示さないことがしばしばみられる。一般的には子宮内膜症の生活力は,その個体のそのときの卵巣機能に依存しており,したがつて更年期になればその生活力は衰える傾向にある。

絨毛上皮腫

著者: 相馬広明 ,   豊田泰 ,   清川尚 ,   近田利啓 ,   新井克己 ,   所和夫

ページ範囲:P.1103 - P.1107

 絨腫に対する化学療法の有効性が次第に認められてきている今日でも,なお依然として治癒し得ない絨腫転移例が出現している。その症例数は数年来減少してきているようになつたとはいえ,そのような頑症例はたとえ化学療法を強力的に施行しHCG値は低下しても転移巣はなお残存し,再発を起こしさらに増悪するのであつて全くその治療処置に窮し,しみじみと無力を感ずることがある。しかしすべての悪性腫瘍に共通していえることは,早期発見,早期治療が治癒への根底をなしているが,絨腫でも同様のことがいえると思う。
 まずこのような頑症絨腫例について検討しそれによつての治療限界を提示したいと思う。

腟欠損

著者: 坂元正一 ,   神保利春

ページ範囲:P.1107 - P.1110

 腟欠損の治療すなわち,造腟術は,子宮脱に対する手術とならんで,術式の豊富さでは,産婦人科手術のなかの双壁をなしている。
 術式の種類が多いということは,それだけ治療がむづかしいことにも通ずるが,形成手術であるだけに,一度失敗すると再手術はさらに困難を極め,初回手術の成功が治療成績の向上につながることはいうまでもない。そのためには,各術式のもつ特徴と限界を充分認識したうえで,症例の検討とあわせて,術式を決めることが大切である。

卵巣がん

著者: 寺島芳輝

ページ範囲:P.1110 - P.1112

 卵巣癌の治療の限界という点を中心に記述せよとのことであるが,治療の現状を考えれば,あまりにもpessimisticであり,むしろ,いかなる卵巣癌は根治させなければいけないかを考える方が現在の急務ですらある。
 しかしながら,それでは要望の解答にはならないので,卵巣癌の治療の限界について教室例を中心に検討し,どの程度まで治療が効果をあらわさない場合締めるのかというような困難な問題にもなるべく具体的に触れるとともに,「卵巣癌は治らない」という一般的な印象をできるだけ払底し,将来への新たな治療の足掛りを得ることを念ずる次第である。なお,ここで述べる卵巣癌とは卵巣悪性腫瘍全般を含むこととする。

性感異常

著者: 石浜淳美

ページ範囲:P.1112 - P.1114

 すべての疾患の治療がそうであるように,本症治療の限界もまた,すべてその原因と程度によつて異なる。
 ことに本症は疾患でなく症候であるから,本症候をおこしている原因疾患によつて治療の予後が左右される。

新生児

新生児重症黄疸

著者: 金岡毅 ,   関場香

ページ範囲:P.1116 - P.1118

 現在において新生児黄疸の治療として広く認められている方法は次の3つしかない。
 (1)薬物によつて正常な代謝過程を促進してビリルビンを排泄する方法,つまりフェノバルビタール1)やブコローム2)の投与。

母斑

著者: 肥田野信

ページ範囲:P.1118 - P.1120

 皮層の限局性奇形である母斑は良性のものであり,一部の機能障害を除けば,その害は外観上のものに止まる。したがつて治療として悪性腫瘍に対するような外科的侵襲を加えてはならず,できるだけ瘢痕を残さない方法を選ばねばならない。しかも母斑はいつたん生じたものが一生不変のまま持続することはむしろまれといつてもよく,あるものは拡大進行,または隆起してくるし,あるものは自然に消退し,なんらの手を加えることなしに痕跡的に消失さえするものである。したがつて治療方針を決定する際には当面する母斑の自然経過を一生についておおよそ予想してかかることが不可欠といえよう。
 母斑治療の限界はこのことから容易に想像されるように,始めから治療の限界に達している場合もある。言葉をかえていえば,その人がその母斑によつてうるであろう精神的ないし肉体的負担の持続期間と強さ(これは個人個人により実に大きな差があるが,客観的な尺度もまた存在する)と治療によつて生ずるであろうマイナス面,就中瘢痕とをバランスにかけて,よい方を選ぶわけである。

新生児嘔吐

著者: 坂上正道

ページ範囲:P.1120 - P.1127

 新生児の嘔吐は,全く治療を必要としないものから,早期診断のもとに緊急に手術を必要とするものまで,多種多様であるので,鑑別診断を進めるに際し重要な症状といえよう。以下本特集の意図に沿い,きわめて実際上の問題につき記すこととする。

カラーグラフ 臨床家のための病理学・11

子宮疾患・Ⅱ

著者: 滝一郎

ページ範囲:P.1042 - P.1043

 コルポスコピーの所見を組織学的変化と対照するのはひとつの分析方法であり,Hin—selmann以来しばしば用いられてきた。上皮が増殖すると厚くなり,同時に波状に隆起することが多い。極端な場合は乳頭状になる。正常な子宮頸部扁平上皮の表面は平坦で,間質の血管が透見され難い。
 正常円柱上皮部では血管が透見される。しかし,化生性あるいは腫瘍性増殖により上皮が厚くなると透見され難くなる。上皮が増殖しても間質乳頭部が表面近くに達している場合には,この部の血管が透見され,表面から見ると一定の間隔に細血管が分布して,特殊な模様となつて現れることがある。また,頸管腺の閉塞拡張など,間質に起こつた変化によつて血管が圧上され,薄い上皮直下を走行する場合には明瞭に透見される。真性ビランがあれば,上皮下の血管が直視されることにもなる。

連載講座 麻酔の実際

新生児麻酔—新生児麻酔の困難性

著者: 田中亮

ページ範囲:P.1130 - P.1131

 新生児の麻酔は対象患児が小さいので,技術的には困難であることはもちろんであるが,麻酔学的に本当の難しさは技術的問題のみではない。本稿では,新生児麻酔の困難性について解説し,新生児麻酔を理解するための助けとしたい。

薬の臨床

正常周期ならびに無排卵症婦人の尿中LHの動態—Luteonosticonによる連続測定成績

著者: 平野睦男 ,   吉田威 ,   高橋克幸 ,   中川公夫 ,   鈴木雅洲

ページ範囲:P.1133 - P.1138

 尿中FSHおよびLHの測定方法として現在ひろく用いられているのは,bioassayとradioimmunoassayの2つである。このうちbioassayとしては,FSHはSteelman-Pohley法1),LHはParlow2)のアスコルビン酸減少法(OAAD)法によつているが,bioassayは多数の動物を必要とし,一般臨床検査として簡単におこないうる方法ではない。またradioimmunoassayは高感度ではあるが,設備や操作の上から一般的な検査方法ではない。
 近年Schuursら(1970)3)によつて開発されたLuteo—nosticonは10iu/lのHCGを検出することができる,きわめて鋭敏なHCGの免疫学的微量測定法であるが,LHとの交叉反応を利用して尿中のLHを25iu/lまで検出できるため,尿中LHの臨床測定法として脚光をあびるようになつた。

Combination methodによる低単位HCG測定の実際

著者: 伊藤俊一 ,   井上好雄 ,   岩崎寛和

ページ範囲:P.1143 - P.1147

 絨毛性疾患に対する最近のchemotherapyの画期的成果は,奇胎分娩後のsecond growthに対する診断技術の向上,HCG定量法の飛躍的進歩とともにその管理面を著しく改善した。殊にそのfollow-up実施上の基本ともいうべき臨床検査項日の設定1,2)は,本疾患に対する従来の認識を改め,本疾患が比較的controlし易い疾患であると考えられるようになつてきた。特にestablishedtrophoblastic neoplasiaの概念は,本疾患の治療方針決定に際してのHCG測定の重要性を明らかにし,殊に奇胎排出後の,いわゆる腫瘍のHCG低単位期(HCGlow-level stage)3)における測定が絨腫の再発防止法の発見にもつながることからますますその感が深く,低単位HCG測定の適否が絨毛性疾患の予後を決定するといつても過言でない。

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「臨床婦人科産科」 第26巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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