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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科26巻7号

1972年07月発行

特集 絨毛性腫瘍

絨毛性腫瘍の免疫療法

著者: 相馬広明1 岡本六蔵1 清川尚1 赤枝恒雄1

所属機関: 1東京医科大学産婦人科学教室

ページ範囲:P.615 - P.620

文献概要

I.組織適合性の問題
 妊娠を前提として発生する絨毛性腫瘍が胎児性の起原を有しており,母体にとつては一種の同種移植腫瘍と見なされているので,そのため本腫瘍には父親由来の移植抗原が含まれていることが推定される。したがつて移植免疫の面からの本腫瘍に対するアプローチは大変興味のあるところである。それではなぜ母体から見れば,同種移植腫瘍であるのに免疫学的拒絶反応が起きないのかという疑問が起こるが,この奇異な現象を説明するのにはいろいろな推論や解釈がなされている。例えばtropho—blastには強い移植抗原を含んでいないとか,あるいは逆に強い移植抗原を有していても,それがmaskingされているなどであるが,しかし最も著明なことは,妊娠中には母体血中にtrophoblast細胞が容易に遊走し,母体肺血管内に止まるという事実である。これはいわば経胎盤キメラ現象と見なされるのであり,このような妊娠中の機序はtrophoblastのような胎児性移植抗原によつて,母体側にはあらかじめある種の免疫学的寛容状態が誘発されているのではないかと考えさせられる。このことは同様に絨毛性腫瘍患者の場合にも当てはまることであり,例えば本腫瘍患者にはこれによつてさらにénhance—ment現象が招来されているのではないかという考えもある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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