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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科27巻6号

1973年06月発行

雑誌目次

特集 分娩後の諸問題

産褥期の異常について

著者: 国本恵吉

ページ範囲:P.479 - P.484

 産褥は,分娩後,妊娠および分娩により生じた性器や全身の形態的および機能的変化が妊娠前の状態に戻るまでの期間をさし,その期間はおよそ6〜8週とされている。この期間に性器に起こる現象は,大別すると,子宮その他の性器の妊娠前の状態への復古,分娩時に生じた産道の創傷の治癒および乳汁分泌に分けられる。さらに妊娠中胎児発育に好都合なように適応していた呼吸器,循環器,消化器,泌尿器など諸臓器の機能を,きわめて短期間内で妊娠前の状態に適応させねばならずそのための生理的変化が加わつてくる。
 このような全身的,形態的および機能的変化は,妊娠中の穏やかな適応にくらべ,きわめて短期間に起こるため,その適応の優劣は,その後の全身の機能に重大な影響を与えることはいうまでもない。産褥時に起こるこれらの変化は,また急速なホルモン平衡の変化や,分娩時の激しい身体的労作による疲労あるいは褥婦の感情の変化も加わつて一層複雑化される。

次回の分娩計画法

著者: 三井武

ページ範囲:P.485 - P.490

 一児を分娩した後,母体が健康な場合は通常分娩後2年を経過したら次回の分娩は差し支えないといわれている。しかし妊娠,分娩は母体の健康状態のみならず,各家庭の経済状態,生活環境,夫婦の遺伝関係,母体年齢などと関係があるので,次回の分娩計画といつてもいろいろの難しい問題を含んでいる。たとえば夫婦のいずれかに遺伝性精神病や遺伝性奇形などのある場合は産児数を制限したり,避妊させる必要があり,また性病,結核,心疾患,高血圧,肝疾患,腎疾患などは妊娠によつて悪化することもあるので注意を要する。同様に妊娠中毒症後遺症も分娩後厳重な避妊を行なわなければならない。このように各家庭,個人によつてそれぞれ事情がことなるので,次回の分娩計画は個人はもちろん,家族全体の幸福のためにも長期的なプランをたてなければならない。

分娩後の性機能の回復

著者: 本多啓

ページ範囲:P.493 - P.500

 妊娠・分娩を生殖現象の主要なイヴェントとして,性成熟期婦人の生体活動は男子にみられない激動を示すが,これらを個々の局面としてではなく一連のシークエンスとして捉えることが重要である。その意味から従来の産婦人科学において暗黒の部分と思われるのは,分娩後の生体が示す生理的・病理的変化の詳細な把握であろう。
 近年予防医学的見地から妊婦管理,胎児管理,新生児管理の重要性が強調されているが,分娩を終了した褥婦については,数日から1週間の入院期間の後は自然回復を待つのみで,ゆきとどいた管理が行なわれているとはいい難い。

褥婦のサイコロジー

著者: 保崎秀夫

ページ範囲:P.501 - P.504

 褥婦は,初産婦であれ経産婦であれ,さまざまの心の問題をかかえているのは周知の事実であり,とくに初産婦ではそれが大きい。
 すなわち 1)出産という身体的,精神的に非常に大きな苦痛と危険を体験したこと。 2)体力的消耗に加えて,新生児に対するさまざまな心配が存すること。 3)子供が生れたことにより,家庭内の人間関係が変化し,経済的な問題も生じてくること。 などがあげられている。

合併症をもつた婦人の分娩後の注意

著者: 椹木勇

ページ範囲:P.507 - P.512

 種々の合併症を伴いながら無事に出産をすませた産婦にとつて,分娩後には3つの大きな問題がひかえている。その第1は合併している疾患が産褥中に増悪するか否かであり,もしこの時期を無事に乗り越えることができた場合には第2の問題として,授乳や育児がもたらす負担がその疾患にどのような影響を与えるかであり,第3には次回の妊娠分娩をいかに考えるかであろう。
 もちろん,これらの事項は合併する疾患によつて異なるので,それぞれの専門科とも十分に連絡をとりつつ適切に処置しなくてはならない。以下には主な合併症を中心として,これらの問題点をとり上げてみたい。

カラーグラフ 臨床家のための病理学・16

子宮疾患・Ⅶ

著者: 滝一郎

ページ範囲:P.466 - P.467

 子宮頸癌の肉眼的所見は,上皮内癌や初期侵潤癌のように微々たるものから,一見して診断されるといえる程度に進行したものまでさまざまである。最も注意を要するのは,頸管内でかなり進行しながら,肉眼では認められないものである。頸管内の上皮内癌や初期侵潤癌と同様に頸管スメアの細胞診で認知できる。いわゆる"びらん"のない子宮頸部に対してのみならず,細胞診には頚管スメアを欠かすことはできない。子宮頸癌は組織学的に扁平上皮癌と腺癌に分類される。扁平上皮癌についてはMarzloffの分類(1.棘細胞型:成熟した扁平上皮細胞に類似し,角化や癌真珠形成のあるもの,2.移行細胞型:扁平上皮中間層の細胞に類似するもの,3.紡錘細胞型:扁平上皮基底層の細胞に類似するもの),Brodersの分類(分化型細胞と未分化型細胞の占める割合を基準として第I〜IV度に分ち,未分化型細胞の多い方が悪性であるとしたが,全面的な賛成は得られていない)などがある。日産婦子宮癌委員会は表1のような組織分類基準を用いる。

巻頭論文

ホルモンと避妊

著者: 橋口精範

ページ範囲:P.469 - P.476

まえがき
 妊娠は、精子と卵が結合し,これが子宮内に着床することによつて始まるが,この経過に何らかの障害があると妊娠の成立はみられないわけで,いわゆる不妊ということになる。
 この何らかの障害ということを,人工的に行なうならば避妊ということになつてくるわけである。すなわち,女性側で,排卵がない,排卵があつても卵管が閉鎖している,妊卵が着床できない,頸管粘液が精子の進入を阻害しているということになれば妊娠は成立できないし,男性側で,精子の数が少なかつたり,あるいは全くなかつたり,あつても運動性に乏しいというようなことであれば同じく妊娠の成立はみられないわけである。

臨床メモ

乳房刺激と分娩

著者: 橋口精範

ページ範囲:P.512 - P.512

 乳頭への刺激は,下垂体後葉につたわり,子宮の収縮をおこすことはよくしられているところである。
 授乳をすると,子宮の収縮がおこり,下腹痛をおぼえること,また子宮の回復のためよいことと同時に,妊娠中の乳頭への刺激は流産をおこす可能性もあるわけで,妊娠中の乳頭マッサージも長く,強くしないように,下腹痛が感じるような場合には中止すべきであると指導をしてきている。

今日の産婦人科

癌細胞診断の自動化の諸問題

著者: 西谷巌 ,   菊地徳博 ,   山崎知文

ページ範囲:P.517 - P.525

 "Can automation help us?"最近,子宮癌細胞診の広く普及した欧米諸国において,大量の検体処理に悩むCytologistやCytoscreenerの間でささやかれている。癌細胞診が"Pap.test"と呼ばれて,子宮癌年齢層の婦人の間に普く知れわたつているアメリカでは,C.A.I.(Cytology Activity Index)すなわち30歳以上の婦人1,000人に対する1年間の細胞診実施率は,550〜600に達するといわれ,イギリスでも対象婦入1,700万人の細胞診実施体制を確立する準備がすすめられているとMc Laren1)は報じている。
 西ドイツ全域にわたる子宮癌検診の制度化は,世界各国の注目を集めているが,Soost2)は,1971年7月に制度が発足してから12月までの6ヵ月間に1,617,257人の検診が行なわれ,対象総数1,900万人にたいし8.5%であつたと述べている。このように子宮癌細胞診は,これまでの価値に関するDiscussionやSurvcyから,癌制圧の有効な手段として認められ,これによつていかに検診数の増加をもたらすかという段階にきている。

解説講座

遺伝学の初歩(Ⅱ)

著者: 中島煕

ページ範囲:P.529 - P.534

 遺伝子(gene,"to become or to grow intosomething"の意)が,古典的な遺伝学での抽象的な概念から脱して,物質としての本態をわれわれの前に現わしてからちようど20年経つたが,この間に,遺伝子の構造と機能の研究を中心にした分子遺伝学は,これまでの学問のいずれの分野にも見られなかつたような劇的な発展を遂げた。
 この稿では,これらの分子遺伝学の基礎的な知識が,われわれが病気の成り立ちを考える上でどのように役立つかについて述べることにしたい。

実験検査法講座

細菌—検査材料の採取と取り扱い方

著者: 清水喜八郎

ページ範囲:P.535 - P.537

 日常診療において臨床検査のしめる位置はきわめて重要である。そのなかで,臨床細菌検査は,変貌しつつある感染症を把握し,その治療に結びつける役割が求められている。
 さらに検査の結果がそのまま診断名になりうるがゆえに,細菌検査に対する理解と結果の正しい判断がきわめて重大な意義をもつことになつてくる。たしかに細菌感染による死亡率は減少してきていることは,死因統計成績の変化をみてもわかる(表1)。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

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今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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