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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科28巻10号

1974年10月発行

雑誌目次

指標

産婦人科領域における最近の血液学

著者: 鈴木正彦

ページ範囲:P.651 - P.660

 血液学の進歩は最近きわめて著しく,産婦人科領域においても例外ではない。しかし血液学といつてもあまりにその範囲が広く,限られた紙面でその要点だけを述べることもきわめて困難である。すなわちわれわれが日常臨床で多くの検査をやつているが,血液,尿を使う検査が大部分を占めているといつても過言ではない。同じ血液でも検査する項目は千差万別である。このように純臨床的なことから基礎的なものまで血液学の範囲はきわめて広く,その項目をあげてみると,血球および造血器,血漿蛋白,造血因子,免疫血液学,診断に必要な検査法,血液型,輸血などがある。さらに血球では赤血球,白血球,血小板,造血器では骨髄,リンパ組織,脾,細網内皮系などがあり,また上述の各項目に生理,病理があり,その進歩といつても簡単に述べるわけにはいかない。
 そこでここでは著者が考えて,われわれ産婦人科医が日常数多く接する事柄で,とくに最近進歩の著しかつたと思われる点のいくつかについて述べてみたい。

総合講座 産婦人科と腎機能

腎の構造と機能

著者: 坂口弘

ページ範囲:P.661 - P.666

 腎の構造と機能の電顕的所見については正常,病的なものいずれも広範な研究がなされ,わずかの紙面ですべてを紹介することは困難である。詳細は成書,総説を参照されたい。
 腎実質は,腎小体,尿細管よりなるネフロンと,その間隙にある血管,結合織性間質よりなりたつている。各ネフロンは,ボーマン嚢から初まり,分岐することなしに,また一部では屈曲ないしはらせん状を呈しながら,長さ約30〜40mm続いている。

腎機能検査法とその意義

著者: 阿部裕 ,   浦壁重治 ,   折田義正 ,   福原吉典

ページ範囲:P.667 - P.672

 腎機能という一つの言葉で表現されるものの中には,腎循環に関する機能,糸球体の限外濾過特性,尿細管各部の諸機能と,これを生体の側からみた血清電解質濃度,酸塩基平衡などが含まれる。腎血流量,糸球体濾過値,尿細管の再吸収あるいは排泄極量,尿濃縮力,稀釈力はそれぞれ解剖学的にみたネフロン各部位の機能を量的に表現したものである。一方,尿蛋白の漏出およびそのパターンの変化は糸球体の限外濾過特性に関連した量的あるいは質的異常を表わしている。また血清電解質濃度,酸塩基平衡は腎が生体の平衡維持に対してはたす生理的機能,すなわち上述の各機能が総合化されたものとしてとらえることができる。
 これら各種の腎機能を総合的に把握,患者の病態,予後を的確に判断し治療方針を決定することが重要であることはいうまでもない。それにはこれらの検査法の原理を充分ふまえた上で,腎障害の程度に従つての正当な検査法の選択を行なうことがまず必要である。さらに実施手技上の問題点からひきおこされる検査成績上の誤差範囲も知つて,臨床的,理論的有効数字を確認することが重要となる。たとえばPSP 15分値が40%の場合と35%の場合とを比較すると,この2者の間には臨床上有意義の差があるとは考えられず,治療方針に影響を与えるものではない。しかしPSP 15分値が35%から25%に低下した場合には,たとえ誤差を考慮にいれても臨床的には有意義な差が生じたと考えられる。

腎性高血圧症の病態と治療

著者: 河野剛

ページ範囲:P.673 - P.678

 ヒトの高血圧症には,一次性高血圧症(本態性高血圧症),二次性(症候性)高血圧症および悪性高血圧症がある。その中で,二次性高血圧症をとり上げて分類すると,腎性高血圧症,内分泌性高血圧症,大動脈絞窄,心臓性高血圧症,神経性高血圧症,その他となる。そのうち,腎性高血圧というのは,腎ないし腎動脈におこつた病変が原因となつておこる高血圧をいう。これには,腎血管性高血圧症(renovascular hypertension),renin分泌性腎腫瘍,aldosterone分泌性腎腫瘍および腎実質障害による高血圧症が含まれる。腎実質障害による高血圧症の中には,急性糸球体腎炎,慢性糸球体腎炎,二次性(続発性)萎縮腎,腎盂腎炎,多発性嚢腫腎,水腎症,糖尿病性腎症などがある。本稿では,これら各種腎性高血圧症の病態,診断および治療について略述し,臨床家諸賢のご参考に供したいと思う。

腎炎・ネフローゼ症候群の病態と治療

著者: 目黒輝雄 ,   加藤暎一

ページ範囲:P.681 - P.686

 1827年Brightに始まつた腎臓病の研究は,Volhard&Fahrが1914年に著わしたDie Bright'sche Nieren—krankheiteの中で,病理組織像と臨床症状の対比,腎機能との関連性など,今日なおバイブルのごとくに整理分類された。その後1951年Iversen1)らが経皮的腎生検法を発表し,その後電顕,螢光抗体法などの新らしい手技が次々と導入され,一方では動物実験モデルの研究が盛んになり,腎炎の概念は目まぐるしく変革した。本稿では現在の糸球体腎炎の発生機序に関する問題点を概説し,近年普及しつつある腎生検をもとにした腎炎,ネフローゼ症候群の概念,また治療にあたつての基本的な考え方に触れてみたい33)

妊娠と腎機能

著者: 田中敏晴

ページ範囲:P.687 - P.694

 妊娠の成立によつて,腎機能は非妊時とくらべてどのような変化を示すであろうか。この点を検討するには,近時開発された新しい腎機能検査法を含め,それぞれの検査法ごとに,まず①正常妊娠,②浮腫妊婦を含め妊娠中毒症妊婦,③腎炎を代表とする腎疾患患者の妊娠例などに区分してみる必要があろう。

腎不全の救急処置

著者: 稲田俊雄 ,   佐々木則子 ,   末永松彦 ,   寺岡次郎

ページ範囲:P.697 - P.705

 これまで急性腎不全の救命率は,本治療法に一大革命をもたらした透析療法を導入しても,諸家の報告は50%前後が実情である。ところが最近の私達の臨床経験からいつても,その大半は救命することができるようになつた。
 この変化をもたらした主な原因は,近時明らかにされつつある腎不全の病態生理学の発展進歩に負うところがきわめて大きい。したがつて腎不全の救急処置という本論を進めるに当たつては,まず,体液生理学に基盤を置く,腎不全の病態生理学をマスターすることが大切であることを主張したい。

腎移植とその問題点

著者: 北川龍一

ページ範囲:P.707 - P.711

 腎不全末期患者の治療法として透析療法と腎移植があることは衆知の通りである。
 透析療法に関しては,近年医療保護の体勢がととのい,患者は身体障害者としての援助が与えられ,従来もつとも問題となつていた経済的負担が軽減されるに及んで,その数も飛躍的に増加していることは喜ばしいことである。しかしながら,透析の効果は一時的なものにすぎず,患者は一生涯「透析」からぬけ出ることは不可能であり,その精神的負担は決して少なくない。

トピックス

新しいIUD-Uterine Progesterone system (UPS)

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.678 - P.678

 最近,世界の人口増加が深刻な問題となりその対策が国際的な規模で検討されてきている。
 Pincusにより開発されたホルモンによる避妊薬は,その簡便さと確実性のために,その後20年経過し今や全世界で5,000万人の婦人が服用していると推定されている。しかし,1960年代の後半よりこのいわゆるピルの副作用として血栓症,高血圧症,脳卒中,糖尿病,子宮癌などが報告され,その副作用除去のために内服ホルモン量の減量が検討され,いわゆるミニピルの出現をみたわけである。

臨床メモ

授乳と飲酒

著者: 竹内久弥

ページ範囲:P.705 - P.705

 授乳期間中のアルコール摂取が全く禁忌でないことは常識的に知られているが,どの程度なら大丈夫なのか,その根拠は明らかでなかつた。フィンランド・ヘルシンキ大のY.A.Kesäniemi (J.Obstet.Brit.Cwlth.81,84,1974)は志願者を募り,一定量のエタノールを経口摂取させて母乳中に分泌されるエタノールとアセトアルデヒドを測定した結果を報告している。
 産褥4日から41日までの12人を対象とし,体重1kgあたり0.6gのエタノールの15%水溶液を5分間以内に飲ませ,30,60,90,120分後に母乳と静脈血(肘静脈より採血)内のエタノールならびにアセトアルデヒドの濃度を測定した。その結果,エタノールはどの時間でも母乳中濃度が静脈血中濃度とほぼ等しく,たとえば120分後では母乳中に11.3±2.6μmoles/ml.mlikであるのに対し,静脈血中では12.4±2.4μmoles/ml.bloodであつた。一方,アセトアルデヒドは母乳中には排泄されず,静脈血中に90μmoles/mlも検出される高濃度でも母乳中には検出できなかつた。また,産褥日数による差もない。

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臨婦産相談室

著者: 高嶋達夫

ページ範囲:P.712 - P.713

 【質問】幼児のcolpitisの治療法についてお教え下さい。
【解答】
 幼児のcolpitisは小児婦人科領域で最も多い疾患です。国立小児病院の小児婦人科の統計でも図1のとおり,外陰腟炎が大部分を占めており,今年1月より7月の間でも84名の幼児がcolpitisを心配して訪れております。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

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