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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科28巻6号

1974年06月発行

カラーグラフ 臨床家のための病理学・27

卵巣の疾患・Ⅳ

著者: 滝一郎1

所属機関: 1九州大学医学部産婦人科

ページ範囲:P.410 - P.411

文献概要

 卵巣腫瘍の約80%は嚢腫,すなわち嚢胞性の腫瘍である。そのうち10〜20%は類皮嚢胞腫である。類皮嚢胞腫は卵巣の奇形腫に分類され,外胚葉性成分のうちでも皮膚およびその附属物(毛髪,皮脂腺,汗腺など),軟骨,歯牙などを主成分とし,その分泌物や剥脱物,殊に皮脂を多量に含む嚢胞を形成するという特性を有している。両側性に発生することが多いので,開腹時に両側の卵巣の観察を怠たつてはならない。中胚葉,内胚葉成分をも多少含むが,よく分化しており,臨床的にも良性である。類皮嚢胞腫に対して充実性奇形腫の頻度は少い。充実性とはいえ,変性,壊死などによる嚢胞形成をともなうことが多い。被膜を破つて増殖する傾向が強く,腫瘍の実質は肉眼的にきわめて多様,多彩である。それは腫瘍が内,外,中胚葉性のあらゆる組織,皮膚およびその附属器,軟骨,骨,歯牙,筋肉,脳,神経,消化管,リンパ,甲状腺などの組織を含むのと相応する。充実性奇形腫は日産婦卵巣腫瘍委員会の分類では中間群に分類されている。しかし,しばしば悪性で,近接組織への進展,転移形成を起こし易い。
 奇形腫中に含まれる特殊組織として甲状腺組織が注目されるが,この組織のみが異常に増殖した腫瘍を甲状腺腫Struma ovariという。その10%位が甲状腺機能異常症を現わすとされている。また,悪性化することもある。このほかにcarcinoid tumor組織もしばしば奇形腫中に発見される。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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