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年間テーマ--診断から治療へ 発育の異常
文献概要
胎児は自身の発育・成長に必要な栄養素を,全て母体に求めているから,母体の摂取栄養の多寡は,胎児の発育に当然影響を及ぼすものとおもわれる。しかし,胎児への栄養素の供給は,母体の食事が腸管から吸収された段階で直接移行するものは少なく,大部分はいつたん母体に蓄積されたのち,胎児の要求に応じ,あるいは一定の速度で胎児に摂取されるものと考えられている。すなわち,母体は胎盤より分泌される多量のホルモンによつて,胎児への栄養供給の恒常性機構が確立されているようである。一般の成人では,多量の貯蔵栄養素を保有しているのが普通であり,妊娠するとさらに母体に多量の栄養素が蓄積するので,このような母児の代謝機序が順調に行われるものとおもわれる。しかし,摂取栄養が不足するような場合は,慢性的な不足であるから当然貯蔵栄養も欠乏することになり,その結果,さきに述べたような代謝機序が発揮されず,胎児に対しても悪影響がおよんでくることも考えなければならない。
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