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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科29巻5号

1975年05月発行

雑誌目次

指標

性ステロイドホルモンの作用機構と代謝

著者: 岡田弘二

ページ範囲:P.329 - P.337

 ステロイドホルモンがその標的臓器の細胞で"なぜ","どのようにして"そのステロイドに特異な作用を発揮しうるかを知ることは,ステロイド研究者の長年の夢であつた。そして,これらの問題は長い間神秘のベールに包まれたまま経過したが,分子生物学の発展を基盤に,最近急速に解明されつつある。そして,このことと関連して,ステロイドホルモンーレセプターに関する研究が大きくクローズアップされ,分子生物学においてステロイドホルモン作用の研究がその先端を行くものであるとさえいわれている。しかし,このような細胞レベル,レセプターレベルでのステロイドの効果は,ステロイドホルモン産生臓器から分泌され,また投与されたステロイドそのものによるとは限らないし,また,さらにステロイドの代謝と関連して,その標的臓器での活性物質の有効濃度を規定する多くの因子が存在することは,特に注意されねばならない。すなわち,ステロイドの効果発現機構は,ステロイドの代謝の問題をぬきにしては論ぜられない。

年間テーマ--診断から治療へ 妊娠成立の異常

妊娠成立機序研究の現況と将来

著者: 林基之

ページ範囲:P.339 - P.345

 1961年3月「妊娠成立機序に関する臨床的ならびに基礎的研究」の宿題報告を発表して既に15年を閲した。当時,将来像についても触れているが,研究方法の開発にかなりの進展が見られてきたため,いくつかの新知見が得られるようになつた(表1)。特に胚細胞に対する培養技術の進歩と,その核や細胞質の微細構造が分明し,オートラジオグラフィーやアイソトープ追跡法により,代謝面での解明にも役立つてきている。本稿では大ざつぱに現況分析をするとともに,将来,いかなる方向にこの研究が進展していくか予想像も展開しておきたい。
 詳細は日木医師会雑誌73巻4〜40頁に「哺乳類卵の受精前後の動態に関する研究」として発表してあるから参照せられたい。

卵巣機能異常の診断から治療へ

著者: 青野敏博 ,   塩路武徳 ,   近藤国男 ,   辛川武久 ,   衣笠隆之 ,   三宅侃 ,   倉智敬一

ページ範囲:P.347 - P.352

 不妊の原因として卵巣因子はかなり大きな部分を占めている。無月経症,無排卵周期症はもちろん,黄体機能不全症も不妊をもたらす要因となりうる。近年血中gonadotropinやsteroid hormoneの微量測定法の確立や,LH-RHの臨床応用などにより排卵障害の病態生理解明へのアプローチは急速に進歩を逐げ,また治療法としてはClomidやHMG製剤の導入によりかなりの成果が挙げられるようになつてきた。
 実際に排卵障害の治療を行う際にはまず正確に患者の病態を把握してそれに適合した方法を選ぶことが肝要であるが,またこの点が一番難かしい問題といえよう。そこで本稿ではまず不妊の原因としての卵巣機能異常の病態について解説し,ついで鑑別診断の進め力と検査成績の読み方,さらには治療方針の立て方について述べることとする。

卵管の異常の診断から治療へ

著者: 高野昇

ページ範囲:P.353 - P.362

 卵管は精子,卵あるいは受精卵に対して複雑な機能を持ち,単なるpass way以上の意義を持つている。卵管異常による不妊すなわち卵管不妊因子に関する検査は古くから詳細に分析検討されてきた。また治療についても保存手術から手術療法まで多種多様のものが報告されている。
 しかし卵管の妊孕に対する複雑な機能のため,診断,治療とも未だ十分とはいえず,今後に改良の余地が残されている。

機能性不妊における内膜因子について—特に分泌期異常の成り立ちと治療へのアプローチ

著者: 細田肇 ,   徳倉昭治 ,   蜂屋祥一

ページ範囲:P.363 - P.371

 不妊婦人における子宮内膜に発現する器質的変化が妊娠成立に大きな障害因子となることは明らかなところであり,これに関する報告は多い。これらを要約すれば,1)奇形(双角子宮など)2)炎症3)子宮手術による内腔の変形,外傷による内膜の癒着(Asherman Syndrome)4)腫瘍(ポリープ,内膜癌)となるが,これらのうち,臨床検査の段階で診断が容易につくものがある。
 内膜掻爬によつて診断の確定されるものでは,炎症・ポリープがその大半であるが,炎症の内では従来,結核が比較的高い比率を占めていた。しかし,教室の統計16)では,器質的変化は最近一般に低下し,特に結核性内膜炎の著明な減少がみられている。

頸管粘液の異常の診断から治療へ—特に精子適合について

著者: 香山浩二

ページ範囲:P.373 - P.379

I.生殖過程での頸管粘液の役割
 頸管粘液(CM)がsex hormoneの周期性変化に伴つて周期的に性状変化を来たし,排卵前のcstrogen増加に一致して分泌量が増加し,水様性透明となつて来ることは周知のことである。このCMの周期的な変化を検査することによつて,卵胞成熟の度合を想定したり,排卵時期の決定に利用することは日常の臨床に最も良く利用されているところであるが,今回はsex hormoneとCMとの関係には余り重点を置かないで,正常性周期婦人における排卵前CMについてその精子との適合性について述べる。
 ウマ,ブタなどの子宮腔内に直接射精される種属と違つて人間では自然の夫婦生活においては腟内に射精されるわけであり,この腟内精子が頸管,子宮腔を通つて受精の場である卵管膨大部まで到達し成熟卵と受精するわけであるが,卵は排卵後数時問しか正常な受精能力を有しない。したがつて腟内精子が最初に通過しなければならないCMの生殖過程における役割は非常に重大であると考えなければならない。まずCMの最も重要な機能として精子と適合性を示し,腟内精子を子宮腔内に受精能力を保持した状態で移送するという機能が要求される。

男子不妊症の原因

著者: 熊本悦明 ,   寺田雅生

ページ範囲:P.381 - P.387

 一般的常識として,不妊の原因はもつぱら女性側のみに責任があるようにされてきた。したがつて,不妊症の研究は,産婦人科の分野において早くから行われており,それに関する多くの業績がみられる。しかし,妊娠が成立するには男女両性の性機能が正常であることが必要であり,男女どちらか一方に性機能障害があれば,妊娠が成立しないことは当然で,もつぱら不妊の原因を女性側のみに求めることは当を得ない。
 これらのことから,近年,泌尿器科領域においても,男性側の不妊因子を検索するようになり,それとともに不妊を主訴として外来を受診する男子患者も,年々増加しているといわれ1,2,3),教室における過去11年間の年度別の男子不妊主訴患者も表1に示すように同様に増加の傾向がみられる。

トピックス

月経ひき出し—menstrual extraction

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.371 - P.371

 妊娠初期の人工中絶が比較的自由に行われるようになつてくると,より安全でより容易に施行できる方法が検討されるようになつてくる。
 この時期における従来より用いられている方法は,頸管を開大し,鋭匙で子宮内膜を掻爬するものから,吸引により着床胎盤を吸引除去するものまでいろいろの方法が用いられてきている。しかし月経がおくれたか妊娠したのか判明しにくい妊娠のきわめて早期には,妊娠反応も陰性のことが多く,この時期の掻爬にはためらうことが多い。実際の臨床上,約15%の婦人は最終月経の日を忘れてしまつたり,無月経期間が35日以下でも約20%が組織学的に妊娠であることが確認されているといわれ,早期中絶ほど母体への障害も少いはずであり,そのためにもこの時期の中絶方法や器具が検討され,menstrual regulation (月経調節),menstrual induction (月経誘発),minisuction (小吸引器),mensesextraction (月経引き出し)などとよばれている。

原著

黄体機能不全症に対する高単位HCG療法について

著者: 森淳躬 ,   河野前宣 ,   石丸忠之 ,   三浦清巒

ページ範囲:P.389 - P.392

 黄体機能不全は重要な臨床的意義を有しているが,その病態生理や定義については,未だ一定した見解が得られていないのが現状である。本症の発生機序としては,間脳一下垂体系の異常,黄体のステロイド産生機構の異常,卵巣のゴナドトロピン感受性の異常および内膜のステロイド感受性の異常(国本1)1971)などが原因となつて卵管の受精卵輸送不全,妊卵の子宮内膜着床不全あるいは着床維持不全などにより妊卵の早期中絶が起こるものと考えられる。いずれにせよ本症は多腺性の内分泌機能不全によるものであり,したがつて各症例において,原因を究明することは必ずしも容易でなく,したがつてその治療も困難である場合が少なくない。ところで最近飯塚2)は高単位のHCG投与が,尿中estrogenおよびpregnanediolを増加させ,さらに子宮内膜に対して日付診上のアンバランスを是正することを認め,高単位HCG投与による黄体機能不全症の治療を推奨している。そこで私どもも,本症に対して画一的に高単位HCG療法を施行し,HCG投与前および投与時の周期に種々のホルモンを測定してみたので,その測定成績をもとに,私どもの治験例の病態分析を試みるとともに,HCG療法の意義と効果について考察をこころみたので報告する。

薬の臨床

ESTROTECによる妊婦尿中estriol測定法とその臨床応用

著者: 宮川勇生 ,   宮崎康二 ,   水元淳一 ,   前山昌男

ページ範囲:P.397 - P.403

 胎児の発育状態を検査する方法として,妊婦尿中estriol測定は欠くことのできない検査法のひとつであり,種々の測定手技の簡易化を目的とした改良が加えられてきたが,なかでも,Amberlite XAD−2を応用した化学的測定法は,すでにlarge scale screening法として広く臨床に利用されている。
 著者らは「Amberlite XAD−2による妊婦尿中estriol測定法に関する検討—E3キット法」1)にて,AmberliteXAD−2を応用した化学的測定法はBrown変法による妊婦尿中estriol分画値と高い相関をもつことを認め,かつ臨床的に十分応用し得ることを報告した。しかし,比色計などの特殊な機器が必要なことや,測定手技にある程度の熟達を要することより,さらに広く実地臨床医に利用されるには,より簡単な器具,操作で,短時間で結果の得られる検査法の開発が待たれていた。

妊婦血中HPL値,尿中エストリオール値ならびにACTH負荷テストの意義について

著者: 秋本晄久 ,   吉田英明 ,   西脇新吾 ,   吉田信隆 ,   鎌田昌平

ページ範囲:P.405 - P.409

 産科において,母体がより安全,完全なる分娩を行うと同時に,健康なる児を得ることは,最大の目標である。特に,妊娠後半期の母体・胎盤・胎児の機能を正確に知り得ることは,母体および胎児の管理上,有意義なことである。この目的のために近年になり,胎児・胎盤機能に関する研究が盛んとなり,母体尿中・血中のホルモンおよび諸酵素の測定,羊水の検討,胎盤組織の検討,胎盤の灌流実験などにより,長足の進歩をとげている。これらの研究により,一般産科臨床への応用も可能となり,耐熱性アルカリフォスファターゼを中心とする母体血中酵素測定,ホルモン面では,胎児・胎盤機能をよく反映するものとして,尿中エストリオール測定1,2,3)が注目をあびている。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

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