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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科3巻11号

1949年11月発行

雑誌目次

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最近に於ける無痛分娩の傾向—アメリカ最近の傾向

著者: 三好敎道

ページ範囲:P.416 - P.420

1.緒論
 從來行われて來た操作と方法とを公正嚴密に批判的に判斷する時は,産痛を完全に無くすると云う希望は未だ達成されるに至つていない.母兒共に障碍が無くて而も産痛を緩和させ或は完全に無くしてしまう點で滿足する結果が得られるような方法は現在何一つ知られていないが,最初Kronig及びGaussに反對の態度を取つたような宗教的性質を帶びた觀念は今は殆んど無くなつている.最も時宜を得た鎭痛はすべての母親にとつて全く感謝すべきものであることは當然である.現に米國に於ては大多數の産婦はこれを求めている様である.然し此の問題は醫學的見地からは尚充分の檢討を要するものである.特に神經過敏な神經質な者では出産時の疼痛は永く恐怖となつて記憶に留まり,其の結果屡々その後に於ける性的冷感症,性交に封する激しい拒否の態度を招來し,延いては結婚生活そのものゝ危機をさえ釀すに至るのである.

サルファ劑の羊水移行について

著者: 河原節

ページ範囲:P.421 - P.421

 サルファ劑は主として腎臟から排泄せられるが,其他,乳汁,唾液,汗,膽汁等からも少量ながら排泄せられる.然し羊水の中へどの程度移行するかの實驗は見當らない.そこで,アブレル氏法を施行する場合に少量の羊水を得て,それを實驗材料とし,尚正常分娩時に人工破水を施しその羊水の得られたものも材料とした.
 先づ第1回の試みとして1gのズルフアミンを羊水採取前3時間に服用させ,羊水採取の場合は同時に同一人から血液も採取し,血中のサルファミン劑濃度と羊水中のサルフア劑濃度とを比較した.

子宮頸癌根治手術後の感染豫防に關する研究—特に各種抗菌性物質の効果に就いて

著者: 狐塚重治

ページ範囲:P.422 - P.432

第1章 緒言
 子宮頸癌の外科的療法は長足の進歩を遂げ既にその最高峰に達したと云つても過言ではない.即ちWertheim術式に滿足せず更に着實な足取を以つて解剖學的見地に立脚して改良に改良を加えた結果岡林式術式となり更に三林式術式となつて第Ⅰ度,第Ⅱ度のものは勿論第Ⅲ度程度のものでも手術を遂行する事が出來る樣になつた.從つて手術可能範圍も自然從來よりも一層擴大せられて來た.これは手術に携る者に取つて非常な喜びであるのみならず世界人類にとつても大きな福音であると言わねばならないだろう.
 然し斯く手術可能範園が擴大せらる場合に當然考慮さるべき問題として手術的侵襲の個體に及ぼす影響がある.

腟脂膏檢査による子宮惡性腫瘍早期診斷の意義

著者: 山口淸 ,   大星章一 ,   澁江公一

ページ範囲:P.432 - P.434

1 まえがき
 癌を初期に診斷することは,その永久治癒を計る上に絶對必要な條件であるが,癌の早期診斯については,從來鋭意研究されて來たが,未だ滿足すべき結果を得るに至らない.
 然るに,Papanicolacu (1928)は子宮癌患者の腟脂膏中に腫瘍組織に由來する惡性細胞の混入を認め,該細胞を證明することによつて子宮癌を早期に診斯し得ると報告した.本法についてはアメリカでは多數の報告があるが,我が國ではこれに關する報告は今日まで尼木,加藤の兩氏のみであるが,加藤氏は未だ本法の價値を認めていない.

胞状鬼胎妊娠中に腟壁に發生せる絨毛上皮腫の1例

著者: 武藤友美

ページ範囲:P.435 - P.438

1 緒言
 胞状鬼胎妊娠時子宮壁には毎常Robert Meyer(1)の所謂絨毛上皮侵入Chorial Invasionの状態が存在すると云われたが,此の際Frankl,(1)の唱うる如く,絨毛上皮或は絨毛が何らかの機會に其の母地を離れ,血行により栓塞としての路を辿り各所に遊離到達,共生存に適する條件に保たるゝ時始めて惡性的増殖を始むることがある.即ち胞状鬼胎妊娠中既に卵着部以外に絨毛状皮腫を發生することは比較的稀であつて,文献に徴するに,Apfelsucht u. Aschoff(5)(1896)の報告以來,外國にては25例,(4,6,7,9,10,12,13,14,16,17,18,20,21,22,23,24)本邦にては24例,(16,28,29,33,34,35,36,37,39,40,42,43,44,46,47)の報告がある.
 其の好發部位としては,腟壁に發するもの多くし,且腟壁に發生する絨毛上皮腫それ自身の豫後は一般に比較的良好であつて,自然又はそれに近く治癒せるものとして,Burdzinski,(11) Dunger,(26) Kelly u. Techer,(3) Neumann,(3) Vieneberg,(43)松岡,(31)東大(2例)(48)等の報告がある.私は最近52歳11回經産婦の胞状鬼胎妊娠中,腟前庭に絨毛の轉移による血腫の形成と腟壁絨毛上皮腫の發生を認め,鬼胎分娩後該絨毛上皮腫の自然脱落を惹起した興味ある1例に遭遇したので並に追加報告する次第である.

先天性魚鱗癬の1例

著者: 木內五一 ,   坂倉啓夫

ページ範囲:P.438 - P.440

緒言
 本症は稀有の疾患にして其の名の示すが如く生下時或は胎生時に全身の著明なる角質増殖を來し,共の結果皮膚は乾燥して種々なる不規則な罅隙又は裂溝を形成し,鱗或は雲母の如き外觀を呈す.其の大多數は早期に不幸の轉歸をとるものなり.本症はRichterが(1972年)報告して以來Ingmannに至る迄300有餘の報告あるも本邦に於ては大正2年に井尻が其の2例を初めて發表して以來余等の寡聞の爲か20數例の報告あるを聞くのみ.依つて余等は昭和18年1月10日東京都立下谷産院に於て分娩し其後死亡に至る迄の經過を觀察し得たる1例を追加報告する次第なり.

三胎の1例

著者: 柳井悅嘉

ページ範囲:P.440 - P.443

 余は先般三胎の分娩例を經驗したので從來の報告例に追加する.

人工流産に於けるアブレル氏法とブシー或はメトロイリンテル法の比較

著者: 小林禮子

ページ範囲:P.444 - P.445

 Aburel氏分娩誘導法は,始めてLuisにより,1945年に紹介せられたもので,Luisは,分娩豫定日の過ぎたもの,子癇,類子癇症,腎疾患を合併せるもの,28例に,Aburel氏法を應用し,母子共に危險なく過し得,之は,キニーネや後葉ホルモンの無効な場合にも有効であると,報告している.我國に於ては,昭和22年,山元氏等により,始めて報告せられ,山元氏は,43例に應用しその結論は,液は純粹な飽和食鹽水,注入量は1回60〜100cc分娩は4〜5日以内に終了,胎兒は死産すること多く,一般に副作用はないが,ただ43例中1例,不明な原因による不幸例を見たと述べている.昭和23年,水野,吉村兩氏は10例を報告し,何れも豫後良好で,且つ死胎兒及び胞状奇胎の診斷を下し得べく,其の作用機轉は,食鹽のナトリウムイオンが,子宮の滑平筋線維に刺戟をあたえるものであると云うLuisの説に賛成すると,結論している.此のAburel氏法は,秦氏により,多數例に應用せられ,今までのブジールング,メトロイリーゼ等に比し,所要時間が短く,傳染の危險がなく,入院及びむづかしい技術を要せず,理想的な人工妊娠中絶法として推奬せられたが,一方本法に封する批判も加わり,本年の日本婦人科學會に於ては,出題數多數に及び活溌な議論が展開せられた.

消息

ページ範囲:P.445 - P.445

 馬島 秀麿氏 千大産婦人科教室にて研究中の氏は最近の千大教授會に於て學位論文「女性内性器結核殊に卵巣管結核に就て」の審査の結果,學位授與に決定さる。
 紅露 長七氏 東京遞信病院産婦人科醫局員の氏は東大教授會に於て氏の提出論文「紫外線照射自家血液を注射せられた家兎の抗體産生に及ぼす影響並に同處置を受けたる人の血清の菌發高阻止作用について」に對し學位授與に決定された。

私の經験では

ページ範囲:P.446 - P.448

問6
1 帝王切開術にどんな痲醉法を用いておられますか
2 分娩豫定日を過ぎた時期の分娩誘發法は

海外のうごき

ページ範囲:P.449 - P.451

腟塗抹物檢査のむずかしさ
 Papanicolaou等のいうように腟塗抹標本の形態的檢査によつて子宮癌の早期診斷が可能なわけであるが,まだ臨床的に應用されるのは遠いようである.H.B.Davidson,E.L.Hecht,R.L.Winston (Am.J.Obst.,1949,57:370)なども健康にみえる更年期婦人378例についてこの檢査法を行つた結果同様の意見をのべている.すなわち12例(3.16%にあたる)に於て癌の所見に似たものも見ている.すなわち細胞の形が種々に變化しており,多くの場合重なつたり群がつたりしたものが見え,あるものでは細胞の大きさの割合に核が大きい.そして核はその他形が奇怪であつたり,クロマチンが豊富であつたりする.核小體はしばしば著明に見える.原形質の空胞化も著しいものがあり,細胞が延長したものも少くない.これらの變化は惡性腫瘍のときにあらわれるとされているものである.しかし組織の診査をくりかえしても陰性であつた.臨床的にも惡性の徴候を認めることが出來なかつた.このように腟塗抹標本の所見は潜伏した癌のあることを示すものであるか,或は意味のない良性の所見にすぎないのであろうか,この判定には長い間この方法による檢査になれている人でないと出來ない相談であるとしている.とにかく今後の研究によつて臨床價値をきめられねばならない問題であろう.

異所的宮内膜増殖症とその外科的意義,他

著者: F.J. ,   K.R.

ページ範囲:P.452 - P.454

 ケリー及びシユレードマンの兩氏な異所的子宮内膜増殖症の病因に關する最も廣く承認されている種々の學説に就て論評した後に,異所的子宮内膜増殖症の種々異なる現われ方を全部説明出來る如何なる學読もないと云つている.
 Scott and White Clinicで行われた1991回の婦人科的腹部手術に於て,組織學的に確定出來た異所的子宮内膜増殖症179例(8.9%)のが發見された.そして,これ等の症例及びその追求調査が,この報告の基礎をなしているのである.患者の平均年令は38才,最年少者は20才,最年長者は65才であつた.

醫療關係法規の解説・6

輸血に關して醫師の準據事項の基準,他

ページ範囲:P.455 - P.456

 厚生省では輸血の用に供する血液の純潔を確保すると共に,傷病者のために血液を提供する者の健康を保護し,國民醫療上輸血の適正を期するため醫師法を改正したのであるが,改正醫師法第24條の2及び改正歯科醫師法第23條のこの規定に基き,輸血に關し醫師(齒科醫師も含む以下同じ)の準據すべき事の基準が,厚生者告示で今回次のように定められる事になつた.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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