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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科3巻2号

1949年02月発行

雑誌目次

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妊娠と梅毒

著者: 三谷靖

ページ範囲:P.41 - P.45

緒言
 梅毒は早期に適當な治療を充分受けた時の外は體内に長く潜伏して治癒しない事が多い.梅毒に罹つている婦人が妊娠した時は胎兒も感染して屡々流早産の原因となり,又時には先天梅毒兒を分娩し,一方乳幼時の死亡率を高め,惡質劣等な子孫を作り,優生學上恐るべき結果を齎らすものである.之を豫防するには云うまでもなく梅毒の早期發見と早期充分加療が大切であるが,實際問題としては婦人では不識梅毒が多いため,何等感染した覺えがなくても,又何等症状がなくても梅毒に罹つているものが多いから,これによつて受けてゐる害毒は少くないのである.

生理的收縮輪の臨床的觀察—その1 分娩編

著者: 山田達郞

ページ範囲:P.45 - P.55

緒論
 分娩時子宮に對する機能解剖學的研究は19世紀中期より漸次盛になつて來たが,未だ充分な解明に達していない問題が多い.收縮輪もまたそうであつて,本問題は解剖學的原因に基くところの一物理的現象により生ずるため解決も仲々困難にして,色々論議の目標となつている.
 此の收縮輪に關して,病的收縮輪は臨床的に種々分娩障碍を來すために,屡々研究報告せられて來たが,生理的收縮輪に關する研究は非常に少い.此處に於て,分娩機序研究のためにも,又病的收縮輪解決のためにも,先づ生理的收縮輪の解明に向わなければならないのである.

機能性不整子宮出血に關する組織學的研究—第2報:再び間質不全症(芳賀)について

著者: 芳賀次郞

ページ範囲:P.55 - P.59

緒論
 前報に於て,余は所謂周期遺存症に該當すると思われる13例の子宮粘膜掻爬標本を檢索して,その病理に對し新しい立場に立脚する解釋を與えたが,本報に於ては腺嚢胞性増殖症の診斷を下された1例に就いて報告したい.特に本例はその診斷を確定せしめた内膜掻爬に先立つこと9日に豫め1回の掻爬が行われており,その所見の裡に既に9日後に於ける嚢胞性腺型形成が約束されている點で極めて重要であると思う.

今次大戰の女學生月經に及ぼした影響について—前編 食糧事情と月經異常

著者: 山田滿寛 ,   藤井忠 ,   尼木紹雄 ,   山田曅穗

ページ範囲:P.59 - P.63

緒言
 戰爭が交戰國民の身心に及ぼす影響の甚大なるは想像に難くなく,殊に男子出征に依る銃後の不安,責任の荷重は婦人の生理的周期現象たる月經に尠からざる影響を及ぼす事も當然想像される所で,既に第1次世界大戰に際してDietrich (1917)に依り戰爭無月經が大きく報ぜられた事も未だ吾人の記憶に新なるものがあるが,今次大戰に於ける吾が國の如く大方の男性は出征し,國土は頻々たる空爆の脅威にさらされ,食糧事情は極度に逼迫し剩へ敗戰と言う未曾有の悲境に陷り,之に續く社會不安殊に經濟的破綻に直面せる敗戰國の婦人の性機能特に月經には著變が起る事も當然想像される.事實戰爭末期並に終戰直後熊本に於ても無月經又は月經異常を訴える婦人が可成り多く,本院外來患者中にも斯かる例を見るに到つためで實態調査の急務を痛感しだ當教室は熊本縣・宮崎縣・廣島縣等の女學生に就き月經状況を調査し既にその成績の一部は報告した.今回は熊本縣下女學生の月經状態を統計的に觀察したので,本編では先づ食糧事情別に,後編では家業別に夫々月經異常を統計觀察した.

アレルギー性素質疾患群を有する婦人の月經調査

著者: 矢部善一

ページ範囲:P.63 - P.66

緒言
 種々なるアレルギー性疾患々者の血族内に於て同一若くは他のアレルギー性疾患(以下「ア」性疾患)の發生が見られ,又當該患者自身が屡々他のア性疾患を經過し又は合併する場合の多き事實は周知の所である 之に對しKämmererはアレルギー性素質なる異常素質を基地として諸多アレルギー性疾患が發生し,又一定の遺傳型式によつて其の素質そのものが遺傳せられ,其の素質を基地として該疾患の出現を見るものであると述べている,余は以前より臨床上ア性疾患々者が屡々月經異常を訴える場合の多い事實を注目している.從來月經異常殊に月經困難とアレルギーとの關係に就て論述した記載は極めて少なくDale,Dutta等(1935)は月經困難の中にはアレルギーと密接なる關聯を有するものが存在することを指摘しUnke,Cook,Row等はアレルギー性疾患の全身反應の1症状として月經異常を發呈するものであると述べDuke,Schwarz,Smith等(1937)は食餌療法に依りア性疾患々者の月經痛が治癒する事實を擧げ,本態的月經痛め發生にはアレルギーが重要なる役割を演ずるものであるとの見解を發表している.

卵巣類皮嚢胞の化膿例

著者: 濱田春次郎

ページ範囲:P.67 - P.70

緒論
 卵巣類皮嚢胞は屡々遭遇する疾患であつて,全卵嚢腫瘍に對する本腫瘍の頻度は,歐洲約10%,本邦約20%となつてゐる.最近山田の報告によると30%を占めている.
 然るに,この類皮嚢胞が化膿せる症例に就いては,嘗て嚢胞穿刺が頻繁に行はれた時代に於ては左程珍しいものではなかった.然し現今に於ては卵巣嚢胞穿刺が極めて例外的に施行せらるる關係上,此が化膿例は比較的稀有のものと考えられている.私は最近極めて複雜なる經過をとり,而も完全に治癒せしめるととの出來た興味ある類皮嚢胞化膿の1例に遭遇したのでここに報告する.

子宮腟上部切斷術に於ける斷端處置並びにBurger氏骨盤腹膜縫合法に就て

著者: 富井眞文

ページ範囲:P.70 - P.71

緒言
 子宮腟上部切斷術,子宮全剔出術に際して正確な骨盤腹膜縫合法が必要である.その目的の爲めに,一般に子宮頸管,圓靱帯,子宮附屬器,漏斗骨盤靱帯の斷端を處置した後.一側の漏斗骨盤靱帯切斷部より,他側の同部に至るまでの腹膜を連續縫合する.との場合各斷端は自然の位置におかれ,お互同志縫合せない.その爲めDaneffが言つて居る樣に,子宮頸部斷端,更に膀胱.腸,腟の下垂を來す樣なことがある.その缺點を除く爲めに子宮附屬器,圓靱帯の斷端を,子宮頸管斷端に縫合する方法がHalfan,Martius等多くの術者により行はれて居る.然し骨盤腹膜縫合はやはり連續縫合が用ひられて居る.この方法は非常に効果的であるが,縫合に當りては出來るだけ餘分な手術的操作を加えず,縫合材料も可及的少くすることが望ましい.この目的の爲めにBurgerは次の如き縫合法を考案しAnder Beredek (1941)は數百例に於てこの方法を行ひ優秀なる成績を報告して居る.余等は最近數例の患者に此の方法を試み,例數少く本方法の可否に就いて批判することは出來ぬがその術式を紹介し參考に供したいと思う.

新生兒梅毒のペニシリン治驗(第1報)

著者: 長內國臣 ,   福島修

ページ範囲:P.72 - P.73

緒言
 梅毒に對するペニシリン療法は,1943年Ma—honeyに依り發見せられて以來,米國に於いて多數の研究機關,クリニツク及び之等を統合する中央機關等の共同班究に依り幾多の業績が見られる.
 本邦に於いても,最近ペニシリンの大量生産の實現及び價格低下等に依り次第に普及し,之等の研究も現われて來たが,未だ新生兒の梅毒に對しては報告されていない.

ペニシリンによる婦人淋疾治療成績の檢討

著者: 渡邊金三郞 ,   上野隆 ,   山中弘一

ページ範囲:P.74 - P.75

緒言
 ペニシリンの出現により淋疾の完治を期待した吾々臨床醫家にとつて,ペニシリンに依る婦人の淋疾治療成績はどんなであつたらうか.(以下ペニシリンをペ劑と略記する).
 我々はペ劑移入初期に於ては幾多の芳しい淋疾治療成績の報告に接したものの,其の後醫家各自經驗例の増加に不拘,批判的報告に乏しく,僅かに最近1,2の婦人淋疾特に慢性淋疾に大量使用するも全治をみなかつたとの報告に接するのみである.我々は曩に戰後滿3ヵ年の婦人淋疾患者の動態と其の治療成績なる1文に述べた如き,ペ劑による芳しからざる治癒率を知るに及び,この治療成績を再檢討することの有意義なることを思い,確實なる檢査を實施し且つ遠隔成績を知り得た31例(昭和22〜23年)に就き調査し,將來の治療方針に對し2,3の示唆にとむ事項を發見せるを以て茲に報告する.

腸チフス菌パラチフス菌混合ワクチン接種による流産の2例

著者: 坂口碩

ページ範囲:P.76 - P.79

緒言
 腸チフス豫防ワクチン接種に當つては,從來と雖も種々の注意が與えられ,此れが實施に當る醫師は常識的に既に細心の注意を怠らざるは云うまでもないことであるが,今回使用せるチフスワクチンは,アメリカ株を以て作製せられたる腸チフス菌,パラチフス菌混合ワクチンにして,此れが接種に當つては相當の副作用があると思われるので,豫め特に禁忌症に對しては深甚の注意を拂う樣にとの指示もあつたのであるが,本年度の町民集團豫防接種に際し,余は不幸にして此れが原因と考えられる流産の2例に遭遇したので此處に之を報告し,聊か卑見を述べんとするものである.

極めて稀な先天性新生兒奇形の1例

著者: 國吉朋重

ページ範囲:P.79 - P.80

緒言
 新生兒奇形に就いては比較的屡々報告されている.奇形に關する問題は單に一般社會の話題となるのみでなく,又醫學上に於ては注目に價するもので殊に先天性奇形は劣性遺傳が多い爲に遺傳學上興味深々たるものである.余はたまたま患家に於て實に複雜な奇形兒の分娩例に接し,之の樣な奇形は實に珍らしいと考え之れを茲に報告する.

所謂先天性齒牙に就て

著者: 八木辰太

ページ範囲:P.80 - P.82

緒言
 人類の齒牙は正常の場合には大體に於て一定の順序と年月を以て齒肉上の所定位置に,特殊の病的症候を伴はずして出肉を完了するものであるが,時には著しく早期に或は晩期に出肉し,或は又全然出肉することなく骨中に埋伏することがある.臨床上意義深いのは乳齒では早期出肉であり,永久齒にあつては晩期出肉である.余は最近新生兒に下顎左中切齒の出肉例を經驗したので茲に報告し,諸彦の文献に追加しやうと思う.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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