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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科3巻4号

1949年04月発行

雑誌目次

特集 受胎調節・人工妊娠中絶及優生手術

特輯號の題言

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.125 - P.125

 生物をその生殖するまゝに放任すると,その數またはその質に於て,當該生物の生存上に不都合な種々な支障の發生し得るものである。從つてその數または質に所望の統制をなすために,人爲工作が加へらるゝに至つたことは,動植物に於てのみでなく,人類に於ても亦た同樣である。
 人類の數及び質に對する統制は,時代に應じ,國により家によつて方針を異にし,人爲工作の方法に於ても亦た變遷が行はれたのである。國としては國民各自の自由に任せた時代から,國策として統制される時代となつたことは,正に當然とせねばならぬ。

人口問題より觀たる産見制限に就いて

著者: 谷口彌三郞

ページ範囲:P.127 - P.129

 終戰後我國の人口は引續き自然増加の一途をたどり,昭和16年の人口1000人に對し15,2人であつたのを遙かに上廻つて1000人對20人強の自然増加を示すに至り,昭和22年に於ては出生2,714,786人,死亡1,152,199人,差引きの自然増加は1,562,587人という昭和16年の自然増加113萬人を遙かに上廻る最高記録を作り,昨年度は後半期に至り出生は幾分低下したるも死亡も亦低下せるため自然増加率は略々一昨年同樣と推定せらるゝ結果,人口問題研究所に於ては將來人口の推計を昭和28年に於ては總人口8766萬餘人と推定するに至つた。
 尤も出生率は本年度頃より次第に低下し,昨年その率24程度のもの次第に減退して,30年頃には26乃至27或いは23乃至24程度に下降する筈だが,死亡率も亦低下の見込なるを以て自然増加は當分連續し,少くとも今後15年乃至20年間は我國人口は益々増加するものと考えられる。

受胎調節に就て

著者: 松本寬

ページ範囲:P.130 - P.133

1.定義
 受胎調節とは妊娠したくない時に特殊の方法を用ひて受胎を避け妊娠して差支へない時期にだけ受胎することを云ひ此の爲に用ふる特殊の方法を受胎調節法と呼ぶ。
 然も此の方法は受胎を防止するものである以上一旦受胎したものを中絶する人工流産術を含まないし,非觀血的非永久的可逆的であるのが特長である以上,卵管結紮手術やレントゲン去勢法も此の中には算えられない。

精神神經科方面より見たる優生保護法

著者: 植松七九郞

ページ範囲:P.134 - P.138

 戰時の人口政策を反映した從來の國民優生法が,惡質素質者の出生を防止すると共に,健全素質の増加をはかるといふ積極的な意味があつたのに對し,今度の優生保護法は惡質素質者の出生を防止する點では,一致するが併せて母性の生命健康を保護するといふ目的に於て制定され,而も強制優生手術の規定を設けたから,今後優生手術或は人工妊娠中絶は,劃期的に増加する可能性がある。而して,殊に優生手術の對象となる遺傳性疾患は精神神經學的疾患が,その大部を占めるわけであるから,手術適應者の選定はその方面の專門家に俟つ事多大である。
 本稿は,優生保護法に規定された精神神經病に就て,簡單に解説を試みるのが目的である。

優生保護法をめぐる遺傳觀と淘汰觀の再檢討

著者: 木田文夫

ページ範囲:P.139 - P.143

1.はしがき
 優生保護法の實地のいろいろな問題にいつては,本誌の特輯でくわしく取り扱われることと思う。さらにこの現行法は,將來多くの面からの改良が行われる豫定であると聞いているから,學問上實際上で,現在の優生保護法の含んでいる多少の不備についてはふれないでおきたい。著者は,編集者の希望によつて,現行ないし將來の優生關係法規を立案したり檢討したりする場合の據點となるような遺傳優生觀や民族淘汰論に對して,最近の人間遺傳學や民族體質學の立場から多少の檢討をした。次いで今後この優生保護法の運營に當つて,あるいは將來の改良に際して,留意していただきたい間題を述べてみた。これらはすべて私一個人の見解である。

優生手術について

著者: 藤井久四郞

ページ範囲:P.144 - P.147

まえがき
 優生保護法によれば優生手術とは生殖腺を損うことなくして卵管又は精管を結紮又は切除し生殖細胞の通路を斷つことによつて姙娠を不可能にする手術のことである。不姙手術或は斷種手術とも云われる。
 優生手術と名付けてはあるが優生の目的のみをもつて行われる譯ではない,今日では母性保護の目的で行われる場合の方がむしろ多くなつている。

推奨すべき人工姙娠中絶の術式

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.148 - P.150

1.緒言
 新たに發布された優生保護法に示された手術としては,優生手術と人工姙娠中絶との2種である。その中で優生手術に關しては,施行規則にその術式が限定されてゐるが,人工姙娠中絶の術式に關しては何等の規定も示されてゐない。從つてこれを實施する指定醫の自由に任されてゐるものと觀て差支ない。併し母性保護の主旨より成立した法の精神を尊重するために,どこまでも母體の保健に有利な方法を選ばねばならぬ。中絶の目的さへ達すればよい,術式の如何は問はぬと云ふ方針であつてはならぬことは勿論である。そこで中絶術式に就いて檢討を試みるのが本縞の目的である。但し茲では胎兒の生存を望まぬ,第28週以前の中絶を對象とする。

人工受精

著者: 山口哲

ページ範囲:P.151 - P.156

1.緒言と歴史
 敗戰下の日本に於て現在社會的にも國家的に見ても最も切實な問題は受胎調節であるが,一方子供の無い夫婦の數は生活困離の爲の晩婚,心身過勞等のため,漸増の傾向にある。アメリカに於ては全結婚者の約12%がこの惱を持つてゐるが,日本でも略同樣の割合にあると思はれる。事實慶應義塾大學病院産婦人科を訪ずれる患者の約13.6%は不妊症を主訴としてゐる。また子供を望む夫婦の訴は受胎調節を望む人々の訴へに比し,より熱烈であり眞劍であつて,この解決は産婦人科醫に課せられた重大な職責の一であると思はれる。この不妊症征服の積極的な手段が人工受精であつて,古來幾多の婦人科醫に依つて熱心に試みられて來たものである。
 人間の人工受精に先だつて,動物の人工受精が行なはれた。Gautierの報するところによれば,アラビアでは14世紀に既に牝馬の人工受精が可能であると豫想されてゐた。然し,實際上初めて人工受精に成功したのは魚に行はれたもので,18世紀の初頭であつた。

優生保護法と墮胎罪

著者: 中原武夫

ページ範囲:P.157 - P.160

 優生保護法立案にあたつて,最も問題となつたのは人工妊娠中絶の取扱いについてゞあつた。當時二つの主張が對立した。その對立は今日でも止揚されていないために,優生保護法の運用に困難さを加へているようである。一つの主張は,主として現在の法律秩序を維持していこうとする立場に立つている人達から,墮胎を禁止している刑法の大原則を崩してはならないという態度を堅持して,妊娠中絶を認める場合を最少限度に必要己むをえないととが解釋を嚴格にしようとした。この立場から出てくる結論は,現在の刑法の論理的な解釋から罪とならないとされている範圍のものを明文で明らかにするに止めることとなる。
 他の主張は,もつと勇敢に現在の社會の要請と認められる限りのものをその儘表現していこうとした。もともと法律は當時の社會情勢がその基底となつているものであるから,必ずしも刑法のとつてきた立場にこだわることなくむしろ刑法を實質的には改正するところまで進むべきであると主張した。二つの主張のぶつかり合つた頂點に,經濟的理由を原因とする人工妊娠中絶を認めるかどうかの問題がおかれたのである。

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優生保護法

ページ範囲:P.161 - P.164

優生保護法施行令
(昭和二十四年一月二十日政令第十六號)
 内閣は.優生保護法(昭和二十三年法律第百五十六號)第十一條及び第十九條の規定に基きここに優生保護法施行令を制定する。
第一條 中央優生保護委員會.都道府縣優生保護委員會 及び地區優生保護委員會(以下委員會と總稱する。)

第44回日本婦人科學會總會並講演會次第

ページ範囲:P.165 - P.168

第1日 午前之部(8時より)
 開會の辭  會長 篠田 糺
1.興味ある經過をとつた卵管間質部妊娠例(5)               寺井正信(京大)

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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