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特集 受胎調節・人工妊娠中絶及優生手術
優生保護法と墮胎罪
著者: 中原武夫1
所属機関: 1參議院法制局第一部第一課
ページ範囲:P.157 - P.160
文献購入ページに移動 優生保護法立案にあたつて,最も問題となつたのは人工妊娠中絶の取扱いについてゞあつた。當時二つの主張が對立した。その對立は今日でも止揚されていないために,優生保護法の運用に困難さを加へているようである。一つの主張は,主として現在の法律秩序を維持していこうとする立場に立つている人達から,墮胎を禁止している刑法の大原則を崩してはならないという態度を堅持して,妊娠中絶を認める場合を最少限度に必要己むをえないととが解釋を嚴格にしようとした。この立場から出てくる結論は,現在の刑法の論理的な解釋から罪とならないとされている範圍のものを明文で明らかにするに止めることとなる。
他の主張は,もつと勇敢に現在の社會の要請と認められる限りのものをその儘表現していこうとした。もともと法律は當時の社會情勢がその基底となつているものであるから,必ずしも刑法のとつてきた立場にこだわることなくむしろ刑法を實質的には改正するところまで進むべきであると主張した。二つの主張のぶつかり合つた頂點に,經濟的理由を原因とする人工妊娠中絶を認めるかどうかの問題がおかれたのである。
他の主張は,もつと勇敢に現在の社會の要請と認められる限りのものをその儘表現していこうとした。もともと法律は當時の社會情勢がその基底となつているものであるから,必ずしも刑法のとつてきた立場にこだわることなくむしろ刑法を實質的には改正するところまで進むべきであると主張した。二つの主張のぶつかり合つた頂點に,經濟的理由を原因とする人工妊娠中絶を認めるかどうかの問題がおかれたのである。
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