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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科3巻7号

1949年07月発行

雑誌目次

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産科方面に於ける結核療法,特に人工妊娠中絶術に就て

著者: 町野碩夫

ページ範囲:P.253 - P.257

緒言
 以前結核は胎盤を介して母體から胎児に移行するものだと信ぜられていたが,精細な組織學的檢索の結果,母體が重症な場合は勿論,假令輕症な場合でも胎盤に結核性變化を認め得たのみか,分娩直後の新生兒臓器,殊に後腹膜内リンパ腺に結核病巣を發見し得たのである.而もその感染經路は最初床脱落膜及絨毛間腔に限局し,該部から間質中の絨毛上皮を破壞して血管中に侵入することが闡明された.仍て最早結核菌の胎生的移行の存在を疑う餘地なく,その頻度や緊要性が後天性感染に對抗して向けられることゝなった.なおこのほか,分娩後結核母體から授乳感染の危險すら存在するのである.之結核が産科的方面に於て重要視せらるゝ所以である.
 飜つて結核に對する療法〓ずるに實に多種多様で,其非觀血的である藥物療法の如きも,いちいち枚擧するに遑がない位で脂肪酸(例之ロヂノン酸,カプロン酸)の如きも動物實験と異り人體結核の治癒は望まれず,セファランチンも亦生體内では強力な殺菌力を示すが人體内では前同様,何等積極的な効果なく,かの虹波と共に1の刺戟療法たるに止まり,何等化學療法としては認められない状態である.

卵胞ホルモン劑による流早産の豫防

著者: 藤井吉助 ,   月岡三郞

ページ範囲:P.257 - P.259

 卵胞ホルモンは子宮筋の收縮を促進し又,腦下垂體後葉ホルモンに封する子宮筋の感受性を亢進する.卵胞ホルモンは妊娠末期になるに從い激増する.これらの事實から從來,卵胞ホルモンは分娩を誘發するとされていた.
 然るに最近卵胞ホルモンは流早産の豫防に有效であるという事實が認められつゝある事は注目に値するものである.

新生兒腟脂垢の形態的研究(その1)

著者: 木內五一

ページ範囲:P.260 - P.265

1.緒言
 齧歯類の腟脂垢には,發情前期、發情期,發情後期,及び發情間期,の四期に區分せられる明らかなる周期性變化のあることは,周知の事實であるが,1933年Papanicolaouによつて,人の腟脂垢にも,卵巣周期に一致せる周期性變化が認められるということが發表されて以來,數多の研究者(E.G.Murray (1938) B.B.Rubenstein (1940)等)によつて研究せられ,人腟脂垢の研究業績は月經周期,ホルモン療法等の研究,更に近時は女性性器癌の早期診斷等にまで應用されるに至り,成熟婦人の腟脂垢に關する文献は極めて多數に見ることが出來る.然るに,新生兒の腟脂垢に就ての研究は極めて僅少で,新生児の腟内細菌,性器出血等に關するものに止り,腟脂垢の主なる成分たる上皮細胞,細菌,赤血球,白血球等の綜合的研究は,L.Fraenkel E.Phillip,M.Alexiu,及K.Herrnberger,N.Zaharescu等の發表がある他,我國には全く之を見ない.而して,之等諸文献は何れも概括的に過ぎて,明確ならざる憾あり,且其變化を齧齒類に於ける性周期の一周期に當てはめんとして考按せる點に於て疑義が認められる.
 予は,之等の點を仔細に究明せんと欲し,昭和22年3月より,新生女兒の腟脂垢を逐日的に檢査した結果,次の如き成績を牧め,いさゝか新知見を得たので此處に報告する次第である.

新生兒臍帯切斷部位の臍帯脱落日數に及ぼす影響に就いて

著者: 小川隆男 ,   山田達朗

ページ範囲:P.266 - P.268

緒言
 母體と胎兒とは連絡し,胎盤と共に兒の生命發育に對し不可分な關係にある臍帯も,兒娩出後その第1呼吸と同時に,その存在的意義は全くなくなり,新生兒にとつては寧ろ厄介なものとなる.即ち,新生兒疾患の中で屡々兒の生命を脅かす臍壞疸,臍炎,臍膿漏,臍血管炎,更に續發症として,丹毒,敗血症,肺炎,腹膜炎,破傷風等の殆んど總べての病源體は臍から侵入するものであるから,臍帯脱落を出來るだけ早くすることは,臍感染防止上からも重要なことで,我々の忽かに出來ぬものである.
 歴史的に觀ると,臍帯斷端の處置は人類特有のもので,その發達は文化の進歩に伴つているが,既にローマ時代から結紮糸として多くの紐が用いられ,その後絹糸が使用され,その他,腸線,ゴム紐,麻布紐,把持器,臍帯壓挫器等が用いられる様になつたが,我國に於ては古來より麻紐が多く使用されている.

子宮腟部梅毒に就いて

著者: 萩原晃

ページ範囲:P.268 - P.271

緒言
 戰後ペニシリン,マフアルゼン等の梅毒に對する新化學療法劑の出現,蔓延せる性病の對策確立等に件つて,梅毒も新なる見地より考察せられ,妊婦梅毒及不識梅毒の問題が取り上げられている.それ等と關聯して婦人梅毒の最好發部位である子宮腟部に於ける梅毒性變化に就いては,從來産婦人科領域に於ても比較的等閑視せられて,病變の特異にして多様なる點より見逃される場合も相當に多いものと思考される.
 梅毒病巣より梅毒病原體を検出することは最も確實なる診斷法であるが,私は最近ビクトリアブラウⅣ R (Victoriablau—Ⅳ R)を使用してTreponema pallidumの運動を觀察し得て容易に檢出し得る新生體検出法を考案し,之を用いて子宮腟部の梅毒性變化を觀察しその8例を得たので,その概要と共に子宮腟部梅毒に就き考察を加え度いと思う.特にアメリカ文献に於て産婦人科書中に梅毒學が大きく取り擧げられ,梅毒病原體の檢出は淋菌と同樣に醫師のdutyであると強調し,明快に解読している點に興味を牽かれた.

三島地區に於ける業態者の性病入院治療成績に就て

著者: 加畑徹夫

ページ範囲:P.271 - P.276

 終戰後に實施せられた性病治療對策の一實行機關として,本院も指定病院となり,入院業態者の性病治療に從事した.現在性病治療對策の活動が停止したわけではないが,性病豫防法も發布になつて,過去3ケ年間の暫定措置も整理されて,入院治療も一段落を告げた感がある.因つて今日迄に得られた經驗をこゝに纒めて,治療状況の變遷,入院成績,治療成績を報じ,併せて性病治療對策に關する卑見を述べて見たいと思う.

吾教室子宮頸癌放射線療法成績に就て—1972〜1943年

著者: 渡邊英一

ページ範囲:P.276 - P.278

第1章 緒言
 1943年(昭和18年)から5ケ年を經過し永久治癒を論じ得る時期に達したので,既に發表した1937〜41年に引續き1942〜43年の子宮頸癌放射線療法成績を報告する.治療成績發表規準等は前篇既述の如くで茲には省略する.而して放射線療法成績發表に際して是非明かにすべき他療法,即ち手術並に後照射療法の成績は既に教室大櫛の報告があるので,茲にはその概略を記載するに止め放射線療法を中心として観察を進めたい.

トリコモナス腟炎の臨牀的観察—第1編 臨床統計

著者: 西島明

ページ範囲:P.279 - P.282

緒言
 トリコモナス腟炎(以下ト腟炎と略す)は1916年Hoehneが初めて記載したものでDonne (1837年)によつて發見されたTrichomonas vaginalisの腟内寄生を本症の原因であるとしてTrichomonas—Colpitisと命名したが,腟トリコモナス(以下腟トと略す)の病原性はなお確定していない.然し臨牀上本原虫が存在する時には腟帯下は帶一般に多量且つ膿性稀薄液状で清淨度も極めて惡いものが多く.又屡々泡沫性を帶び,患者は頑固な帶下感及び往々外陰部掻痒感を主訴とする.又腟炎を惹起している腟帶下の大多數に本原虫を檢出する事,原虫驅除に成功した時は炎症の頓挫を來し,帶下の性状も亦良好に趣く事は事實である.而て本原虫は世界廣く分布し,共の罹患率は文献に依れば大體20%前後のもの多く,特に帶下を主訴とする患者では平均30%前後の高率に本原虫を検出している.又腟内容の清淨度と卵巣機能との關係が重視され,本症も單に腟トの増量乃至共存病原菌の増殖によるのみではなく,複雜な要因によつて惹起される事も明白となり,更に最近では腟上皮細胞の各種疾患に於ける形態學的變化,細胞病理學的推移と云う事が新局面を開こうとしている時,卜腟炎と腟粘膜上皮細胞の形態學的變化との關係も亦興味深い事である.

第44回日本婦人科學會總會見聞記

著者: 尾島信夫

ページ範囲:P.282 - P.286

 4月26日から3日間東北大學醫學部中央講堂で催された日婦總會は眞に盛會だつた.仙臺市は環状の市内電車の内側が全部戰災にあい.青葉城も見るよしもないが,醫學部は幸に健在で,町には折柄市制實施60周年の記念行事期間中で復興氣分があふれており,地元教室の方々の行届いた設營により愉快に學會が進行した樣に思つた.本年は終戰後各教室で始められた研究が實を結び始めた事,人員資材も漸く復奮したゝめか,演題は皆内容の充實した傾聴すべきものが多く,出席者も熱心で宿題報告の時でなくとも,うつかりすると席のない有様で,討論も活發で面白かつた.詳細は學會雜誌に出るはずであるし,私は所用で全部聽くわけにも行かなかったので.私個人の印象を略記させて載くことにする.
 第一日は會長篠田教授から評議員會の議決事項の報告があり,更に日本婦人科學會の發展的解消と,日本産科婦人科學會の結成とが提案され滿場一致で決定した.之で日本醫學會の分科會の一つとしての我々の會が一本になつたわけで,眞に結構な事である.

内外文献抄録

ページ範囲:P.288 - P.289

日本醫師會雜誌 1949,1,23巻第1號 腹痛と婦人科 久慈直太郎 17
 母子衛生の現状と對策 近藤宏二 30

私の經驗では

ページ範囲:P.290 - P.293

この度讀者各位の御要望に應え,本號より"私の經験では"欄を設けました.御忙しいところ諸先生方より御回答を戴けました事を深く感謝致します.尚本欄への御投稿(質問)は簡單に御願いします.(編集部)

新醫療法解説・1

改正優生保護法の解説,他

ページ範囲:P.286 - P.287

 今回優生保護法の一部が改正されて6月24日から施行されるに至つたので,改正の主なる點について解説してみよう。
 今回の改正の最大要點は,人工妊娠中絶を合法的に行い得る場合を擴大したことゝ,優生結婚相談所において受胎調節の指導を行らことを明文化したことであるが.この改正の趣旨は,人口問題に關連する社會問題を考慮しつゝ,あくまで法第一條に明示されている優生上及び母性保護上の目的の線に沿つてなされたものであつて,人口問題の解決を直接の目的としてなされたものではなく,人口問題の解決については,更に廣く,社會的,經濟的情勢,國際情勢等をも參考の上,人口問題審議會の答申をもつて決定せらるべきものであるから,本改正法律の施行當つては,特にこの趣旨の徹底を圖られ左記事項に留意の上,遺憾なきを期せられたいと厚生省では要望している.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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