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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科30巻10号

1976年10月発行

疾患の病態と治療 先天性胎児・新生児異常

胎児・新生児の代謝異常

著者: 多田啓也1

所属機関: 1大阪市立大学医学部小児科学

ページ範囲:P.779 - P.784

文献概要

 先天性代謝異常症は遺伝子変異に基づく疾患であるゆえ,患児か否かは受精の瞬間に決定されるが発症の時期はさまざまである。たとえば,フェニルケトン尿症(PKU)の場合,その欠損酵素であるフェニルアラニン水酸化酵素は胎児では正常でもほとんど活性が認められず,出生直後に著明な活性上昇を示すことが知られている。したがってPKUの患児といえども胎児期には全くハンディキャップがないわけで生下時は何ら異常が認められない。しかし,生後のフェニルアラニン水酸化酵素の活性出現を欠くため,血中フェニルアラニンの著明な上昇をきたし,乳幼児期の脳発達が障害され知能障害に陥る。早期診断によりフェニルアラニン摂取制限を行ない,血中フェニルアラニン値を下げることにより知能障害に陥るのを防ぐことができるゆえんは,少なくとも胎児期の脳発達がintactであるからである。このように代謝異常の中でも欠損する酵素が生理的に胎児期にactiveに働いていない場合には病態の進行は出生後,始まるわけであり,早期診断により治療の可能性が考えられる1,2)
 それに対してTay-Sachs病のようにその欠損酵素であるhexosaminidase Aが胎児期の脳でも生理的に重要な役割を果たしていると考えられる場合には,病態は胎児期から進行するので治療は困難であり,出生前診断による予防の対象となる(図1)3〜5)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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