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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科30巻10号

1976年10月発行

疾患の病態と治療 先天性胎児・新生児異常

胎児の染色体異常の病態生理と治療

著者: 福島務1 根元公夫1

所属機関: 1福島県立医科大学産科婦人科学教室

ページ範囲:P.785 - P.789

文献概要

 新生児における染色体異常の出現頻度は,多くの報告によれば,約0.5〜1.0%前後とみられる1〜5)。一方,自然流産の頻度は全妊娠の10〜35%6),そのほぼ20%に染色体異常を有するとされている。ところが実際に妊娠初期の人工妊娠中絶によって得られた胎児における染色体異常の頻度は,佐々木7)らの報告によれば,1.3%,他の報告においても1.5%前後である。すなわち,先に述べた流産胎児の分析と新生児の染色体異常の頻度をもとにして得られる,染色体異常個体発生頻度の推定計算値は,妊娠初期の人工妊娠中絶胎児について調査された実測値よりはるかに高い値となる。このことは妊娠のごく初期に多くの染色体異常胎児が流産という形で自然淘汰されることを推測させるものである。Beckによれば5),妊娠4週以前の流産では約75%の高頻度にのぼり,5〜8週の流産では約6%と染色体異常が急激に減少すると報告している。このことは妊娠8週〜10週までに染色体異常をもつ個体の大半は,流産という形で淘汰されてしまうことをうらづけるものである。このように自然流産の中には性ホルモン,環境などの母体側要因のみならず,胎児側要因によりひきおこされるものが多く含まれることに注目する必要がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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