文献詳細
薬の臨床
化学療法剤の臍帯血ならびに羊水移行に関する研究—Dibekacin (DKB)およびAmpicillin (ABPC)について
著者: 大野虎之進12 高畠弘2 牧野恒久2 佐藤悠二2 川口雄二2
所属機関: 1慶応義塾大学医学部 2東京歯科大学市川病院産婦人科
ページ範囲:P.417 - P.423
文献概要
産婦人科領域においても,他科領域の感染症の起因菌と同様に,Penicillinを始めとする主としてグラム陽性球菌に卓越した効果を呈する広域抗生物質の進歩普及により,往時の溶血性レンサ球菌,肺炎球菌などの強毒の化膿菌は次第にその姿を消し,1950年代前半ごろからこれに代つてブドウ球菌が台頭し,耐性ブドウ球菌の問題も抱えながら,1960年頃から大腸菌群,弱毒グラム陰性桿菌による難治感染症の増加が目立ちはじめている1)。
また,松田2)(1974)も,産褥熱の起因菌の変貌については,第2次大戦前のそれは好気性溶レン菌が重視され,ついで嫌気性菌の意義が重視されていたが,順天堂大学産婦人科教室での1957年以降の起因菌の変遷の再検討では,溶レン菌,ブドウ球菌は年次的に減少傾向を辿り,これに反して近年では弱毒性のグラム陰性桿菌(大腸菌が主で,これに変形菌,縁膿菌,肺炎桿菌など)と嫌気性菌による感染の増加が特徴的で,グラム陰性桿菌を例にとると,1971〜72年では34.6%の割合に増加し,嫌気性菌とあわせて1971〜72年では分離菌の2/3を占めているとし,すなわち起因菌の面では強毒菌の衰退と弱毒菌の増加傾向が著しいと述べている。
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