指標
更年期をめぐる新しい考え方—性機能面から
著者:
森一郎1
恒吉康男1
河野伸造1
武田信豊1
三原敬1
所属機関:
1鹿児島大学医学部産科婦人科学教室
ページ範囲:P.431 - P.439
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更年期を論じようとすれば,どうしても加齢,あるいは老化ということが問題になる。だが,これについては今日これほど科学が進歩しても,人の死が厳然として避けられない事実自体が,よくその解答を示しているように思われる。しかし生物において老化とは,時間という因子によつて生ずる変化であることは間違いがないので,生物で時間による変化をみると,暦上の時間と生物学的時間とは必ずしも同じでない。すなわち生物の構造や系統は,それぞれ異なつた速度で年をとつているので,暦上の時間の経過による変化と,年をとる生物学的な変化とは当然異なる。人の年をとる変化の速度は,胎児で最大で,乳幼児や小児になるにつれ次第に遅くなり,成人になつてからはかなり緩慢になる。したがつて成人になるまでの時期では,年をとる変化の区分はある程度分けられるが,成人後は,一般に困難なことが多い。
しかし老化ときわめて関係が深い性腺機能から人の一生をみれば,男性では,図1のandrogenのパターンでみるように,精巣機能は,発育の速度はやや早いが,衰退の速度は比較的ゆるやかである。一方女性では同図のestrogenやprogesteroneのパターンのように,卵巣機能の発育や衰退の速度はかなり早い。加えて卵巣機能は,精巣機能に比べ,排卵や月経というきわめて明確な生体反応を示す。