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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科30巻7号

1976年07月発行

雑誌目次

特集 実地臨床における胎児胎盤機能検査法とその判定基準

実地臨床における胎児胎盤機能検査法とその判定基準—総説

著者: 中山徹也

ページ範囲:P.537 - P.542

Ⅰ.産科臨床における胎児学の位置
 産科学の目的が妊娠・分娩・産褥の各時期を通じて母体の安全を計ることともに,健全なる新生児を出産させることの二つにあることは申すまでもない。しかしながら,従来の産科学はともすれば母体中心であつて,胎児〜新生児への関心は母体に比べれば低かつたことは否めない。この理由としては,胎児は母体子宮という密室の中に手厚く保護されていて,その発育状態や健康状態は母体の腹壁上から間接的に触診あるいは聴診する方法しか存在しなかつたからであろう。X線診断法が産科学に取り入れられて久しいが,主に母体の骨盤計測に応用されているのが実状で,胎児診断に関しては胎齢・成熟度・多胎妊娠や胎内死亡の診断に用いられてきたが,放射線曝量の関係で胎児への応用はなるべく避けたいとの原則のため,実地応用面では限度があつた。
 最近の内分泌学・代謝学の進歩,medical elec—tronicsの導入・染色体分析を中心とした遺伝学の進歩などにより母体内胎児の生理ならびに病理が漸く明らかにされはじめ,産科学の中で占める胎児の位置が大きくclose upされて,人類の発展の一つの鍵を握つているreproductionという現象を扱う産科学に,新生面を開くことになつたことは,あるべき当然の姿であるといえよう。

HAIRによるE3の簡易測定法とその臨床応用

著者: 野嶽幸正 ,   満川元一 ,   宮上順志 ,   瀬尾文洋 ,   木村州一 ,   鈴木秀宣 ,   矢内原巧 ,   中山徹也

ページ範囲:P.543 - P.546

 尿中エストロゲン(E)の免疫学的半定量法であるHAIR法は簡易性と迅速性にすぐれ,広い応用が期待されている。
 今回われわれは,妊娠末期のHAIR法による尿中E正常値を検し,ついで異常例におけるE値を検して,本法による妊娠末期の胎児管理法について検討したので報告する。

血清HPLの臨床応用

著者: 兼子和彦

ページ範囲:P.547 - P.553

 胎児胎盤機能検査法として尿中Estriol測定は簡易法の開発とともに実地診療において広く用いられているが,胎盤自体の機能を検索する手段として,胎盤から産生される酵素およびHormoneなどの動態を追求する方法もある。
 Human Placental Lactogen (HPL)またはHu—man Chorionic Somatomammotropin (HCS)もその一つである。

胎児成熟度検査法としての羊水中レシチン測定について

著者: 佐藤和雄

ページ範囲:P.555 - P.562

 胎児の成熟度を知ることは,産科医にとつては必須のことで,たとえば血液型不適合妊娠や糖尿病合併妊娠では児の娩出時期決定に不可欠の情報となる。胎児の成熟とは,その成長と発育すなわち形態の増大と機能の発達を意味するもので,それゆえ成熟度判定には胎児の大きさと機能の両面を知る方法が用いられるべきである。胎児についての情報を得るために従来より子宮の大きさ,すなわち子宮底長,腹囲などが胎児の大きさを知る手段として用いられてきた。最近,羊水穿刺(amniocentesis)が胎児の直接の情報を得る方法として行なわれている。これは血液型不適合妊娠の際の,児罹患の重症度の判定ならびに管理への有用性を認めたLileyの発表以来,広く普及するようになつた。胎児の成熟のうちで肺の成熟は最も重要なものの一つで,新生児として胎外生活をするためには不可欠なものである。もしこの成熟が遅れていると呼吸困難が起こり,いわゆる呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome,RDS)が起こり死亡する。これは産科医にとつて重要な問題でRDSを治療する方法が必ずしもない現在胎外生活可能かどうかは肺の成熟が一つの指標となる。本稿では胎児成熟度診断の一つとして胎児肺の成熟度の判定基準となる羊水中のレシチンについて述べてみたい。

MEによる胎児胎盤機能検査法とその判定基準

著者: 太田孝夫 ,   佐藤直樹 ,   沖永荘一 ,   荒井清

ページ範囲:P.563 - P.566

 胎盤は胎児の発育のために呼吸,循環,排泄,栄養,代謝,内分泌,免疫等広範な機能をはたしているが,一旦これらの機能に障害が発生すると様々の病態を呈することは広く知られている。すなわち比較的軽度なものは潜在的胎児仮死,胎児仮死,胎児発育不全となり極度に機能低下すれば子宮内胎児死亡という不幸な転帰をとる。胎児胎盤機能検査法の目的とするところは,これらの病態の早期発見にあるが,ここでは広義の胎児仮死のMEによる検査法とその判定基準を分娩時と妊娠中とに分けて述べる。

指標

婦人の性周期とその調節機構

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.525 - P.535

 第二次大戦後の世界の人口の爆発的増加は社会的問題と化し,その抑制手段としての経口避妊薬や子宮内避妊器具などの開発とその普及をみるに至つている。
 一方,無排卵症や不妊症に対する化学的排卵誘発剤も数多く開発され,妊孕性の抑制と促進に関して多くの関心がよせられ,生殖生物学の研究が長足に進歩した。

連載 リプロダクション講座・14

産褥期の生理と性周期の回復

著者: 小林弥仁 ,   倉智敬一

ページ範囲:P.567 - P.571

 妊娠中にはhCGのほか各種の蛋白ホルモン,ステロイドホルモンが多量に胎盤から分泌されるため,下垂体前葉機能は抑制をうけ,卵巣機能も休止の状態となつている。
 分娩後,性器は約6週間で復古するが,内分泌学的には,分娩による胎児と胎盤の娩出によつて妊娠中,血中に多量に存在した胎盤性ホルモンが消失し,母体内分泌系がその影響からはなれて独自の機能を回復し,非妊婦人に個有の周期性ホルモン分泌が卵巣から再開するまでの期間を産褥期ということができよう。

トピックス

婦人科癌の発生の内分泌的要因

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.572 - P.572

 乳癌・子宮内膜癌,卵巣癌はしばしば同一婦人にみられることがあり,また世界中にもこれらの各々の癌の発生頻度はそれぞれ別々に高くみられるのではなく三者ともに高いことが多い1)。このことはこれらの癌の発生に,何らかの地域における相関がみられることを物語つている。
 たとえば日系アメリカ人での乳癌の発生率は日本に住んでいる日本人より高頻度にみられ,また,日系アメリカ人の子宮内膜癌や卵巣癌で死亡する率が日本に住んでいる日本人より高いことが指摘されている2)。このことはこの三つの癌の発生には人種などの遺伝的因子よりも環境因子が重要であることを意味しよう。

原著

子宮頸癌術後の排尿障害に対するプロスタグランディンFの使用

著者: 中村淳 ,   佐藤恒治 ,   植竹泰 ,   家坂利清 ,   品田孝夫

ページ範囲:P.573 - P.575

 Prostaglandin (PG)は,精液中の平滑筋収縮物質として発見され,前立腺から分泌されているものと想定され命名されたものであるが,1962年Bergstromによつて化学構造が明らかにされ,さらに化学的合成が可能となるに従い,PGの研究は急速に進歩し,平滑筋作用のみならず,多種多様な生理学的,薬学的作用を有していることが明らかにされてきている。しかしながら実際に臨床的応用されているのは産科領域,ことに陣痛誘発,促進に限定されているのが現状である。私どもは今度PGの平滑筋収縮作用を利用して子宮頸癌術後の排尿障害に対してPGを使用して若干の治験を得たので報告する。

症例

卵巣妊娠の1例

著者: 山本政太郎 ,   黒沢恒平 ,   黒沢忠彦

ページ範囲:P.577 - P.579

 卵巣妊娠は子宮外妊娠のなかでもつともまれなものとされている。卵巣妊娠についてMoyersら1)は,1958年までに200例以下,Bobrow2)は1956年までに155例を集計したといい,わが国では1959年までに50例3)である。近年では松岡4),中島5),秋山6),穂積7)らの症例報告がみられている。
 最近,筆者らは40歳の主婦で,子宮外妊娠の診断で手術したところ,左卵巣妊娠破裂であつた1例を経験したので報告する。

薬の臨床

トリコモナス腟炎内服治療剤Tinidazoleに関する臨床的研究—第3報 1回内服療法

著者: 明石英史 ,   北崎光男 ,   福島道夫 ,   足立謙蔵 ,   大野光春 ,   郷久銊二

ページ範囲:P.581 - P.587

 トリコモナス腟炎は,悪臭ある多量の黄色帯下とこれに随伴する外陰掻痒感などを主症状とし,婦人科外来疾患のうちでも頻度も多く,しかも再発を繰返し易く難治な疾患の一つと考えられている。再発の原因の一つとして,トリコモナス原虫が患者のみならず,その配偶者の泌尿生殖器系に存在することに基づく,ping-pong感染が考えられる。
 Tinidazoleは,米国Pfizer社が開発したnitroimida—zole系の新しい抗トリコモナス剤で,強力な抗トリコモナス活性を有し,吸収も速やかで,その血中濃度も高く,尿中排泄も良好であり,従来繁用されているmetro—nidazoleと同等または優る薬力学的作用を有する薬剤である3,4)(表1)。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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