文献詳細
疾患の病態と治療 母体環境からみる胎児・新生児
文献概要
妊娠中に母体の栄養摂取を制限すると,胎児・新生児の生下時体重が明らかに減少することは臨床的にも,また動物実験でも確実なことで,また母体の蛋白質の摂取が少ないと,胎盤や胎児のある臓器では,それを構成する細胞の数が減少することも知られていて,とくに脳細胞の減少が認められている。したがって妊娠中に栄養障害をうけて発育した児に対して,出生後に栄養を改善しても,子宮内で,欠乏にしろ過剰にしろ児がうけた障害を,はたして正常化しうるものかどうかはきわめて重要な問題である。このような事実は主として動物実験の成績から得られたものが多いので,ヒトにおいて母体の栄養障害が胎児・新生児の発育に対してどの程度の,そしてどのような内容をもった障害を与えるかについては,まだ論及されていないところが多い。
第2次世界大戦の経験からすると,妊娠前までは良い栄養状態にあった婦人が,急激に飢餓に陥らざるを得なくなり,その結果新生児の体重は戦争前に比較して平均250g (8〜9%)減少したが,そのような児は大部分が妊娠後半期に飢餓になった母体から生まれたといわれている。というのはそれ以前に飢餓になったものでは,不妊,あるいは流早産が増加した影にかくれてしまったので,この程度の体重減少となったのかも知れない。
第2次世界大戦の経験からすると,妊娠前までは良い栄養状態にあった婦人が,急激に飢餓に陥らざるを得なくなり,その結果新生児の体重は戦争前に比較して平均250g (8〜9%)減少したが,そのような児は大部分が妊娠後半期に飢餓になった母体から生まれたといわれている。というのはそれ以前に飢餓になったものでは,不妊,あるいは流早産が増加した影にかくれてしまったので,この程度の体重減少となったのかも知れない。
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