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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科31巻11号

1977年11月発行

ひとくちメモ

卵巣網(Rete Ovarii)のはたらき

著者: 相馬広明1

所属機関: 1東京医科大学産婦人科

ページ範囲:P.980 - P.980

文献概要

 卵巣網(rete ovarii)は胎生3ヵ月の胎児卵巣に上皮性隆起として発達し,卵巣間膜の部分に突出する。それが成熟卵巣では,卵巣門付近の痕跡小管としてとどまる。男性での睾丸網に匹敵するといわれる単一な低円柱上皮で画される不規則な網状小管を構成するが,しばしば卵巣髄質の方に深く入り込むのもみられる。しかも時には大きくなり,モルモットなどでは一部嚢胞状を呈することもある。ヒトでは非常に小さいけれども,卵巣嚢胞形成がこの卵巣網から派生しているというみかたもある。
 このように卵巣網は退行性の痕跡小管であり,その機能については全く知られていなかった。最近,東日本内分泌学会での招請講演のため来日されたカンサス大学のGreenwald教授(生理学)が私のところを訪ねてくれた。いろいろはなしをしたときに,この卵巣網の問題にふれ,これについて興味ある示唆を与えてくれた。元来卵巣網とか,副卵巣などの胎生期の遺残物は,胎生期の性腺の発達のある期間には,性腺分化に働いているが,正常では卵巣におけるcortical inductor substanceによってその働きは抑制されているというような推定がなされており,たとえばホルモンなどにはもはや感受性がない遺残物であるとみなされていた。しかし最近のByskovなどの研究では,rete ovariiは胎児卵巣における減数分裂の開始を始めるinducerとしての役目をもっていることが判明したという。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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