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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科31巻3号

1977年03月発行

文献概要

疾患の病態と治療 リスクの高い病態の対策--産科から

常位胎盤早期剥離

著者: 池田友信1 上田哲平1

所属機関: 1鹿児島大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.211 - P.215

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 妊娠後半期に児の娩出に先だって,正常位に付着していた胎盤が,何らかの原因で完全,または不完全に剥離したことによって起こる症候群を,本邦ではドイツ学派のいうDie vorzeitige Ablo—sung der normal sitzenden Plazenta,常位胎盤早期剥離(以下,胎盤早剥と略す)と呼んでいる。その他,本症を示唆するものとして,Couvelaireによって名づけられたuteroplacental apoplexy(子宮胎盤溢血),米国学派のabruptio placentae(胎盤剥離)や英国学派が命名したaccidental hemorrhageなどがあるが,本症の病態や原因を如実に表現した名称といえよう。
 胎盤の早期剥離といっても,児の娩出前に何の症状も示さないで,娩出した胎盤子宮面の所見から早剥が証明されるような軽度のものから,臨床的にみていわゆる胎盤早剥と診断されるような重症型のものまで含まれているが,本稿ではもちろん,後者を意味するものである。胎盤剥離面からの内・外出血による失血やしばしば合併している妊娠中毒症,低フィブリノーゲン血症による血液凝固障害による分娩後の弛緩性出血,腎不全のような症状の併発によって母体の生命が脅かされるとともにしばしば低体重児の分娩や死産の原因となっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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