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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科32巻1号

1978年01月発行

トピックス

非授乳側乳房の乳癌発生への可能性

著者: 広井正彦1

所属機関: 1山形大学医学部産婦人科学

ページ範囲:P.41 - P.41

文献概要

 以前より,欧米の婦人に比較して東洋の婦人は多産で産後の授乳期間が長いためか,乳癌の発生率が低いことが報告されてきている1)。従って授乳が乳癌の発育を阻止する役割を果たしてはいないかと考えられてきたが,国際的な研究により授乳が乳癌の発生を阻止するものではないとすでに結論づけられている2)
 近年,わが国でも母乳の重要性が強調されるようになり,もう一度,授乳と乳癌との相関を考えてみるのも興味あるものと思われる.このことを考えるうえでホンコンの船上生活者の症例がよい研究材料となる.ここの婦人たちは習慣上や容易さから右側の乳房のみで児に授乳することが多いからである。陸上の生活者はむしろ両側の乳房で授乳することが多い。そこでIng,Hoら3)はホンコンのQueen Mary HospitalとクーロンのQueen Elizabeth Hospitalで1958年より1975年まで乳癌で治療をうけた2,403例を分析した。このうち右側のみの乳癌例は50.1%,左側のみ48.6%,両側にみられたもの1.3%であった。一側のみの乳癌は2.372例で左側/右側の比(L/R)は0.97とほぼ両者とも同率であった。このうち,授乳の有無よりみると,授乳しなかった経産婦246ではL/R比は55歳未満で1.29,55歳以上で1.11とやや左側に多くの乳癌発生をみたが,推計学的に有意差はなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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