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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科34巻1号

1980年01月発行

雑誌目次

指標

性の分化,成熟と性腺ホルモン

著者: 松本圭史

ページ範囲:P.5 - P.13

 性の分化は,男女共通の未分化型が,性腺ホルモンなどの誘導によって男性型と女性型に分化することによっておこる。まず未分化型の性腺は,性染色体に誘導されて睾丸と卵巣に分化し,この性腺からの分泌ホルモンによって,未分化型の内性器と外性器は男性型と女性型に分化する。したがって,性の分化の方向は,性腺の分化の方向を決定する性染色体によってきめられるといえる(図1)。
 以上のことから,性分化に際して誘導因子が反対の性の方向に作用すると,その部分に関しては男性の女性化と女性の男性化(インターセックス)ができることは容易に理解できる。

Modern Therapy 年間特集テーマ「Modern Therapy」巻頭言

産婦人科治療の現況と行く末

著者: 竹内正七

ページ範囲:P.15 - P.15

 産婦人科領域における治療法は,関連領域のそれと深いかかわり合いをもちながら着実な進歩を示し,今や昔日のおもかげはないといってもよい。これはわが領域における基本的な病態生理学と,分類や定義についての知見が急速に進歩,改善を示し,整理されてきていることによっている。治療の要諦は,正しい病態観の把握に基づくことは論をまたない。
 近代産科学の主要な目標は,周産期死亡率の減少に向けられた。わが国では昭和42年の26.3から,昭和53年には13.0にまで減少した。しかしこの数字の減少は,主に早期新生児死亡の減少によっており,胎児死亡についてはこのところ10〜20年間ほとんど変わっていない。このことは必然的に胎児情報を把握する方法の開発へと眼を向けさせた。かっては全くわれわれの手の屈かなかった胎児管理も,胎児胎盤機能検査法の進歩を初めとする多くの検査法の進歩により,十分管理可能の対象となってきた。

産科劇症の治療

産科劇症概論—救急医療のために

著者: 東條伸平 ,   保科眞

ページ範囲:P.16 - P.20

 産科劇症とは単時間内に生じた母体ならびに胎児の生命にかかわる重篤な病態と考えることができる。つまり対象となる患者は,性成熟婦人でしかも妊娠した婦人ならびにその胎児である。また,患者が妊娠しているか否かによって医師の考慮すべき疾患群が大幅に異なってくる。ときには,この最初のステップの誤りが患者あるいは胎児の死につながる。
 ここにまず,産科劇症の特徴,症候,疾病分類などについて概説するが,臨床的には医師が産科劇症について考慮する前に胎児の存在の可能性に対する的確な判断がなされるであろうことを前提としているので,とりわけ妊娠の可能性を否定する性成熟婦人の取り扱いについては慎重かつ厳密,客観的な態度が必要である。

子宮破裂

著者: 相馬広明 ,   寺田国昭 ,   柏木博之 ,   小川俊彦 ,   井坂恵一 ,   鈴木康伸

ページ範囲:P.21 - P.23

Ⅰ.子宮破裂とは
 子宮破裂のほとんどは分娩時に起こる。その症状は急性であり,出血やショックを起こし,母体は重篤となり,致命率が高い。そのため早期発見と積極的な処置が母体の救命につながる。また児の死亡率もはるかに高い。ただこの症状の開始や進行は,しばしば気がつかないで見のがされたり,その処置におわれているうちに,不可逆性のショックにおちいったりするから,注意しなければならない。
 その原因としては,既往の帝王切開や,筋腫核出やその他子宮に加えた手術の瘢痕創の破裂,また分娩遷延,陣痛誘発などによる自然破裂,反復帝王切開,鉗子分娩,骨盤位分娩などの器械的侵襲による破裂などがあげられる。

弛緩出血

著者: 堀口貞夫

ページ範囲:P.25 - P.30

 分娩に伴う出血が,今なお産科領域で重要な問題であることは,妊産婦死亡率が年々低下しつつあるなかで(図1),出血による死亡が死因の主要な部分を占めている(表1)ことにも示されている。
 一般には,分娩時出血量が500mlを越えると異常とされている1)

DIC

著者: 寺尾俊彦 ,   小林隆夫

ページ範囲:P.31 - P.36

 DICとはdisseminated intravascular coagula—tion,血管内血液凝固症候群のことで,その典型的なものは産科領域に多く,適切な処置がなされないときは致死的なものとなる。われわれ産科医にとってはいち早くDICと診断し,早急に治療することが切望される。今回は著者らが最近経験した一症例の治療を中心にDICの一般的な治療について述べる。

黄疸

著者: 福島穣

ページ範囲:P.37 - P.40

 産科領域で劇症黄疸に遭遇するのははなはだまれではあるが,表1にまとめられているBarnes C.G.の分類に従い各疾患についての知識を簡潔に再整理し,さらに検査項目の要点と治療方針の大網に触れてみたい。
 実際的に最も多く対決するのは,ウイルス性肝炎,ことに血清肝炎であるが,この分野における知見の進歩は,真に急速であり,産科医としては絶えず内科専門医との連繋を強化し,最新最適の治療を提供できるよう努力したいものである。

重症妊娠中毒症

著者: 中山道男

ページ範囲:P.41 - P.44

 重症妊娠中毒症は今日かなり減少しつつあるといわれている。しかしながら厚生省の統計をみても中毒症による母体死亡率は,まだ依然として首位を占めており,地域や病院によっては,本症はまだかなり発生していることも事実である。
 与えられたテーマは産科劇症としての中毒症の治療ということで,日産婦妊娠中毒症委員会の分類による重症型(FIGO分類の重症子癇前症に該当)を中心に診断と治療について述べ,特殊型としての子癇や肺水腫にも若干ふれてみたいと思う。

子宮外妊娠

著者: 藤井悳

ページ範囲:P.45 - P.49

 子宮外妊娠ectopic pregnancy (以下外妊と略す)は卵巣腫瘍の茎捻転とともに産婦人科領域における急性腹症acute abdomenの代表的疾患である。しかもその治療の優劣は直接当疾患の死亡率に結びついており1),表1のごとく1950年より1977年の間の妊産婦死亡率の統計をみても,術前・術中・術後の管理や,麻酔学の進歩がその減少につながっていることは明らかである。治療の第一歩は原疾患の診断に始まるが外妊の診断は今もって難しい疾患の一つであり,次のNovakのことばはそのことをよく表現している2)
 The physician who has extrauterine pregnancy "on the brain" will rarely fail dignose it when it exists, but he will diagnose it often when it is not present.

産科ショック

著者: 竹内正七 ,   高橋威 ,   林伸行

ページ範囲:P.51 - P.54

Ⅰ.産科ショックの特徴
 産科ショックとは,一般に妊娠を基盤とした妊娠・分娩・産褥の各期に,妊産褥婦に発生するショックのことである。妊産婦死亡にむすびつく重篤なショックの直接原因としては,出血,感染症,羊水栓塞などがあげられ,これらの要因として妊娠中毒症,いわゆる難産,感染の三者が重要視されている。
 妊産婦がショックに陥り易い理由として, 1)妊娠子宮によって下大静脈などが圧迫されるため,心臓への還血量が少なくなり易く,そのため重要臓器の血行障害を起こしやすい。 2)妊婦の骨盤内の静脈系は怒張,うっ滞しているため,羊水栓塞や空気栓塞が起こりやすい。 3)妊娠時(ことに末期)には,血液凝固系の亢進・線溶系の抑制状態にあるためDICを起こし易い。これは流血中に絨毛細胞が流れていることも関係していると考えられる。 4)妊娠は全身性シュワルツマン反応(generali—zed Shwartzman Reaction)の準備状態と考えられる。 5)骨盤内や尿路系に感染を起こしやすい。 6)骨盤内や子宮・腟などは血流が豊富になっており,ひとたび出血すると大量出血になりやすい。 などがあげられる。

妊婦の急性腹症

著者: 森川肇

ページ範囲:P.55 - P.63

 急性腹症とは,激烈な腹痛のために緊急手術を必要とする疾患群をさす。しかし臨床上は,類似の症状を示すが,手術を必要としない疾患もあり,これらも考慮に入れて診断,治療にあたるべきであろう。
 ところで,性成熟期の婦人が腹痛を訴えたなら,まず最初にその女性が妊娠しているかどうかを判断せねばならない。とくに,妊娠の診断をつけにくい,無月経の期間が短い症例では慎重に妊娠の存否を診断し,ついで,腹痛の原因が妊娠の異常に由来するものか,あるいは,妊娠以外の腹部異常によるものかを鑑別する必要がある。妊娠の異常による腹痛については他の項で述べられているので,ここでは,妊娠の診断がすでについていて,かつ妊娠の異常によらない急性腹症を示す疾患につき述べる。

産褥急性感染症

著者: 松山栄吉

ページ範囲:P.65 - P.67

Ⅰ.産褥感染症と妊産婦死亡
 消毒法の進歩,抗生物質の発達,施設分娩の増加によって,昔多数みられたような産褥期の感染症による母体死亡例は,最近は著しく減少した。表1はわが国の最近における年度別の妊産婦死亡数と,その中で敗血症によるものの数値と,その割合とを示したものである。
 これによると,妊娠中や流産後の敗血症による死亡例を加えても,その実数は激減していることがよくわかる。ただし全妊産婦死亡数も著しく減少しているため,それに対する比率は必ずしも減っておらず,むしろ最近12年間はやや上昇の傾向がある。

特集コメント

エピローグ的コメント

著者: 小林隆

ページ範囲:P.68 - P.68

 罹患や経過の模様が極めて慢性的で,時には生涯にも及ぶ疾患,例えば糖尿症,慢性関節リューマチ,結核,精神病は申すに及ばず,慢性病になりやすい腎や肝の疾患を思うとき,産婦人科疾患の経過の短さ,転帰の早さは誠にきわだっており,年余に及ぶ入院治療など考えられないことである。このような慢性内科疾病から見ればほとんどすべての産婦人科疾患は相対論的には劇症的なプロフィルを持つといえないことはない。それだけに診療においては即戦即決,怪刀乱麻を断つといったハイレベルの診療能力が求められ,われわれみずからも,危機一髪的な救急,救命の成功にプロフェッショナルな満足と自負を感じつつ毎日を送っているのではあるまいか。その反面,飛ぶ鳥を射る難しさ,予見性が乏しい突発的な現象,その激しいダイナミズムに対する微調節の至難さなどを前にして,われわれの治療的介入の限界をまざまざと感じることが多いのである。それのみならず,このような劇症の本態論に関する第三者の理解の困難さ,乏しさから産婦人科医は苛酷にも医療紛争の被告人として法延に立たされる頻度が他科を凌ぐという皮肉な結果を招くことにもなるわけである。劇症に関連するこのような情けない問題をわが領域としては将来どのように解決するかということは,わが科の繁栄や後継者をリクルートする立場からもなおざりにはできない問題である。

トピックス

高プロラクチン血症患者の妊娠時の予後

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.44 - P.44

 血中prolactinが容易に測定可能になると,無月経乳汁分泌症候群や高プロラクチン血症がリプロダクションに及ぼす影響などが注目されてくる。
 近年,prolactin分泌下垂体腫瘍の発見や,その手術方法に関しても多くの成績をみているが,下垂体のmicrotumorないし腫瘍が判明しにくい高prolactin血症の症例に,do—pamin拮抗物質であるbromocri—ptineも広く用いられ,治療効果が明らかにされてきている。

FIGO TOPICS 私が感銘を受けた講演

腹腔鏡下における手術/子宮頸部初期浸潤癌の切除範囲

著者: 福島峰子

ページ範囲:P.69 - P.69

Surgical therapeutic pelviscopy
 産婦人科学の全領域を網羅しての祭典であったが,12の部屋ならびに展示会場に分かれて同時進行であったため,私は主として内分泌関係,内視鏡関係に限定せざるを得なかった。
 まず内視鏡関係ではKiel大学K.Semm教授(西独)の腹腔鏡下の手術が圧巻であった。私どもも骨盤腔鏡(クルドスコープ,ラバロスコープ)を観察一診断にとどめず,同時に手術へ拡大して行なっているが,Semm教授は今や産婦人科手術の70%をラバロスコープ下に行ない,その数は5000例以上に及ぶが,合併症もなく良い結果を得ている。卵管結紮は900例以上施行し,妊娠例は1例もない。安全への配慮,止血法,大きな腫瘍の縮小化などのため,いろいろな器具の開発を行なっている。今回とくに強調されたのはガスは主としてCO2を用いること,電気凝固はゆで卵の原理で100度でゆっくり凝固させる。これで周辺臓器に間違って火傷を与えたことは一度もないという。crocodile forcepsまたはpoint coagulatorを使い,その後で凝固部を切除する。loopli—gatureで結紮もでき,出血の心配もない。それから筋腫のような充実性のものを剔出するときはtissue puncherで鰹節をけずるように器具内に組織をけずり圧縮しておさめて引き出す。これらを繰り返す……

出血とショックに関するセミナー/嫌気性菌への多大な関心

著者: 寺尾俊彦

ページ範囲:P.70 - P.71

Hemorrhage in Obstetrics Including Shock-Basic study of DIC
 今回はIYC記念周産期医学シンポジウム,FIGO教育講演,FIGO本会議,日母大会と盛り沢山の講演が続き,今後二度とないと思われるほど多くの講演が聞かれ,さらに文献上でのみ知る,高名な学者の人柄などにじかに接し,世界を身近に感じるようになったことは,私の最大の収穫であった。
 Dr.Steptoeの試験管ベビー、Dr.Cardeyro-Barciaらの坐位分娩,Ryan教授やJost教授らの特別講演,Dr.SchallyのLH-RHおよびそのdelivcrtives等々,センセイショナルなもの,新知見に満ちたもの,多年の経験や研究からにじみ出る深みある教育講演など,その内容も多彩であった。これらは,おそらく他の方々から紹介されるであろう。小生は出血とショックに関するセミナーについて,その印象を述べてみたい。

免疫不妊に関する頸管粘液抗体/卵管不妊手術のフィルム

著者: 須藤寛人

ページ範囲:P.71 - P.71

Local Lmmune Infertility
 総合セミナーの不妊の部で,デトロイト大学のMog—gissi教授が免疫不妊症に関して,とくに頸管粘液抗体について話された。教授は"The Cervix"の編者であられるが,免疫に関しては比較的最近興味が向かわれた研究者で,詳細な臨床不妊検査データと不妊原因を明らかにする一方,血清精子凝集テスト,同不動化テスト,頸管粘液抽出液を用いたKremer testおよび微量粘液抽出液・精子不動化テストを行なったデータを比較検討し,相関関係のある項目を求めた。全不妊患者の15.2%に微量粘液・精子不動化テストは陽性であり,Huhnerとの相関が認められた。血清精子凝集テストは,Kibrick testを用いており,原因不明不妊症婦人群に多いという,今まで多く発表された結果とほぼ一致していた。血清精子不動化テスト陽性者と頸管粘液抽出液・精子不動化テスト陽性者との間に,相関が認められなかったことから,頸管におけるlocal lmmunityが存在するであろうと結論されていた。しかし,局所陰性・血清陽性,局所陽性・血清陰性という現象の起こる理由の説明は不十分で,この辺に精子免疫学の確立していない部分があると思われた。

卵胞破裂機序の新知見/産科学と家族計画における社会的問題

著者: 森崇英

ページ範囲:P.72 - P.72

The role of enzymes in follicle rupture by Lars Bjersing (Sweden)
 排卵のメカニズムは,その臨床的重要さに加えて,生命科学的アプローチを試み得る恰好の生体現象であるため,過去において生殖に関係した学会では常に主題の一つとなってきた。今大会でも卵胞破裂機序がセミナーの一つに取り上げられ,新しい知見と新しい問題提起が行なわれた。
 Mastroiani,Nakano両教授の司会のもとに,Okamura(Japan),Bjersing (Sweden),Wallach (U.S.A.),Cou—tinho (Brazil)の4人の演者が,それぞれ専門とする方法論を用いて,卵胞破裂のメカニズムを解析した知見をレビュー的に紹介,さすが斯界の第1人者の講演とあって,いずれ劣らぬ充実した内容であった。

公募の一般演題/分娩体位はSitting positionが望ましい

著者: 田部井徹

ページ範囲:P.73 - P.73

Testosterone-estradiol biuding Globulin (TeBG)
 今回のFIGO世界大会は,全般にみて世界各国から多数の産婦人科臨床医が集まった祭典としての性格が感じられ,各会場において,多数の優れた専門家に直接接する機会が与えられたのは有意義であった。一般に国際学会における特別シンポジウムの発表や招待講演は,学会の中心的な役割を果たしているとはいえ,既に誌上で発表された成果の集大成に過ぎなかったり,他の研究者の業績を総括した内容のみのことが多く,最新の研究成果や知見は,公募の一般演題の中に見出されることがしばしばである。今大会における一般演題の会場は1〜2階の主会場から隔離された最上階に位置しており,専用エレベーターを探すのに苦労させられた。各会場は20数名の収容力があるかないかの小部屋であったが,出席者は熱心に演者の発表を傾聴し,活発な討論がなされていたのは印象的であった。とくに,Gynecological Endo-crinologyを主題としたFC55〜64の一般演題セクションには数多くの興味深い演題が発表されていた。中でも,産婦人科領域では比較的目新しいものとして,ヒト血清中の性ステロイドホルモン結合蛋白(TeBG,SHBGあるいはSBPなどと命名されている)に関する2演題が私にとっては注目に値した。TcBGの生理的意義に関しては,現在まで不明な点が多いが,エストラディオールやテストステロンなどの性ステロイドホルモンと特異的に結合し,生体内の性ステロイドホルモンの貯蔵,輸送を司っていると考えられていたが,最近,標的臓器における遊離型性ステロイドホルモンの供給に関与し何らかの調節作用を行なっている可能性が指摘されている。ヒトTeBG濃度は,エストロゲン依存性を示しアンドロゲンやプロゲステロンの投与により低下する。FC57bのDr.NakamuraとMishellの報告によるとpro-gesteroneの一種であるLavonorgestrelを成熟婦人に投与するとRIAで測定したエストラディオールとテストステロンの総濃度はそれぞれ投与前後に不変であったが血清TeBG濃度は低下し,遊離型の性ステロイドホルモンは著明な増加を示したという。他の演題はTeBGの測定法に関するものであった。同セッションでは,Dr.DiczfalusyやDr.Klopperらの著明な学者による活発な質疑応答がなされ,主会場などでみられる講演などと異なり,学問が身近に感じられ,強い感銘を受けた。

症例

子宮体部原発性mesonephric carcinomaの細胞診と組織診

著者: 松永功 ,   井庭信幸 ,   岩成治 ,   梶谷直弘 ,   北尾学

ページ範囲:P.75 - P.79

 1903年Meyer1)により,子宮頸部の中腎腫mesone—phromaが報告されて以来,その名称,組織発生論などに関する論議がなされ,mesonephric carcinomaに関して,いまだ統一見解がないのが現状である。1939年Schiller2)は,胎生期の中腎のglomeruloid structureと類似し,その構成細胞にhobnail cellを有する卵巣腫瘍を報告した。これは一般的にmesonephromaのSchil—ler typeと呼ばれている。さらにSaphirら3)は,1944年に腎のhypernephromaに類似するホルモン活性を示さない2例の卵巣腫瘍をadenocarcinoma clear cells(hypernephroid)として報告した。clear cell patternを示し,hobnail cellを認めるものをmesonephromaのSaphir typeとされている。またNovakら4)は,Schiller typeとSaphir typeとには共存する組織像があり,中腎・後腎性起源説を唱えmeso-metanephric rest tumorと報告した。一方Teilum5,6)はSchiller typeとSaphir typeは別の腫瘍とし,germ cell originを提唱してendodermal sinus tumorと呼んでいる。

内視鏡メモ

内視鏡修練をどうするか—ファントーム(training box)の利用

著者: 柴田直秀

ページ範囲:P.81 - P.81

 多年,大学で内視鏡の実地指導を続けていて,効率の良い教育方法を考えていたが,ファントームが,あれば有用だろうとは思いながら適当な市販品がなかったので,今回のFIGO東京大会の機会に,高分子化学材料で種々の医療模型を製作している株式会社高研に,協力を仰いで,次のような特別製の教育用ファントームを試作してみた。
 当初外観を簡単な箱型にして,内部だけを幾分リアルに臓器類を配列するつもりでいたので,発表前,素朴にtraining boxとしたのは,このためで,上下を転換するだけで,4種の内視鏡診断操作が練習できるようにした。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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