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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科34巻4号

1980年04月発行

文献概要

Modern Therapy HBウイルスの母児感染をめぐって 特集コメント

B型肝炎ウイルス制圧の第一歩

著者: 鈴木宏1

所属機関: 1山梨医科大学内科学教室

ページ範囲:P.299 - P.299

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 わが国には約300万人のB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリアー)が存在し,全世界では約1億4千万人のHBVキャリアーがいると推定されている。このうちの約10%に肝炎が発症し,慢性肝炎から肝硬変,さらには肝細胞癌が発生すると考えられている。肝炎が発生したものについてはインターフェロンあるいはadenine arabinoside (Ara-A)などの抗ウイルス剤による治療が試みられているが,薬物によるウイルス感染症の治療には限界がある。従って,HBV感染症の制圧にはHBVキャリアー成立を予防することがその第一歩であるといえる。
 大林らの肝硬変・肝癌集積家系の検討から,わが国では母児感染がHBVキャリアー成立に大きな役割を果たしていることが明らかにされ,その後,岡田らの研究により,e抗原陽性の母親からの児はすべてHBVキャリアーになるのに対して,e抗体陽性の母親からの児はHBVキャリアーにならないことが明らかにされた。この事実は,欧米ではHBVキャリアーの成立に母児感染はあまり大きな役割を占めていないこととも符合するものである。欧米では20歳以降の生殖年齢時には,HBVキャリアーのほとんどがe抗原からe抗体へのserocon-versionを起こしているのに対して,わが国では20〜30歳代のHBVキャリアーの約30%aがe抗原陽性であるためである。欧米とわが国でe抗原からe抗体へのsero-conversionの時期が,なぜ違うかは興味ある問題で,今後の重要な検討課題の一つである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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