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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科34巻5号

1980年05月発行

文献概要

トピックス

長期透析患者の妊娠分娩

著者: 田部井徹1 渡辺恒治1

所属機関: 1国立病院医療センター産婦人科

ページ範囲:P.380 - P.380

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 慢性腎不全に対する人工透析療法の進歩は実にめざましい。とくに透析技術の向上に伴い長期透析療法が可能となり,長期生存者例も漸次増加し,日本でも10年生存例が各地で報告されるようになってきている。人工透析研究会の調査によると,現在3万人以上の患者が人工透析をうけているという。透析療法が主として腎の排泄機能を代行するのみなので,内分泌代謝機能などをカバーできないため,種々な合併症は避けられない。女性の透析患者は,透析によりホルモンやアミノ酸を消失し,性腺機能不全による月経不順や無排卵となり,不妊症になることが多い。さらに性欲の低下がみられ,妊娠の機会が減り,たとえ妊娠したとしても,約半数の透析患者は自然流産するといわれている。また妊娠中毒症,児死亡の発生頻度が高く,尿毒症による母体死亡の危険性さえある。長期透析による母体への影響としては,心不全,肺浮腫,体液過剰,高血圧などの循環器障害,貧血,電解質,酸塩基平衡障害,脂質代謝異常,胃十二指腸潰瘍,透析痴呆あるいは骨カルシウム代謝障害などさまざまな合併症が起こりうるし,胎児発育異常,胎児死亡など児への影響が出現しやすい。また早産,未熟児の頻度が高い1)。従って避妊に失敗したら妊娠初期に人工妊娠中絶を行なうのがよいとされていた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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