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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科35巻12号

1981年12月発行

BREAST FEEDING MEMO

母乳の乳質

著者: 澤田啓司1

所属機関: 1日本総合愛育研究所研究第三部

ページ範囲:P.888 - P.888

文献概要

 母乳の乳質は,最近,医学の分野ではあまり話題にのぼらない。しかし,経験的には,母乳の質の良否と,児の発育,機嫌とは大きな関係があるともいわれる。
 1930年代に,マーガレット・シード女史がサモア諸島の生活について文化人類学的なレポートをしている。その中に,乳質の検査法についての記載がある。サモアの習慣では,初めて母乳を子どもに与える前に乳質の検査をする。その方法は,ココナッツのカップに母乳を入れ,その中に焼けた石を入れる。母乳が凝固する間は,その母乳は子どもに与えてはいけないとされていた。初乳の間は,母乳中の蛋白質含量が高いから,熱によって凝固しやすい。この検査法は,初乳を与えることが児にとって好ましくないという経験的な考えから生まれたものかもしれない。初乳を与えることをさける習慣は日本にもあった。ヨーロッパ地方では特に初乳をさける習慣はなくむしろ,一種のLexativeな効果があって児にとって好ましいものとされていたようである。18世紀頃から,日本の小児科学の教科書にも,初乳の効用を説く論がでてくるのは,西洋医学の影響であろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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