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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科35巻2号

1981年02月発行

文献概要

Modern Therapy リスク症例と分娩

リスク症例と分娩 総論

著者: 鈴村正勝1

所属機関: 1日本医科大学第一病院

ページ範囲:P.81 - P.86

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 High risk pregnancyは,最近の産科学,特に周産期医学の進歩によってわれわれの前に大きくクローズ・アップされてきた。従来も,妊娠中毒症,妊娠結核,梅毒,心疾患などは産科医にとって極めて重要な妊娠合併症であって,産婦を診療する際には常に注意してきた。本多(啓)1)はhigh risk妊娠として7項目に亘ってあげている。本特集においても各項目を採り上げて,各論に述べられている。
 High risk妊娠の定義は,本多(洋)2)によると,「胎児が出産前後に死亡もしくは欠陥をもって生れてくる可能性が高いもの」を指すとしている。さらにこれに追加して胎児・新生児についての概念であるとし,先進諸国に比して数倍の高率を示す本邦の妊産婦死亡率を減少させるために母体のriskを考える必要があるとしている。私はこの意見には多少の異論がある。妊娠時には母と児との間の比重は同じであるか,あるいはむしろ母体に重きをおくべきである。妊娠という免疫学に反するような生理的現象は,母体の抗体産生の低下など母体の犠牲において成立しているのであるから,母の危険も大である。また産科医としては,母・児を同等に考えて処置すべきであるが,2者択一に迫られたら,躊躇なく母体を選ぶべきである。私はhigh risk妊娠とは,「母・児ともに出産前後に危険発生の可能性が高いもの」としたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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