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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科35巻4号

1981年04月発行

トピックス

FSH分泌抑制因子"Inhibin"の意義

著者: 田部井徹1

所属機関: 1自衛隊中央病院産婦人科

ページ範囲:P.302 - P.302

文献概要

 下垂体性腺系にみられるフィードバックの調節機序に関する研究は,従来より盛んにおこなわれてきた。とくに下垂体から分泌するLHが性腺から分泌する性ステロイドホルモンと逆相関の関係にあることはネガティブフィードバックとしてよく知られている。一方,下垂体から分泌されるFSHの調節因子については現在もなお未解決な問題が多い。
 1932年,McCullagh1)が雄ラットを去勢することにより出現する下垂体機能の亢進を示す去勢像は,精巣の脂溶性抽出物を投与しても全く影響を受けないが,非ステロイド性の水溶性抽出物を投与すると阻止されることを認めた。この下垂体の調節因子である水溶性抽出物をMcCull-aghはInhibinと呼んだ。Setchellら2)は,精巣の水溶性抽出物を去勢雄ラットに投与すると下垂体からのFSH分泌のみが特異的に抑制されると述べ,De Jongら3)およびSteinbergerら4)は,ラット精巣のセルトリー細胞因子を下垂体細胞の分離培養系に加えると培養液中に放出されるFSH量が減少することを報告した。したがって精巣の水溶性抽出物あるいはセルトリー細胞因子は,下垂体前葉への直接作用によってFSH分泌を特異的に抑制する物質すなわちInhibinを含有するという。最近,精巣のセルトリー細胞と同類の卵巣細胞は,顆粒膜細胞であるところからラット顆粒膜細胞の培養系を用いて,この細胞がInhibinを産生することが証明された5)。また,ウシ卵胞液を去勢した雌ラットに投与するとFSH分泌が特異的に抑制されることから,Inhibinが卵胞液中にも存在することが実証された6)。以上の事実からInhibinの生理的役割として卵巣におけるFSH分泌の調節に関与していることが示唆される。しかしヒト卵巣におけるInhibinの存在あるいは生理的意義については不明な点が多い。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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