文献詳細
文献概要
Modern Therapy 産婦人科とPhysical Care
水泳指導
著者: 室岡一1 越野立夫1 大塚茂1
所属機関: 1日本医科大学産婦人科学教室
ページ範囲:P.398 - P.400
文献購入ページに移動妊娠すると非妊時とは異なった心理状態におかれる。すなわちお腹の中の赤ちゃんのこと,お産に対する恐怖などが主たる考えの中心になる。これに加えて家庭環境のこと,医師からの助言,指導内容などが敏感にひびいてくる。一般に本邦婦人は胎児を守ろうとして,妊娠すると今までよりは強く,しっかりした考えになるように思われる。しかし先日欧米を旅行して外国の妊婦の心理状態をきいてみると,妊娠すると気弱になるというのである。この間の相違をどうとったらよいか今まで迷っているが,少なくも本邦婦人では水泳をしてみると,泳げない人でもあまり水を恐がらず,実に1〜2回のうちに泳ぎを覚えてしまった。つまり精神的に胎児を持つだけに,しっかりしなければと考えるのでなかろうか。それだけに胎児の発育,ことにその異常に対しては十分言葉を慎んで話さなければならない。それと同様,お産についての話は往時から難産関係のことは避けるようにいわれているが,誠に大切なことと思われる。妊婦水泳では仲の良い友達同志,およそ7〜5人ぐらいでグループが作られる。そしてその中で最初にお産になった人が安産だと,あと残りのものも安産が大部分となるが,最初の人が帝王切開や2日も3日もかかる遷延分娩であると,あとの人も遷延分娩が大部分となってしまった。これは何でも信じやすい妊婦の心理的弱さと軽視すべきことではなくて,後述するような学問的理由が明らかに存在することに注目したい。そこで私どもは産婦を扱ううえについての指導ポイント,心がまえとして,一言でいえば「丈夫な赤ちゃんを産むためにはどうしたらよいか,そしてお産を楽に済ますにはどうしたらよいか,妊婦さん自体が真剣に考えて欲しい」と自らの体と心に自信が持てるよう,体操と水泳を実施した次第である。
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