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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科35巻6号

1981年06月発行

Modern Therapy 産婦人科とPhysical Care

赤ちゃん体操とVojta法

著者: 富雅男1

所属機関: 1大阪府立大手前整肢学園

ページ範囲:P.413 - P.418

文献概要

 人間以外の動物は生後間もなく,生命維持のために食物摂取という本能を満たすために,どのような運動様式であれ移動が可能となる。 しかし,人間の場合本来の移動運動である二足歩行が可能となるには,生後約12カ月の月日を要し,ポルトマン(Portmann,A)は"人間の赤ちゃんは,一年早く生まれた未熟児である"と述べている。正常な赤ちゃんは,普通訓練することなしに,寝返り・四つ這いを経て独歩が可能となる。赤ちゃんが寝返りや四つ這いをするのは,おもちゃを取りに行ったり,探索を目的としているのであって,決して寝返りあるいは四つ這いそのものが目的ではない。移動というのはそれがどのような様式であれ,あくまで目的を達成するための手段であって決してその逆ではない。同じことは,赤ちゃんは坐るために坐っているのではなくて,"両手"でおもちゃを持って遊ぶために坐っているのである。赤ちゃんの意識にあるのは"おもちゃを取りに行きたい""おもちゃで遊びたい"という欲望だけであり,寝返り・四つ這い・坐位という動作はあくまで自動的な運動である。したがって正常な乳児の場合,運動発達を促進しようとするならば,赤ちゃん体操という意味で他動的に寝返りをさせたり,坐位を取らせることよりも,これらの運動を赤ちゃんが能動的に行なうように運動に対する動因(motivation)を高めることの方が大切である。しかし,多くの育児書には,赤ちゃんの運動発達を助けるための赤ちゃん体操ということで,いろいろな訓練方法があげられている。定頸・頭のコソトロールの訓練の目的で早期から引き起こしの訓練をしたり,坐位の訓練のために他動的に坐位を取らせたり,またはコンビラックの使用をしたり,あるいは足の突張りや立位の訓練のために歩行器の使用をすすめている。このような赤ちゃん体操というのは不必要で,正常な乳児の運動発達にはむしろ弊害ですらある。Vojta法による機能訓練というのはあくまで"何らかの運動機能障害を持っている赤ちゃん"に対するリハビリテーションのための訓練であることをおことわりしておきたい。Vojta法について述べる前に,育児という面から正常な赤ちゃんの取り扱いについて,日常診療における著者の経験から2〜3の事項について述べてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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