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母体と胎児との共存関係における胎盤の意義—その起源をたどって
著者: 中居光生1
所属機関: 1北里大学医学部産婦人科学教室
ページ範囲:P.477 - P.487
文献購入ページに移動 近年,胎児あるいは胎盤で産生され分泌される物質が多数発見され,それらの物質の機能的役割が次第に解明されるに伴って,これまで比較的に未開拓であった分野の重要性が再認識されて関心が広まってきた。
従来,妊娠,分娩が疾病の発現としてではなく,生理現象として位置付けられていて,偶発する病態が治療対象になることはあっても,本来的な意味で「ill health」としての内容を持たないために,その生理現象の理解が妊娠,分娩,産褥の呼称に表現されるごとく,母体を軸に据えた視点からなされていたという一面性が指摘できる。このような立場からは胎盤は妊娠,分娩に関与する1器官として,これまでともすれば1個の成熟臓器として取り扱われ,成人の場合には完成された機能として見られる消化,吸収,排泄,呼吸,代謝など数種の機能系統が集約された多機能臓器として,わずか10ケ月間母児間に介在する「胎児付属物」としての意義を与えられてきた。従って,胎盤に関する記述も個々の現象に関する知見の集積に偏り,それが胎児生存の「well-being」にどのように関わるかという一面に主な役割を与えられてきたことは否定できない。
従来,妊娠,分娩が疾病の発現としてではなく,生理現象として位置付けられていて,偶発する病態が治療対象になることはあっても,本来的な意味で「ill health」としての内容を持たないために,その生理現象の理解が妊娠,分娩,産褥の呼称に表現されるごとく,母体を軸に据えた視点からなされていたという一面性が指摘できる。このような立場からは胎盤は妊娠,分娩に関与する1器官として,これまでともすれば1個の成熟臓器として取り扱われ,成人の場合には完成された機能として見られる消化,吸収,排泄,呼吸,代謝など数種の機能系統が集約された多機能臓器として,わずか10ケ月間母児間に介在する「胎児付属物」としての意義を与えられてきた。従って,胎盤に関する記述も個々の現象に関する知見の集積に偏り,それが胎児生存の「well-being」にどのように関わるかという一面に主な役割を与えられてきたことは否定できない。
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