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臨床医のプライマリ・ケア 母と子のプライマリ・ケア--母子相関をめぐって
新生児初期のbehavior—学習
著者: 石井威望1
所属機関: 1東京大学工学部産業機械工学科
ページ範囲:P.811 - P.814
文献購入ページに移動 個体間で伝達される情報には,遺伝情報と遺伝外情報とがある。前者は分子生物学的に継承され,受精時にハードウェアとして,その内容が固定される。一方,後者は大脳における記憶として,社会的に伝承される。また遺伝外情報は次の2つに大別される。1つは歩行,水泳というような生活に直接必要な基本的な動作の学習記憶である。もう1つは,書物,コンピュータなど知的に高度な外部記憶である。オックスフォード大学のドーキンスは,文化はミーム(meme,文化伝承の単位,あるいは模倣の単位)によって脳の中を人から人に伝えられる,という説をなしている1)。つまり,遺伝外情報は複数の脳の存在を前提として,脳と脳の間に構成されたコミュニケーション・チャンネルを通して伝達される。このコミュニケーション・チャンネルの形成の始まりが母子間のコミュニケーションである。
情報システムとして考えれば,新生児は母親から継承された遺伝情報を母子共通のデータベースとして所有している。一方,母親は遺伝情報の他に多くの遺伝外情報をも所有している。つまり,新生児は遺伝情報を主体とし,母親は遺伝情報に加えて遺伝外情報をもち,いわば非対称な情報伝達を形成している。母子間のコミュニケーションにおいては,両者は共通のデータベースを所有している訳であるから,新生児と第3者との間のコミュニケーションに比べてより円滑に情報伝達が行われると考えられる。
情報システムとして考えれば,新生児は母親から継承された遺伝情報を母子共通のデータベースとして所有している。一方,母親は遺伝情報の他に多くの遺伝外情報をも所有している。つまり,新生児は遺伝情報を主体とし,母親は遺伝情報に加えて遺伝外情報をもち,いわば非対称な情報伝達を形成している。母子間のコミュニケーションにおいては,両者は共通のデータベースを所有している訳であるから,新生児と第3者との間のコミュニケーションに比べてより円滑に情報伝達が行われると考えられる。
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